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秋の新ドラマと民泊と管理規約と国交省

「家売るオンナ」に続き、今クールは不動産ドラマが目白押しです。一通り(第2回まではまだフォローできていないため)「初回を見た限り」の薄っぺらい感想を。各ドラマのあらすじ等は適宜ググってください。

1.砂の塔

www.tbs.co.jp

撮影協力マンションはブリリア有明スカイタワーのようですが、窓から見えるのはファミール月島グランスイートタワーかな?という点はさておき、サスペンスとしては面白そうです。
ただ・・・いくらなんでもタワマンの奥様方をバカにしすぎじゃないかと・・・。
そして仕事柄気になるのが、松嶋奈々子演じる佐々木弓子が専有部分でフラワーアレンジメント教室を開いており、これが規約に抵触しないのかという点です。内装を見る限り一度に大勢が立ち入るわけではなさそうですから、形式的に抵触していても黙認なのかなと。

2.吉祥寺だけが住みたい街ですか?

www.tv-tokyo.co.jp

マンガの実写ドラマ化。
原作に忠実に実際の街歩きを中心とした作品で、全体的にはとても良いのですが、大島美幸の演技が少々過剰ではないかなぁ。安藤なつも、どうせなら側頭部を刈り上げればよかったのに。今後どんな街を訪れるのか楽しみです。

3.プリンセスメゾン

www.nhk.or.jp

こちらもマンガの実写ドラマ化。
シン・ゴジラに続き高橋一生がとても良い。沼越さんを演じる主演の森川葵も好印象。初回を眺めながら志田未来でもよかったかなと思いましたが、彼女は小田急不動産で頑張っているので「持井不動産」のモデルルームに通い詰めるわけにはいきません。

4.拝啓、民泊様。

www.mbs.jp

侮っていました。今クールの不動産ドラマの中では然程期待していない方だったのですが、結構面白かったです。新井浩文中野裕太が良い。
古民家民泊で成功して味を占めた新井浩文が自宅マンションにまで手を広げて管理組合とガチバトルの末に悔い改めて組合活動に熱心になり盛大に夏祭りを開催してマンション管理士試験に合格する、という展開を期待したいところですが、無理ですかね。

・・・実は、ここが今回の本題です。

このように新井浩文演じる山下寛太は今のところマンションでの民泊経営に手を出していません。しかし、私の妄想どおりになったら、このマンションの管理組合はどのように対処すればよいのでしょうか。

・・・という点について、私は本ブログやtwitterで持論を述べてきました。

momoo-law.hatenadiary.jp

twitter.com

要するに「民泊を認めるか認めないかについて管理組合の態度をはっきり決め、その意思を明確に規約に反映させておくべき」ということです。
とはいっても、シェアハウス・民泊禁止規約の公開で一躍有名になったブリリアマーレ有明管理組合のように、自力で適切な規約を検討することは容易ではありません。

bma33.com

そんな大多数の管理組合の参考になるのが、国交省が作成する規約のモデルである標準管理規約です。ちょうど今年3月にその改正がなされ、本ブログでも主にコミュニティ条項について取り上げました。
ところが、この改正においては民泊の可否を明示する文言例は示されず、「専ら住宅として」という同規約既存文言の解釈論争が続いていました。
そのため、私はかねてから「(標準管理規約の解釈がどーのこーのと議論をしている時間があるのなら)行政がさっさと民泊可否文言例を示すべき」と述べていたわけです。

そして本日下記報道によると、国交省が「可否両方の規約文言例を作成して関係各所に通知し、可否を明示するよう求める。」という方針をようやく打ち出したようです。

www.asahi.com

実際にどのような文言例が作成されるかはまだ分かりませんが、民泊を禁止しようとしている管理組合や、そもそも態度を決めかねている管理組合の皆様は、この機会にこれを参考にじっくり検討し、対策をとっておくよう強くお勧めします。

八丁堀の二人

また時間が空いてしまいましたが、私のマンション探しの続きを。

「とにかく街を歩いてみる」という(当時の私にとっては)画期的な方法を編み出すことができたので、麻布十番を拠点に時間を見つけてはあちこちを歩くことしてみた・・・のが前回までのあらすじです。

これでそう遠くない将来、私にぴったりの住まいに巡り合えると思っていたのですが、私も一人の成人男性ですから、プライベートを全てマンション探しに費やしていたわけではありません。

そう、結婚しました。
当時住んでいた十番の部屋の広さは正にこんな感じでしたから(コルビジェじゃなくて無印でしたが)、さすがにここに二人はちょっと厳しい・・・かといってせっかくマンション探しを進めていたのに、このタイミングで賃貸に腰を落ち着かせてしまうと検討が億劫になってしまいそう・・・今より少しだけ広めで好きなタイミングで出ていける都合の良い部屋はないだろうか・・・ありました。

こうして、あるご縁で住むことができたのが、八丁堀の分譲マンションでした。1DKで42㎡くらいだったでしょうか。

「八丁堀に住む」って、どんなイメージでしょう?
私が住んだのは新川でしたから、住所で言えば八丁堀、湊、入船あたりが環境としては近いかと。
正直当時の私は「オフィスばっかりで住むようなとこじゃないんじゃね?」と思っていました。無知とは恐ろしいものです。

一言で言うと、八丁堀はいいぞ。スゴクいい。
都心が近い。本当に近い。東京駅はもちろん、少し頑張れば、銀座や丸の内からも歩いて帰れます。
利用可能駅も豊富。JR・日比谷線の八丁堀を最寄りに、茅場町新富町も使えます。
居酒屋からオサレなところまで、飲食店も充実。
散歩も楽しい。日本橋人形町・築地も徒歩圏内だし、タワマン群を眺めながらの隅田川ウォーキングも気持ちいい。
(ウチには当時子供がいませんでしたが)同エリアでほぼ永住を決めた大先輩弁護士によると、実は子育て環境も良い。ディズニーランドの舞浜へも電車で15分。

豊洲・佃のリバーシティ・月島・勝どきよりも都心に近いのに、大規模開発エリアではないせいか知名度では負けているのがもったいない。

・・・そんな八丁堀で快適な新婚生活を過ごした私達夫婦は、ここを終の棲家とすることに・・・なりせんでした。

うーん、前回も書いたように、やはり街には好みというものがあり、便利で快適であってもしっくりこないものはこないのです。夫婦二人とも同じことを思いました。多少都心から離れても、賑やかな商店街とか公園とか神社とか畑とかが近くにある住宅街っぽい住宅街がいいなと。高いところは苦手だなと。ゴンドアの谷の歌にあるように、人は土から離れては生きられないのだなと。

そんなわけでマンション探しは続くのですが、これまでと違い二人旅となりますから見えてくる景色も変わってきます。そのあたりのお話は、また今度。

www.tv-asahi.co.jp

クローズアップ現代+の感想

北川景子久保田祐佳アナのいずれをとるか迷いましたが、さすがにこの仕事をしていて今回見ないわけにはいかないので後者を選択しました。

www.nhk.or.jp

番組で取り上げられたテーマのうち、私が気になった点に絞って感想を書いてみます。

1.標準管理規約に関する説明が不十分
「どうするマンショントラブル!?『新ルール』で住民激震!?」がタイトルだったわけですが、取り上げられた「新ルール」は建替え決議要件と改正標準管理規約でした。

心配していたとおり、番組では標準管理規約について「マンションの憲法」「新ルール」と説明されていました・・・大きな誤解を生みそうです。

私の過去のブログで再三しつこく書いてきたとおり、標準管理規約はあくまで国交省が作成する「モデル」であり、法的拘束力はありません。

momoo-law.hatenadiary.jp

しかも、番組で示された「価値による議決権区別」は改正標準管理規約に直接盛り込まれているわけではなく、標準管理規約へのコメントで示された一つの考え方の例に過ぎません(つまり、モデル中のモデルです。)。

管理規約は各管理組合が定めるものであり、標準管理規約を「参考」にすることもできますが、無視することも可能です。
番組の説明の仕方では、あたかも改正標準管理規約が法的拘束力を有しているとか、各管理組合の規約が自動的にそれに変更されてしまうかのような誤解を生みかねないと懸念されます。
番組としてはまず「モデルに過ぎない」という大前提を説明すべきであったと思います。
※9月1日編集:上記番組HPの「質問コーナー」にて、「改正された標準管理規約は必ず採用しなければならない?」に対する回答として「ひな型である」旨の説明が加えられたようです。

2.長期間合意形成に努力した団地
20年も前から危機感を抱いていた団地理事長さんが丁寧に所有者間のコミュニケーションを図った結果、最終的に建て替えではなく修繕・維持が全会一致で選択されたケースが紹介されました。
この団地では「住民が共に楽しめる場を作る」という理念により、週末の「語らいの場」や「集会所カフェ」や夏祭りを開催して一体感を醸成し若い世代も増やしたのことです。とても素晴らしい取り組みだと思います。
「人がつながることを信じた方がいい」という理事長さんの言葉が印象的でした。

コミュニティー活動に関し消極的なご見解の福井先生も番組でコメントされていましたが、こうした団地の活動や成果についてどのようにお感じになられたのでしょうか。

momoo-law.hatenadiary.jp

3.應田治彦さんの活動とリーダーの資質
修繕積立金の大幅値上げへ向けた努力と工夫が紹介されました。
これが「自分たちの問題だ」という意識の重要性を浸透させるべく、一人だけのための説明会を開き、管理組合が運営するHPで情報を発信し、お年寄りのためには大きな文字のチラシを用意するといった工夫をし、9割の賛成を得て実現したとのことです。
管理組合のリーダーが豊富な知識や高い理想を備えているに越したことはないですが、それらよりも、他者への配慮ができる心が求められると改めて感じました。

4.マンションと人付き合い
番組のゲストであった室井佑月さんは「挨拶程度で済ませたいからマンションを選択した」とのことでした。
しかし、その目的でマンションを選択したことが私には理解できません。
建物の構造だけを見ても、マンションは戸建てよりも人間関係が密接になることを容易に想像できると思います。
これからお住まいを選択する方は、「極力人付き合いを避けたい」のであれば、マンション購入はお勧めしません。物理的にも法的にも人付き合いを避けて通れませんから。

5.家売るオンナ
番組終了後直ちに日テレに移りました。
篠田麻里子も決して嫌いではないのですが、北川景子の美しさが際立ちますね・・・。

www.ntv.co.jp

ゴジラに学ぶ管理組合における戦い方

シン・ゴジラはいいぞ。

www.shin-godzilla.jp

石原さとみ(の英語)に関しては色々議論があるようですが、あれはあれで良かったのだと私は思っています。彼女のおかげで一呼吸入れられたといいますか。同じ人物設定でより上手に英語を話せる女優だと誰が適任でしょう?水原希子

ともかく、このブームに乗ってブログを一本書いてみます。

ネタバレにならないよう気を付けなければなりませんが・・・この作品は、突如東京湾に現れ上陸し大暴れするゴジラに日本人が如何に立ち向かうか、という物語です。それだけです。だからいいのです。
お察しのとおり東京はメチャクチャにされます。ゴジラの進路からすると私の顧問先マンションも1つ潰された模様です。

・・・実は、そんなゴジラからも、区分所有者の皆さんが学べることがあるのです。

私はしばしば、(理事ではない)区分所有者から「理事(会)の不正を暴きたい」とか「理事(長)を解任したい」というご相談を受けます。
ご相談を聞き続けていくと、その多くが「総会で糾弾したが誰にも聞いてもらえず、理事に立候補したが選任されなかったから何とかしたい。」という話につながります。

・・・こうなってしまうと、なかなか打つ手がありません。
その人物と理事(会)との対立関係が鮮明になりますから、理事交代総会決議の前提となる理事会決議を得ることはほぼ不可能でしょう。また、直接総会招集を図ろうにも賛同者を集めるのは容易ではありません(「揉め事に巻き込まれたくない」という感情により、理事会と対立する形で強く目立ってしまうと周囲から敬遠されてしまいがちです。)。何らかの法的手続をとろうにも、せめて理事の立場を確保していないと証拠集めには大変苦労します。

では、どうすれば良かったのでしょうか。
ここで、ゴジラが何故「東京を壊す」という成果を挙げられたのかが参考になります。
もちろん、総会で物理的に大暴れしてはいけません。

皆様が参考にすべきは「突如東京湾に現れた」という点です。

もし、「ゴジラが太平洋のど真ん中で姿を現し、ゆっくり東京に向かっている。」という事態であったならばいかがでしょう。詳しくは作品をご覧いただかなければなりませんが、日本政府もより周到に準備をすることができたでしょうし、巨災対メンバーももっと余裕をもって対策を立てることができたでしょうから、ゴジラは上陸できなかったかも知れません。

管理組合における区分所有者も同様です。
上記のような思いがあるならば、そのことを表に出さぬまま理事に立候補し、更に理事長に就任してしまうのが最も近道です。それが難しい場合でも拙速に声を上げるのではなく、しばらくは我慢強く隠密行動に徹して少しでも仲間を増やしておくべきです。
「気付かれる前に上陸する」わけです。

管理組合内の抗争を甘く見てはなりません。理念が正しいとしても、それを実現するためには戦略が必要です。もし管理組合の「現政権」にご不満があるならば、是非「声を上げる前に」ご相談ください。

・・・以上は区分所有者のためのアドバイスです。

ということは、理事(会)としては逆に「ゴジラを上陸させず」又は「上陸したゴジラの破壊力を低下させる」ための準備をしておかなければなりません。
東京湾に現れてからでは手遅れになりかねませんから、お気軽にお早めにご相談ください。尾頭さんとおそろいのPCを携えてお待ちしています。

matome.naver.jp

各種メディア掲載・出演歴

マニアックなマンション管理問題やふざけたマンション購入記ばかり書いていては私のことを誤解(?)されてしまいそうですので、たまには営業的なアピールをと思い立ち、これまでのメディア掲載・出演歴を整理してみました。
上から、最近のもの→過去のもの、と遡る順にまとめています。
もし今後も掲載・出演の機会をいただければ、随時更新していきます。
(リンク先の一部は有料記事です。)

2017(平成29)年1月31日
ダイヤモンドMOOK マンション管理&修繕 完全ガイド2017
「熱血マンション管理組合理事集団RJC48の本音トーク」
最強!マンション管理組合のつくり方
https://www.diamond.co.jp/magazine/650412417.html
RJC48の主要メンバー座談会に参加させていただきました。

2016(平成28)年5月22日
日経ヴェリタス
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO02626570R20C16A5K15200/
管理規約による民泊禁止は区分所有法を根拠とする措置であることを説明しました.。

2016(平成28)年1月12日
産経新聞
http://www.sankei.com/politics/news/160112/plt1601120065-n1.html
民泊自体に関する知識の共有と禁止or許容に係る意思決定が必要であること、そして(禁止するならば)管理規約の整備を急ぐべきという見解を述べました。

2015(平成27)年12月16日
日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10H97_V11C15A2CC1000/
管理規約による民泊禁止の法的効果と、規制緩和の方向性についてコメントしました。

2015(平成27)年8月26日
東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/81797
管理規約による民泊禁止の限界、予防的措置、問題意識の共有の重要性についてコメントしました。

2015(平成27)年7月24日
TBS 「Nスタ」における特集「住民が管理会社に憤慨 高級マンションで何が」
https://www.facebook.com/lawyer.momoo/posts/930576253676052:0
(私のFacebookページです。)
管理組合による委託先管理会社変更に際し、変更前の管理会社が不適切な行為に及んだという事例について見解を述べました。

2015(平成27)年5月12日
産経新聞
http://www.sankei.com/affairs/news/150512/afr1505120005-n2.html
管理組合による委託先管理会社変更に際し、変更前の管理会社が不適切な行為に及んだという事例について見解を述べました。

2014(平成26)年6月3日
FLASH(1286号)
自殺物件に関する賃貸仲介業者による重要事項説明義務違反についてコメントしました。

理事会における理事長解任の可否 ‐標準管理規約を前提に‐

先日の本ブログで触れたとおり、標準管理規約第35条は次のように定めています。

第35条 管理組合に次の役員を置く。
  一 理事長
  二 副理事長 ○名
  三 会計担当理事 ○名
  四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
  五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により【※理事のうちから、理事会で】選任する。
※今般の標準管理規約改正に伴い文言が若干修正されました。

つまり、同条によると、総会では「役員を誰にするか」だけを決めておき(第2項)、「誰がどのような役職に就くか」については理事が話し合って決める(第3項)ことになります(監事は直接総会で選任されますが(第2項)、その意味は別の機会に。)。

例えば、役員選任について上記規定を置くX管理組合(理事5名)においてA~Eが総会で理事に選ばれたとすると、このA~Eが話し合い「理事長はA、副理事長はB、会計担当理事はCとし、DとEは平理事」というように具体的な役職を決めるわけです。
(なお、この点に関連し、はるぶーさんが極めて実務的な問題を検討していますので、是非ご参照ください。)

www.e-mansion.co.jp

ところが、後日B~Eが「Aは理事長に相応しくない」と思うようになりました。B~Eとしては、比較的簡易な手続で済む理事会決議を以てAの理事長職を解きたいところです。
(なお、区分所有法第25条2項所定の裁判所に対する解任請求という方法もありますが「簡易な手法をとりたい」というB~Eの意向に反するのでここでは省略します。また、Aは頑固で自らは辞任しないと仮定します。)

この場合、理事会決議により
(1)Aを「役員から外す(Aは理事でもなくなる)」
(2)Aを「理事長職から外す(Aは平理事などになる)」
という2つの手法が考えられます。それぞれ許容されるでしょうか。

まず、手法(1)について。

上記のように標準管理規約第35条2項が「理事及び監事は、マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。」と定めているとおり、「(具体的役職は別にして)役員を誰にするか」は総会で決めることになっていますから、それを理事会決議で覆してしまうことになる手法(1)は許容されません。
そのため「Aを平理事にもしたくない」ならば、総会決議を通じて役員から解任する必要があります。この点は、標準管理規約第48条13号が総会決議事項の一つとして「役員の選任及び『解任』並びに役員活動費の額及び支払方法」と定めていることも一つの根拠になります。

では、手法(2)は許容されるでしょうか。

管理規約に「理事会決議で理事長職を解くことができる」などと明記されていれば争いなく可能といえそうですが、上記のとおり標準管理規約の文言を採用している場合にはそのように明記されておりません。
標準管理規約において理事会の権限として根拠となり得るのは、冒頭でも紹介した同規約第35条3項の「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により【※理事のうちから、理事会で】選任する。」という規定のみとなります。

私は、以前からこれを「『誰を理事長に据えるか』を理事会判断に委ねている」規定であると理解し「理事会決議で(他の者の選任を伴って)理事長を解任することができる(即ち手法(2)は可能)」と考えており(株式会社の代表取締役を取締役会において解職する場合と同じような考え方です。)、実際そのようにアドバイスしたこともあります。

ただ、以前はそのことを直接解説・判断した文献・裁判例は見当たらず、逆に「理事会決議での解任を認めるには、その旨を規約に明記するのが望ましい」と解説されていた記事も見受けられました。
また、手法(2)を否定する論拠としての「上記第48条13号には『解任』とあるのに、第35条3項は『互選』『理事会で選任する』であって『解任』が含まれていない(つまり、総会では役員の選任も解任もできるが、理事会では選任しかできないのではないか)」という、条文文言に着目した指摘にも「なるほど」と思っていました。

そのため、ご相談に際しては「手法(2)は可能であると思います。」と私見としてアドバイスしつつ、こうした他説もあることもご紹介していました。

こうした中、RJC48にてこの問題が議論されたことをきっかけに『コンメンタールマンション区分所有法』(日本評論社)の第3版を調べてみたところ・・・
その150頁~151頁にかけて、同書第2版までにはなかった「理事・理事長の解任」という項目が新設されており、(上記手法(2)の場面について)役職の解任は、それらの選任に準ずるものと解され、理事長職の解任については理事会の決議で行うことができると解される、という上記私見と同趣旨の解説がなされていたのです。これは嬉しい。
(なお、同書の別巻である『コンメンタールマンション標準管理規約』の第35条の解説には「役員は総会で選任しているのであるから、解任も同様の方法で行うのが通常である」という指摘がありますが、これは上記手法(1)が許容されないことの説明であると思われます。)

もちろん、上記のとおり未だ確立した判例があるわけではありませんので、これも一つの見解に止まりますが、この分野ではおそらく最も詳しく定評のある文献による解説ですから、これまでよりは自信をもって「標準管理規約第35条に準拠した規約の下でも、手法(2)は可能と考えます。」とアドバイスできるようになったと思います。

ただ、このような解釈が論争になること自体が建設的ではありません。
そして、前回の本ブログでも書いたとおり(しつこいですが)標準管理規約はモデルに過ぎません。
そのため、やはり問題が顕在化する前に、皆様のマンションの管理規約にて「理事会決議を以て理事長職を解くことができる(又は逆に「解くことはできない」)」と分かり易く明確に定め、無用な争いが生じないようにしておくことをお勧めします。

標準管理規約に関する誤解と正解

もうかなり時間が経ってしまいましたが,6月22日に,マンションコミュニティ研究会が主催する「管理規約とコミュニティ〜スタイル多様化の時代へ〜」というテーマのフォーラムを聞きに行きました。

RJC48センターの應田さんと,今般の標準管理規約改正に先立って多くのメガマンション管理組合のコミュニティ活動に関するご意向を意見書にまとめた梶浦弁護士の貴重なお話を伺うことができました(私もちょっとだけマイクを握らせていただいたのですが,何か上手いこと言わなければと焦った挙句「良い管理組合とは,弁護士が介入しない管理組合です。」とコメントしてしまったので,相当数の潜在的顧客を失ったと思います。)。

フォーラムの詳しい様子は,同研究会主宰の廣田信子さんや,はるぶーさんミッキーさんのブログでも紹介されているので,そちらをご参照ください。

・・・と丸投げしてしまい,では私はこのフォーラムに関連し何を言いたいのかというと・・・

このフォーラムにて,廣田さんから「管理の現場から『今回の標準管理規約改正によるコミュニティ条項削除に伴って,コミュニティ活動を行えなくなったのでは』という懸念の声が上がっている。」という趣旨のお話がありました。

この懸念は2つの誤解を含んでいます。

一つは「管理組合におけるコミュニティ活動の可否と,今般の標準管理規約改正との関係」という問題であり,「標準管理規約の改正によりコミュニティ活動ができなくなった」という誤解です。

これについては先日このブログでも連載にて詳しく書いておきましたのでご参考ください(我ながら力作であり,まとめページまで作ったにも拘らず,はっきりいってあまりご覧いただけておりませんw 力が入りすぎたせいかも知れませんが。)。

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 そしてもう一つは,より根本的な,
「各マンションの管理規約は標準管理規約に連動して自動的に改正される,又は,標準管理規約に準拠させる義務がある。」
という誤解です。

もちろん,正解は「標準管理規約は国交省が作ってくれている規約のモデルに過ぎませんので,もちろん参考にはなりますが,連動もしないし,義務もありません。」です。

このような誤解は,どうして生ずるのでしょうか。
やはり,区分所有法,管理規約,各種細則等,集会(総会)決議といった,管理組合における様々な規律の意義や相互関係に係る基本的知識が浸透していないため,管理規約のモデルに過ぎない標準管理規約の性質も誤解されてしまっているのだと思います。

ご存知のとおり,分譲マンションを主とする区分所有建物の権利関係は,「建物の区分所有等に関する法律」(いわゆる区分所有法)によって定められています。

しかし,分譲マンションの事情は物件ごとに全く異なりますから,一つの法律によって全てのマンションに共通して適用されるルールを設けることは合理的ではありません。

そのため区分所有法は,そのルールの多くについて「規約や集会決議によって,各マンションの所有者が自分達で決めなさい。」というスタンスをとっています(この「区分所有法に基づき規約で定める」という構造から,私はよく「規約は区分所有法の一部のようなもの」と説明します。)。

例えば,同法第25条1項は,

区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者(※)を選任し、又は解任することができる。
※とりあえず「理事長」を指すとご理解ください。

と規定しています。
つまり,理事長を誰にするかについて,区分所有法自体では決められておらず,規約に定めがあればそれに従い,規約に定めがなければ集会決議によって定める,ということになります。

そして,この「規約」をどのように定めるかの「参考」として,上記はるぶーさんブログでも取り上げられている標準管理規約第35条は次のように定めているのです。

第35条 管理組合に次の役員を置く。
一 理事長
二 副理事長 ○名
三 会計担当理事 ○名
四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
五 監事 ○名
2 理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。

繰り返しますが,これはモデルに過ぎませんので,他のルールにすることもでき,例えば「理事長は○○氏とする。」と特定の個人にしているケースも存在します。
また,規約は上記第35条のように定めつつ,選任に係るより具体的な手順を「細則で定める。」としておくことも可能です。

当然,国交省が標準管理規約を改正したとしても,このケースのマンションが自主的に規約や細則を変更しない限りは,この「理事長は○○氏とする。」や細則で定められたルールに影響はありません。

「標準管理規約はモデルに過ぎない」ことはご理解いただけたでしょうか。とすれば,次のステップは「標準管理規約を参考にしつつ,ご自身のマンションの規約をどのように定めていくか」です。
ワクワクしますね・・・しませんか。でも,最近注目されている民泊を管理規約上許容するか否かも,まさにこのステップの問題ですから,多くの管理組合にとって決して他人事ではありません(私のブログもご参照ください。)。

momoo-law.hatenadiary.jp

ただ,区分所有法が「規約で定める」ことを許容しており,また標準管理規約がモデルに過ぎないとしても,「どんな事柄であっても,またどのような内容であっても,規約で自由に定めて良い」というわけではないことには注意が必要です。

・・・この点は,また次の機会に詳しくご案内しようと思います。