AKBに学ぶマンション管理組合運営 -私のことは嫌いでも(以下略-

今年もAKB総選挙が開かれましたので、いつもの便乗記事を書いてみます。

1.私のことは嫌いでも、管理組合のことは嫌いにならないでください!
この言葉を聞いて、前田あっちゃんというコは理事長経験者なのかと思いました。
管理組合理事会というグループには、ファンもいればアンチもいます。もちろん、最も多いのは無関心という方々です。ファンの中にもセンター(理事長)推しの方もいれば、渋く仕事をしている総監督(監事?)推しという方もいるでしょう。運営側(管理会社?)が気になる方もいるかも知れません。

理事長は、そんな管理組合を引っ張っていかなければなりませんから、全国民(区分所有者)から好かれることは期待できず、当然アンチや他メンバー推しからは嫌われてしまうこともあります。
そんな理事長は「私のことを理解してくれないのはおかしい!」などと怒ってはいけません。「私が管理組合のことを思って取り組んでいることは、いつか理解してくれる。今は嫌われても仕方ない。せめて資産価値を維持するために管理組合には協力して。」という気持ちを持つことが大切です。

2.総選挙を盛り上げる
次の選抜メンバー(次期理事会)を輪番やジャンケン(抽選)で決めるのも悪くありませんし、固定化された神7も頼りになりますが、やはり役員総選挙を盛り上げることで適度な緊張感を維持した方が管理も活性化することでしょう。大規模マンションであれば、アンダーガールズ(補欠)制や姉妹グループ(委員会)制の採用も有用です。

3.メンバーを過剰に責めない
役員といっても、殆どの方はつい最近まで普通の女の子(マンション管理未経験)ですから、当然間違った判断をしてしまうこともあります。
そんなとき、事情や経緯を説明させたり反省を促したりといった程度を超えて過剰に責めてしまっては、その方や現メンバーだけでなく、これからメンバー入りが予定されている方々を萎縮させてしまいます。
せいぜい姉妹グループへの移籍に止めましょう。丸坊主の強要など、もってのほかです。

4.情報公開のタイミングを見誤らない
人には、心の準備というものがあります。
いくら重要な事柄だからといって、事前配布された議案書にも書いていない驚くべき情報を、総会の場で突然公開されては困ってしまいます(法的に決議もできません。)。
例えば、多くの役員就任賛成票が集まったのに、総会の場で「明日物件を売ることになりました。」では、やはり総会はざわつきますし、長年神7として管理組合を守ってきた古参メンバーもいい顔をしないでしょう。直ちに代わりの役員を選任することも容易ではありません。
もちろん「とにかくその場で公開しておかないと、後で不本意な形で情報が漏れる恐れがある。」というケースもありますから、ある程度の現場の判断も必要ですが。

このツイートが思いのほか広まったので慌てて書きました。次こそは、本来の(?)硬派なブログに戻したいと思っています。

 

拝啓、Airbnb代表取締役田邉様 -民泊新法成立-

住宅宿泊事業法案(民泊新法)成立に伴い、Airbnb代表取締役の田邉氏が声明を発表したようです。

airstair.jp

その中で同氏は次のように述べておられます。

「ホームシェアを含む住宅宿泊事業は、日本に大きな可能性をもたらします。2016年だけで、Airbnbのホストコミュニティによる日本経済の押し上げ効果は約9200億円(83億ドル)でした。観光業を拡大、多様化し、かつ空き家の活用にも繋がります。」

・・・民泊が観光業のみならず日本経済全体に好影響を与え得るものであることについては、私も異論がありません。

しかし、上記「約9200億円の日本経済の押し上げ効果」の一部が、民泊を禁じている分譲マンション管理組合や区分所有者の犠牲の上に成り立っていることについても、改めてご認識いただきたいと思います。

豪華なエントランス、万全のセキュリティを備えたオートロック、管理の行き届いたホール、廊下、エレベーター、ゲストルーム、清潔に保たれたゴミ置場、静謐な環境・・・これらは全て、管理組合・区分所有者が経済的・物理的負担を負って懸命に維持しているものです。

もちろん、管理組合が積極的に民泊を許容しているのであれば、区分所有者も(主に収益物件としての価値向上という意味で)その利益を享受しているといえるでしょう。

しかし、上記のように民泊を禁じているマンションにおいて民泊を展開することは、管理組合や他の区分所有者の経済的・物理的負担へのフリーライドであると言わざるを得ません。

Airbnbを初めとする民泊業者の皆様、そしてホスト・ゲストになろうとする皆様は、どうかこの点を十分ご理解の上、管理組合のルールを順守して民泊事業を展開し、また民泊体験を満喫していただきたいと思います。

・・・民泊新法については、改めて検討した上で記事にする予定です(いつとはお約束できませんがw)。
民泊に関して不安に思っておられる管理組合の方は、やや古い記事となりますが、まずはこちらをご参照ください。

momoo-law.hatenadiary.jp

民泊に関し管理組合とトラブルになっている方のご相談も受け付けております。

第三者管理移行前に考えてほしい10のこと 前編

前回記事とタイトルがかぶってしまいました。
自分の構成力のなさが恥ずかしいです。
そして今回も「10」にできる自信がありません。

マンション管理に関心のある方は「第三者管理」という言葉を聞いたことがあると思います。(似た言葉に「第三管理組合」がありますが全く異なります。それは本ブログで以前ご紹介した禁断の技のことです。)

momoo-law.hatenadiary.jp

本ブログは専門家向けではなく、マンション管理の現場で奮闘する皆様に分かり易く解説することを主目的としていますので、(それを言い訳にして)ものすごくざっくり簡単にご説明すると・・・

三者管理とは「区分所有者以外の専門家(業者)に、(外部の顧問としてではなく)管理組合役員の一員として管理を担ってもらう」という手法です(以下、ここではこの専門家(業者)を「外部専門家」といいます。)。
平成28年3月の標準管理規約改正以降話題になることが多く、国交省の上記標準管理規約改正に係るコメント文末でも複数の形態につき詳しく解説されています。http://www.mlit.go.jp/common/001135988.pdf
(ずーっと下にスクロールすると現れる別添1「外部専門家の活用パターン」)

この第三者管理は、主に次のような目的が想定されているようです。
・区分所有者の高齢化・専有部分の賃貸化等による役員のなり手不足や管理不全の解消
・大規模修繕・耐震改修・大型マンション等専門知識を要する問題への対処

もちろん、第三者管理はこうしたニーズに応え得る手法であるとは思います・・・が、今のところ、私は以下の理由によりあまり浸透しないと予想しており、お勧めもしていません。

1.管理組合側の事情
(1)現行制度から第三者管理採用までのプロセスが大変
標準管理規約を初めとする多くのマンションの管理規約では、役員就任資格が区分所有者に限定されています(ここでは「居住」の有無は無関係です。)。

そのため、第三者管理を採用するには規約変更を要します。
ただ、外部専門家が管理組合の意思決定に多大な影響を及ぼすようになりますから、区分所有者からの反発が生じることも多く、規約変更は必ずしも容易ではありません。

(2)外部専門家の選定が大変
一口に外部専門家といっても、どのような人物・業者に任せるかを選ばなければなりません。とはいえ、通常管理組合はその判断能力を備えていませんから、選定はとても難しくなります。単に「安ければいい」なら簡単ですが、そのような基準でマンションの将来を委ねて良いはずがありません。能力・得意分野・規模・人格・コストといった多くの観点から比較検討する必要があります。

(3)第三者管理を担える外部専門家が少ない
「マンション管理の専門家」としてどのような資格・肩書・業者をイメージされるでしょうか。建築士・弁護士・会計士といった所謂士業をお考えになるかも知れません。
ただ、ご存知のとおりマンション管理は建築設備・法務・会計等の全般に関わりますから、役員として管理組合の意思決定に関わる以上はオールラウンダーであることが望まれ、上記士業ではその点が不十分です。
その観点でマンション管理士も有力な選択肢となります。ただ、多くのマンション管理士資格保有者がおられるものの、未だ資格として広く世間に認知されているとは言い難く、また、例えば多くの管理組合と顧問契約を締結するなどして第三者管理を任せ得る水準の実績を積んでいる方は、残念ながら然程多くありません。

(4)第三者管理を採用した後は、その監視・監督が必要
もちろん、殆どの外部専門家は誠実に業務を遂行してくれるはずです。
とはいえ、これまでも管理会社従業員による横領事件や、分野は違うものの後見人弁護士や司法書士が資産を横領するという事件が少なからず発生しています。
従来の「管理会社にお任せ」よりも高い安心を求めるには、区分所有者自身による監視・監督が必要不可欠です。

(5)後戻りが困難
三者管理は通常規約で根拠づけられますから、それを止めるには規約を改正する必要があります。
「第三者管理採用時にも改正したのだから、ただの規約改正くらい簡単にできるよ」と思われるかも知れませんが、そうでもありません。状況が全く異なります。

 一般的な規約において、規約改正を含む総会決議事項は理事会が策定します。
そのため「総会で決める」といっても、その方向性は実質的に理事会がほぼ固めることになりますし、多くの委任状は議長(≒理事長≒理事会)に集められますので、現実には理事会の方針を総会で覆すことは困難です。

そして、外部専門家はこの理事会の意思決定に強い影響力を及ぼしていますので(そのために外部専門家を起用していますから当然です。)、第三者管理を採用していない場合よりも一層その傾向は強くなるはずです。理事会「外」の区分所有者が外部専門家の業務を不適切と考えたとしても、簡単に交代させたり同制度を止めたりすることはできません。
もちろん、理念としては「他の理事等が外部専門家をコントロールする」ことになっているはずですが、真に理事会がそのような能力を有しているのならば正に下記のとおりです。

このように、第三者管理を採用し、健全にそれを維持するためには、管理組合・区分所有者自身に能力と努力が求められます。
もし貴方(達)が「自分(達)ならできる!」という自信と能力をお持ちであればそれはとても素晴らしいことですが・・・それなら、貴方が理事(長)として、現在委託している管理会社を監視・監督すれば足りる、というよりその方が合理的だと思うのです。

長くなりましたので「2.外部専門家側の事情」は次回にします。

後編と特別編はこちら↓

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