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規約による民泊の禁止 -法令・条例等と規約との関係,「専ら住宅」条項の位置づけ-

今回もやや重めの内容です(以前,私のFacebookページに掲載した記事を若干加工したものです。)。

予めお断りしておきますが,今後もずっとこのような真面目で重たい記事ばかりを書くつもりはありません(というか無理)。
せっかくブログを開設したのですから自己紹介等の軽めの記事も書いてみたいのですが,早めに知っておいていただきたい事柄を優先させることにします。我ながらエライですね。

さて,先日の記事でご案内したとおり標準管理規約が改正されたところ,同第12条の
「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」
という文言は従来のままとなりました。

そして,同条と民泊に関して,標準管理規約を採用している管理組合が多いという前提のもと,この「専ら住宅として」との文言を以て民泊を禁止し得るか(即ち,民泊を行うためにはこの条項を変更する必要があるのか),という点が議論されました。
問題の所在は,この「専ら住居として使用」という文言だけでは,民泊が禁じられているのか許容されているのかが必ずしも明らかではない,という点にあります。

もっとも,後述するとおり,現在標準管理規約を採用している管理組合であっても,民泊を禁止(又は許容)したければ,この第12条を独自の文言に修正しその方針を明確化することができますから,管理組合の今後の対応を考える上では,上記議論自体にあまり意味はありません。

ただ,民泊の禁止・許容,管理規約,旅館業法や条例に表れる国・地方の政策という各事項間の関係が少々分かり辛いため,今回は「専ら住宅として」条項がどの次元の問題であるかを交えつつ,「自身のマンションではどうすればよいか」という観点で,これらについて整理してみようと思います。

1.そもそも管理組合の方針は民泊禁止なのか許容なのか

まずはこの点について管理組合内部で意見調整を行うことが肝要です。
もちろん「良く分からないからどっちでもいい」も一つの考え方ではありますが,「方針を明らかにしないうちに物件内で民泊が広く行われるようになってしまった」という事態に至ると軌道修正は困難ですから,やはり早めに民泊について理解するよう努め,方針を定めて動くことをお勧めします。

(1)禁止する
「国・地方の政策に従うしかないのでは」と誤解している方もおられますが,これらが民泊を推進し,旅館業法等の法律や条例等によってこれを許容しようとも,管理組合がその区分所有建物の管理上民泊は相応しくないと考えるならば,規約によって禁ずることが可能です。
例えば,ペットの飼育は法律で禁じられていなくても規約でこれを禁じ得ることと同じように考えてみてください。

(2)許容する
「許容する」としても,どのような態様において許容されるのかは旅館業法や条例等を精査しなければなりませんし,また,これらに抵触する態様で行われていないかを監視する必要があります。

現状民泊が許容される場面はかなり限定的であり,「禁止したい」という思いで本ブログをお読みの方が多いと想像しますので,今回は「(1)禁止する」を選択して続けます。

2.現在,どのような規約であるか(標準管理規約を採用しているか)

(A)独自の規約
標準管理規約ではなく独自の規約を設けているのであれば,その文言により民泊を禁止していると解釈し得るか否か(禁止するために規約を変更する必要があるのか)を確認します。その判断が難しい場合には専門家の助言も参考にしてください。

(B)標準管理規約を採用している(又は上記同12条と同様の条項がある)
この(B)が,冒頭ご案内した「議論」があてはまる場面です。
比較的多くあてはまるケースではあるのですが,こうして議論全体を整理してみると意外と局地的な問題であることが分かると思います。
この件に限らず,ニュースなどで大きく取り上げられる問題だからといって,それが結論を直接決定づける論点であると誤解しないよう注意してください。

この(B)のケースであるとして続けます。

3.規約を変更するか

(B)の場合の対応方法は,
(a)(「専ら住宅として」という文言を以て民泊が禁止されているという解釈に基づき)現状を維持する
(b)(「専ら住宅として」という文言では民泊が禁止されているか否かが不透明であるという解釈に基づき,又は上記(a)の解釈をとるものの,疑いや紛争が生じぬよう)規約を変更し「禁止」であることをより明確にする
という選択肢となります。

私は,文言解釈としては(a)の見解をとります(厳密には民泊も色々ですから一概には言えませんが。)。とすると,規約改正は要せず現状維持で良いでしょうか。
しかし,「民泊禁止」が管理組合の意思であるならば,無用な解釈論争を回避し(現在のところ行政の考えも定まっておりませんし,行政がある解釈を示したとしても,それがそのまま法的に採用されるとは限りません。),また警告的効果を得るためにも(規約改正により区分所有者には当然周知されます。中古販売に際しては重説で示すよう徹底すべきです。),(b)のとおり規約変更をお勧めします(上記(b)のうち,下線部の考え方です。)。

4.どのような規約にするか

(b)を選択した場合には,具体的にどのような規約にするかを考えます。
具体的には,
(ア)専有部分・共用部分を問わず全面禁止とするか,共用部分(ゲストルーム等)のみ禁止とするか
(イ)禁止する態様(人数・宿泊日数等)を具体的に定めるか「不特定多数による短期の利用」といった抽象的文言に止めるか
(ウ)単に「民泊禁止」を謳うか,広告の禁止や立入検査等についても定めるか
(エ)牽制効果を狙って民泊を規約上禁じたことを対外的に公表するか否か

等々が考えられ,これらを組み合わせて条項を定めていきます。

 

おそらく,今後も法律,条令,通達等々によって民泊の許容度は(おそらく促進方向で)変化していくと思われます。
しかし,それらの政策と規約とは別次元の問題でありますので,管理組合は,その方針に基づいて態度を明確にしておくべきです。
「考える間もなく,いつの間にかマンションで民泊が広まっており,手の施しようがない」という最悪の事態を避けるため,まずは「民泊とは何か」を知り,「自身のマンションがとるべき方向性」を考えることから始めましょう。