続・標準管理規約の改正とコミュニティ条項の削除(2) -区分所有法第3条とコミュニティ活動-

続・標準管理規約の改正とコミュニティ条項の削除(1) -君がいた夏は,遠い夢の中-(「本連載(1)」)

に続く連載2回目(見出しは通し番号)です。

2 標準管理規約改正の意味と本件との関係
ブログ第1回記事でも簡単にご説明したとおり,(改正)標準管理規約とは国交省が設置した「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(本連載(1)で定義した「現検討会」)が作成した「管理規約のモデル」であり,それ自体に法的拘束力はありません。

また,数年ごとに改正されることからも分かるように,普遍的なものでもありません(改正『前』標準管理規約は,本連載(1)で定義した「前検討会」が作成しました。)。

即ち,夏祭りのような管理組合活動が「今般の標準管理規約改正によりできるようになったor禁じられた」という法的な関係はありません。
少々乱暴にいえば,改正標準管理規約は「管理組合は夏祭りを(法的に)行うことができるか,(政策的に)行うべきか」に係る現検討会の見解の表れであるといえます。

3 コミュニティ条項削除への疑問
そして,ブログ第1回記事で述べたとおり,今回の改正標準管理規約(コミュニティ条項の削除・コメント)や裁判例を検討した結果,私は「(常識的に求められる要件を充たせば)夏祭りは実施可能」,即ち「管理組合はこの問題について,改正『前』からスタンスを大きく変える必要はない」と考えています。

そのため,私は今回の改正において現検討会がわざわざコミュニティ条項を削除したことについて今一つ納得できておりません。ブログ第1回記事で述べたように「コミュニティ活動ができなくなった」という誤解を生みかねないためです。

そこで,今回コミュニティ条項を削除した現検討会の「見解」がどのようなものであり,我々や管理組合の皆様はその見解をどう捉えればよいのか,を改めて考えてみます。
そして,私は法律実務家である以上,「法的にor政策的に」のうち,主に法的な部分を取り上げることにします。

4 区分所有法第3条と問題の所在
ブログ第1回記事でもご案内したように,本件は標準管理規約自体の問題ではなく,区分所有法の解釈,即ち「区分所有法は,コミュニティ活動(夏祭り)を禁じているのか」という問題です。つまり,

区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。(以下略)

という同法第3条の「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」に夏祭りが含まれ得るのか,が問題の所在となります。

5 現検討会座長福井先生のご見解(前半)
詳しくは本連載(1)でご紹介した都市住宅学93号「マンション管理のガバナンス-利益相反とコミュニティ活動のリスクを考える」にて整理していただいているところ,僭越ながら私なりにご趣旨を一言でまとめると,現検討会座長の福井先生は,管理組合が行い得る活動の範囲につき「区分所有法第3条の文言に忠実に捉えるべき」とお考えのようです。

そして,そのうち夏祭りに関しては「夏祭りの類はそれ自体が管理又はその附随・附帯事項に該当するとは言い難い以上,管理組合費を支出することは違法となる。」(同書6頁)等とご指摘のように,管理組合は法的に行い得ないというご見解であると窺えます。

確かに,区分所有法第3条の「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」という文言のみに注目し,そこに夏祭りが含まれるかを考えると・・・含まれなさそうにも思えます。

では,この「文言に忠実に」は,あらゆる法的解釈に通用する考え方なのでしょうか。もしそうであれば,この福井先生のお考えに基づきコミュニティ条項が削除されたことに納得できそうです。逆に,「文言の意味を柔軟に・拡張して」捉えることも許されるのであれば,そこに夏祭りが含まれる余地も生まれそうです。

・・・次回(5月13日頃の予定)は,法律の解釈について簡単にご案内し,それに基づき福井先生のご見解について更に検討を進めてみます。