第三管理組合の作り方 -用法・用量を守って正しく作ってください-

最近この記事を見つけていただいた方へ

本記事は2017年4月に公開したものです。大切なことは後半にまとめておきましたので、是非最後までお読みください。

 

本日、こんなブログを読みました。面白いのでまずは皆様もご一読ください。

www.gentosha.jp

・・・いかがでしたか?
リゾートマンション、共用部分、税金、管理費・修繕積立金、雨漏り、資産価値、管理組合の分裂・対立・・・区分所有法の教科書のように、マンションに関する重要単語が盛り沢山でワクワクしますね。しませんか。

その中でもひときわ目を引くパワーワードがありました。
そう、「第二管理組合」です。

皆様ご存知のとおり、区分所有建物(分譲マンション)における区分所有者は区分所有法上当然にその建物の管理を担う団体を構成し、一般的にその団体を管理組合と呼びます。
このような性質上、一つのマンションの管理組合は一つです(一部共用部分や団地という例外もありますが、ここでは割愛します。)。

では、「第二管理組合」とは何でしょうか。

最初から管理組合、理事会又は規約の体裁すら整っておらず複数の管理組合がほぼ同時に「立ち上がる」というケースもありますが、比較的多いのは事後的分裂型だと思います。

例えば以下のようなケースです。
①X理事会のA理事長が総会を招集して、Aとその仲間が多数を占める役員選任決議をし、新たにY理事会を構成した。
②A理事長と対立するX理事会のBら平理事グループが、①の手続的瑕疵を理由にその決議無効を主張しつつ(つまりY理事会は存在しないことを前提に)、X理事会において規約に則りA理事長を解任してBを理事長に選任した。
③B理事長が総会を招集し、Bとその仲間で多数を占める役員選任決議をし、新たにZ理事会を構成した。

以後Y理事会とZ理事会が、それぞれ自分たちが正当な理事会であると称して活動し、それぞれが勝手に招集した総会を「管理組合総会」などとして実績を残していけば、あたかも二つの管理組合が存在するかのような状態が出来上がります。
もちろん、これは「二つあるように見える」だけであって、結局は①の役員選任決議の有効性如何により、いずれが正当な理事会(その後の総会)であるかが決まるわけです。

ここで、このブログの読者の方は不思議に思うのではないでしょうか。
①の総会で賛成票を投じた区分所有者はA理事長とY理事会を支持しているのだから、③の総会は無視されて定足数や決議要件を充たさず、Z理事会は成立しないのではないか・・・と。
ところが、理事会・理事長名義で総会議案書が手元に届けば、特に吟味せず委任状や賛成の議決権行使書を返送してしまう管理に無関心な区分所有者も少なくありません。これによって①でも③でも形式的な決議要件を充たしてしまう、という事態が生じ得るのです。

また、両陣営がこうした要件をきっちり充たしていなくても(傍から見ればいずれが正当であるかが明確であっても)、法的手続による決着に至らない限り「事実上併存している」という状態はあり得ますし、実際はそのようなケースが多いでしょう。「管理組合の対立を法的手続で解決しよう。」という意識はまだまだ広まっていませんので。

以上からも分かるとおり、第二管理組合は、マンションが以下のような条件を充たすと誕生し易いといえます。
(1)特定の区分所有者間に激しい対立があり、双方に強力なリーダーがいる。
(2)対立当事者以外の区分所有者の多くはマンション管理に無関心である。
(3)元々の管理組合運営が杜撰である(自主管理、居住所有者が少数等々。)。
(上記ブログのようなリゾートマンションは、(2)(3)を充たし易く要注意です。)

このような仕組みやコツさえ分かれば(決して簡単ではないものの)第二どころか「第三管理組合」を作ることもでき、実際、私は第三管理組合の立ち上げを手伝ったことがあります。

もちろん、このような分裂状態は極めて不健全であり、泥沼化して管理が滞りスラム化してしまっては元も子もありませんから、管理組合や現行理事会が自分の思うように動かないからといって安易に対立を煽るべきではありません。
私がお手伝いした第三管理組合も、その後何とか第二管理組合との和解を経て最終的にマンション統一を果たしたようですが、それまでの道のりは険しいですし、統一後も対立感情がなくなるわけではありません。

将来こうした事態に陥らぬようにするには、やはり日頃から区分所有者間・住民間において適度なコミュニケーションをとっておくことが肝要です。

momoo-law.hatenadiary.jp

それでもやむを得ない場合は・・・ご相談ください。

なお、こうした管理組合対立が激化すると、マンション内で様々な文書が飛び交うことがあります。こうした事態に遭遇した組合員の皆様は、是非「その文書がどのような立場の人物によって作成されたものか。そもそも本当に文書の名義人によって作成されたものなのか(例えば、理事長や弁護士の名前がきちんと掲載されているか)」を慎重にご確認ください。