世田谷区マンション交流会のレジュメ -事件は10年後に起こるんじゃない、今(以下略-

9月10日に世田谷区マンション交流会(世田谷区都市整備政策部住宅課共催)によるパネルディスカッションが開催され、NPO日本住宅管理組合協議会の川上湛永氏と著名なマンション管理士である丸山肇氏、そして僭越ながら私がパネリストを務め、それぞれ20分ずつの基調講演を行いました。

www.city.setagaya.lg.jp

こちらがイベントのご案内
http://setagayaku-mansion.jp/wp-content/uploads/2017/08/seminar_170802.pdf

・・・やっちまいました。お二人は講演に際して素晴らしいレジュメを用意されていたのに、私は手控えだけ。そして会場の皆様に「近日中にレジュメの代わりとしてブログをアップします。」とお約束したのに、1週間以上が経過してしまいました、スミマセン。

共通テーマは「10年後のマンション管理はどうなっている?」というものでしたので、私は以下のとおり「法制度の10年後」「マンションを取り巻く社会の10年後」「10年後に備えて『今』行うべきこと」の3点をほんの少しずつお話ししました。

1.法制度の10年後
(1) といっても、区分所有法をベースとする法体系に大きな変化はないはずです。その間に生じる実務的な問題については、標準管理規約や周辺法令の改正によってカバーされることになります。民泊新法が良い例ですね(決して「2016年の改正標準管理規約におけるコミュニティ条項削除は悪い例だ」という意味ではありません。)。
(2) 法制度の改正が社会的な動きに先行することはありません。そして、この「動き」の殆どはビジネスによるものであり、それに追随する形で法整備がなされます(こちらも、民泊新法が良い例です。)。
(3) つまり、国交省ではなく管理組合の皆様こそが「マンション管理の最前線(カッコイイw)」にいるつもりで日頃からアンテナを張り、「この問題は管理組合でも起こるのでは」と察知することが何よりも紛争予防になるのです。
もちろん、その都度大袈裟に総会や理事会の決議をとる必要まではありません。これらの会議やエントランスでの雑談・情報交換が、後々大いに役立つはずです。

2.マンションを取り巻く社会の10年後
(1) 既に始まっていますが、今後10年で更に社会は縮小傾向が進むと予想され、管理組合が受ける影響も小さくありません(上記パネリストのお二人も、この点を強調されていました。)。
具体的には、高齢化による経済力低下に伴う管理費等の滞納や修繕積立金不足、人口減・賃貸化による役員のなり手不足・管理組合の空洞化、更にこれらが進行すれば孤独死や空き家問題も起こります。
(2) 他方、こうした困難に立ち向かうという機運が、管理組合の活動を活発化させるきっかけにもなっています。マンションという大きなハコを、少ない(少なくなる)人間で知恵を持ち寄って何とか使っていかなければなりませんから。
分かり易いところでは、シェアカー・シェアサイクル、駐車場運営の合理化、コミュニティ活動、第三者管理等専門家の起用が具体例として挙げられ、また民泊やシェアハウスも管理組合の意思決定次第で有効な資産運用方法となり得ます。

(3) ただ、こうした取組みにはいずれも「他者との関わり」が不可欠であるところ、残念なことながら、その「関わり」こそがトラブルの種でもあるのです。

3.10年後に備えて「今」行うべきこと
(1) では、10年後に生じるトラブルに対し、どのように対処すればよいのでしょうか。
「10年後に10年後のトラブルが起こるのではありません。
『今』撒かれた種が10年後にトラブルを起こすのです!」(ここで私はこの日一番の大声&ドヤ顔を繰り出しました。)。
(2) マンション管理においては
長期修繕計画や修繕積立金がその典型例ですが、その他の様々な法的トラブルも同様です。現在進行中の紛争において10年前の文書が証拠になることは全く珍しくありません。
(3) 日常の管理において「トラブルは必ず起こる」と心掛けながら、規約・細則等ルールの実践(警告、催促)や詳細な記録化(議事録・請求書・警告書・メール・FAX・業務日誌)を徹底することが10年後の管理組合を助けることになります。
(再び大声&ドヤ顔で)「10年後の裁判官に見てもらうつもりで記録を作るのです!」
(4) そして、こうした取組みを管理組合だけで実行することは困難ですから、管理会社や外部の専門家との協働体制を作りましょう。たまに誤解される方がいますが、管理会社は決して敵ではありません。管理組合にとって非常に有用なパートナーです。安易なリプレースは却って管理を後退させます。
(5) また、上記「1」でも述べたとおり良質な情報の収集も重要です。もちろんブログ、セミナー、専門誌といった情報源は大いに活用すべきですが、他の管理組合の「生の」経験談は成功例・失敗例問わずとても参考になりますから、各種勉強会や(このセミナーを主催した世田谷区マンション交流会のような)交流会に出席したり、ご近所の(できれば同規模の)管理組合と情報を交換したりしてみてはいかがでしょうか。