秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人について(4) -本案訴訟一審判決-

秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人46期理事の職務執行を停止する仮処分と、これに対する一連の異議申立ての経過は、これまでご報告していたとおりです(以下、これらを「本件保全手続」といいます。)。

分かり易さを重視するべく詳細は割愛し雑駁にご説明すると(この点は本ブログ全般に当てはまりますので、ご了承ください。)、保全手続は「比較的簡易・迅速に法律関係を仮に定めるもの」であるところ、本件保全手続は↑の前回記事のとおり当方の主張が認められて事実上終了しています(最高裁への特別抗告がなされていますが、その法的要件を充たすとは考え難いといえます。)。

今年9月5日、本件保全手続と並行して行われていた「46期理事等が、秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人の理事等の地位にないことの確認を求める訴訟」(こちらは通常の訴訟です。上記性質のある保全手続との関係では「本案訴訟」と呼ばれ、法律関係が確定されるものです。以下、こちらを「本件本案訴訟」といいます。)の第一審判決が、ようやく言い渡されました。
争点や証拠関係は本件保全手続とほぼ同じであるため当然ではあるのですが、後述のとおり原告(当方)の主張が全面的に認められました。

なお、本件本案訴訟においては、
原告:組合員1名(代理人弁護士:桃尾)
被告:管理組合法人
補助参加人:46期理事4名
という構造がとられていました。これは理事等の地位の不存在確認訴訟において実務的に採用されているルールとお考えください。
もっとも、ここでいう管理組合法人の代表者や理事は既に原告の賛同者が占めておりますので、同法人は被告として本件本案訴訟において一切原告の主張を争っておらず、事実上「原告vs補助参加人ら(46期理事)」という構図となっていました。
また、判決には補助参加人ら以外の「関係者」が登場します。この方々は、本件本案訴訟に積極的に関与していないものの、下記の事情から、原告が地位の不存在の確認を求める対象として含めた方々です。

判決
⑴補助参加人Aが、被告を代表すべき理事及び理事の地位になく、その権利義務も有しないことを確認する。
⑵補助参加人B、C、D及びEが、被告の理事の地位になく、その権利義務も有しないことを確認する。
⑶関係者Fが、被告の監事の地位になく、その権利義務も有しないことを確認する。
⑷関係者Gが、被告の理事の地位にないことを確認する。
⑸関係者Hが、被告の監事の地位にないことを確認する。
⑹原告の請求のうち、関係者Iが被告の理事の地位にないことの確認を求める部分に係る訴えを却下する。

冒頭述べたとおり、これらは原告の主張を全面的に認めるものです。
上記「その権利義務も有しない」は、本件の端緒となった2021年11月開催の通常総会時点で、既に46期理事・監事の任期は満了しており、いわゆる「権利義務理事・監事」であったことによります。
補助参加人Aが46期理事長であり、B~Eがその当時の理事です。
関係者Fは、46期監事を務めていた人物です。「直接業務執行を担っていない」という監事の特徴から、本件保全手続の対象としていませんでしたが、本件本案訴訟ではその地位の不存在の確認を求めました。
関係者G及びHは、上記総会において46期理事が新任として推薦した理事・監事候補者です。46期理事が「この総会では、自分たちが上程した議案が可決された」との主張を維持したため、それを否定するべくこのお二人の地位の不存在の確認も求めていました。
関係者Iは、途中で自ら辞任を表明した方です。これにより「確認の利益がない」という理由で原告の訴えが却下されました。

追って争点やそれに対する裁判所の判断についても解説したいと考えています。

また、原告が迅速な進行を求め続けていたにも関わらず、結果的に本件本案訴訟提起からこの一審判決まで、想定していたよりもかなり長期間がかかってしまいました。その事情についても可能な限り(日本の訴訟制度一般の問題でもあることから)ご紹介できればと思います。

なお、補助参加人も控訴することが可能ですから、その場合には対応します。

前述のとおり管理組合法人は既に新体制に移行しており、「一般的な(又はそれ以上の)」管理がなされていると聞いていますが、本件本案訴訟が続いていることによる弊害も残っていますので、引き続き終局的解決に向けて努力して参ります。

管理組合と自治会におけるコミュニティ活動に関する東京高裁令和5年5月17日判決について_⑵

前回記事にて大事なことを書き忘れていました(先ほど、しれっと加筆しておきました。)。マンション管理新聞によると、本件高裁判決について「双方ともに上告する考え」であるようです。

では、双方当事者は、最高裁においてどのような主張を展開するのでしょうか。
率直に言って、私は本件高裁判決に納得していませんので、本件管理組合の視点で検討してみます。

前回記事の「本件高裁判決の判断」「争点③」をご覧いただけば分かるように、本件高裁判決の「肝」は、
>争点①
>イベント等活動が、区分所有法3条の「管理組合の目的」の「範囲内」であるか否か
にあります。
争点①の結論が維持されたのであれば、争点③の結論もほとんど維持されたはずです。

両判決の争点①に係る結論を比較してみます。
>本件地裁判決の判断
イベント等活動も、その目的・内容によってはマンション・周辺環境の維持向上に資する活動として「範囲内」となる場合があり得る。
>本件高裁判決の判断
⑴イベント等活動は、専ら地域住民の親睦を図るのが目的であり、イベント参加者という一部の者のみが利益を享受するものである。
⑵イベント等活動は「範囲外」である疑いがある。

本件管理組合は、この点に係る本件高裁判決の不合理性を最高裁に理解させなければなりません。
難しいのは「イベント等活動の意義」自体をいくら主張してもあまり意味がなく、それを「自治会ではなく管理組合が、その決議に基づき、決議反対者の意思に反してでも、その資金を使って」行うことの意義を説明しなければならない、という点です。
というのも、本件高裁判決も「イベント等活動が有害である」とは述べておらず、おそらくそれらが「地域住民にとって有意義であること」は否定していないからです。

本件管理組合代理人の先生方が既にご検討されているでしょうから大変僭越ではあるのですが、私なりに考えてみます。

1.イベント等活動とそれ以外の「管理組合的活動」との違い
⑴建物の物理的管理
本件高裁判決も、例えば
「既に十分な明るさを備えており、通行するためだけのエントランスに、高額なシャンデリアを付ける」
「週3回の清掃で清潔さが保たれている一部の住民しか通行しない内廊下の清掃頻度を、週7回にする」
「10月も、外気温を問わず共用会議室の温度を20度に保つよう空調を稼働し続ける」
といった事柄も建物の物理的管理として「範囲内」と捉えるはずです。
もちろん組合員が個々の必要性を判断して総会決議によって採否を決するわけですが、「範囲内」である以上少数の反対者がいたとしても決議されれば実行可能です。
ただ、これらは建物の維持管理にとって必要不可欠とまではいえない「視覚的な娯楽・安心感・高度な快適さ」に関わるものであって、その点ではイベント等活動と大きな差はないでしょう。

⑵防災等活動
防災訓練・夜間の見回り・ゴミ拾いも同様です。
いくらつまらなくて参加者が少なく効果も乏しいとしても、本件高裁判決の理屈では防災等活動に該当し「範囲内」とされますから、反対者がいても決議されれば実行可能です。

⑶これら⑴⑵と
「老若男女が集まり交友関係が拡がり、挨拶が交わされ交流の場となることでエントランスの雰囲気が良くなり、建物の維持管理や役員活動への理解も広まって、役員立候補者が生まれるといった効果が生ずる契機となり得るイベント等活動」
とでは、どちらが「資産価値の向上」や「大災害が発生して行政が機能不全となった状況下で相互に安全確認を行い情報を交換し物資を共有して侵入者から身を守らなければならないという緊急時への備えとなる」とか「積極的・中長期的に役員として管理運営に関心を持つ人物の発掘に資する」といった効果を期待できるでしょうか。

このように、イベント等活動と建物の物理的管理や防止等活動の違いは相対的なものに過ぎず、前者の方がはるかに「有益である」ケースは決して少なくないと思います。
それにもかかわらず、本件高裁判決の理屈を突き詰めると、ギリギリ51:49の可決でもシャンデリアは物理的管理として設置できるのに対し、99:1で可決されてもイベント等活動だから夏祭りは行えない、という結論となりかねません。

これは不合理であって、「いずれも総会で決めればよい」というのが私の(そして、おそらく本件管理組合の)考えです(誤解していただきたくないのは、私(や本件管理組合)の意見は、あくまで「相対的な違いしかないのだから、多数決に従うべき」というものであり「いくら反対者が多かろうがイベント等活動を行うべき」というわけではない、という点です。)。

もっとも、これらは「管理組合がイベント等活動を行ってもよいのでは」という許容性の説明となるものの、「『管理組合が』やった方がよい」という必要性の説明としては少々弱そうですから、もう少し検討します。

2.管理組合による一元的な判断
上記のとおり、イベント等活動も建物の維持管理という「管理組合の目的」に資するものであるとすれば、次は「ある建物の物理的管理」と「あるイベント等活動」のいずれを(資金的・時期的・人員的に)優先して行うべきか、という政策的判断の段階となります。

つまり、前述した例である
「既に十分な明るさを備えており通行するためだけのエントランスに高額なシャンデリアを付ける」と
「老若男女が多く集まり知人・友人を多く作る機会となる夏祭り」
の、どちらを優先すべきか決めなければならない、というわけです。

このとき、組合員は「エントランスの物理的・雰囲気的状態」「役員を担う人物の数」「総会出席者の割合」「それぞれに要する資金・人員」「緊急性」といった要素を総合的に考慮して判断します。
ところが「シャンデリアは管理組合で、夏祭りは自治会で」と判断の主体を分けてしまうと上記のような判断要素も分断されてしまい、「優先順位」を適切に見極めることができません。
これに対し、判断要素が管理組合に集約されていれば、「組合余剰資金○○円のうち××円をシャンデリアに使い(その範囲で買えるシャンデリアを選び)、残額で実行可能な範囲の規模で夏祭りを開く」とか「シャンデリアは既存照明がまだ十分機能しているから来期に持ち越してもよいが、新規組合員・住民が急増したから早期に大々的な交流の機会を設けた方がよい」といった、合理性のある柔軟な判断がし易くなるといえます(もちろん、結論が逆の場合も同様です。)。

いかがでしょうか。
もちろん、これらが「決定打」といえるほどの論拠となるとまでは思いませんが、管理組合実務に関わる者として率直な考えを何とかまとめて(ひねり出して)みました。

私のような立場からは、本件管理組合やその代理人の先生方が良い結果を得られるよう祈り、最高裁の判断を検証するほかありません。
とはいっても、現実の管理組合運営はそれを待ってはくれませんので、次回はいよいよ「管理組合はどのように最高裁の判断を待てばよいか」という難題に挑む…かどうかはちょっと考えさせてください。

管理組合と自治会におけるコミュニティ活動に関する東京高裁令和5年5月17日判決について_⑴

マンション管理新聞2023年6月5日付1238号に、ある裁判例(東京高裁令和5年5月17日判決・「本件高裁判決」)が掲載されていました。
その1年弱前の同新聞2022年8月15日付1212号には、その原審(東京地裁令和4年7月20日判決・「本件地裁判決」)が掲載されており、その際は「まぁそうだよね」とスルーしていたのですが、本件高裁判決では結論が変わっていました。
インパクトが大きいと思いますので、久しぶりの裁判例解説ブログです。

もっとも、人望のなさのせいで判決の原文を入手できていないため、上記マンション管理新聞の記事だけを頼りにこのブログを書いています。間違いがあったらゴメンナサイ(とはいえ、マンション管理新聞の記事はいつも正確ですから、間違いがあればおそらく私のせいです。)。
また、いつもどおり分かり易さを重視して、法的正確性を若干犠牲にした表現を採用していますので、専門家のツッコミは勘弁してください。

事案の概要は以下のとおりです。
原告(控訴人):組合員
被告(被控訴人):団地型マンションの管理組合
以下、「本件組合員」「本件管理組合」「本件マンション」と呼びます。

本件管理組合は、その原始規約から「管理組合という団体として」自治会(「本件自治会」)に加入すること(「団体加入」)を定めており、毎年の総会決議に基づいて自治会費を本件自治会に支払っていました。
そして本件管理組合は本件自治会に対し、防災・防犯・清掃等の活動(「防災等活動」)や、納涼祭・バーベキュー大会・クリスマス点灯式等の活動(「イベント等活動」)の実施を委託し、自治会費をこれらの対価(委託費)と位置付けていました。

本件自治会の構成員は、本件管理組合の組合員や本件マンション居住者です。
また、本件組合員は個人としても本件自治会に加入していましたが、2016年5月に退会しました。
本件自治会はこのような個人加入者からは自治会費を徴収しておらず、その主な収入は上記本件管理組合が支払う自治会費であり、その他に若干の助成金やイベント等活動の参加費を得ていました。

原告の請求
1 「本件管理組合による本件自治会への団体加入及び自治会費の支払い」を定めた規約(「団体加入条項」)が無効であることの確認
2 団体加入条項に基づく数期分の自治会費支払承認総会決議(「会費支払決議」)が無効であることの確認
3 本件組合員が本件自治会を退会した日以降に本件管理組合に支払った管理費のうち、会費支払決議に基づき支払われた自治会費の本件組合員負担部分に相当すると算出される約5,000円を支払え(不当利得返還請求)

この「管理組合と自治会」の問題はマンション管理界隈において数年前に大いに盛り上がりましたが(私もこのブログで延々書きました↓)、裁判例、学者の先生方による検討、国会答弁等により、概ね結論が固まってきた…と思っていたところでの本件高裁判決であったため、大いに驚いています。

この問題の経緯について説明する気力がないので、「管理組合 自治会 町内会 コミュニティ活動」あたりでググってください。

本件の争点と、それらの帰結は概ね以下のとおりです。
下記争点の「順序」は、マンション管理新聞(そして、おそらく実際の判決)における議論の順序とは異なります。
ただ、本件地裁判決と本件高裁判決を比較し、「どこで判断が分かれたのか」を検討するためには、この方が分かり易いと考えた次第です。

争点①
イベント等活動が、区分所有法3条の「管理組合の目的」の「範囲内」であるか否か(なお「防災等活動」が「範囲内」であることに争いはありません。)
「範囲内」であれば、それを本件管理組合が自ら行ったり本件自治会等の第三者に委託したりすることを、団体加入条項や会費支払決議によって定め、実行・支出することができます。

争点②
イベント等活動が「範囲外」であるとしても、本件自治会が防災等活動のような「範囲内」の活動も行っている場合、団体加入は「範囲内」といえるか。
これも「範囲外」であれば団体加入に基づく自治会費の支払いも「範囲外」となります。
この団体加入が「範囲内」であれば、自治会費の支払いも「範囲内」といえる余地が残ります。

注意すべきは、争点①②は、いずれも「本件管理組合が、団体加入条項や会費支払決議に基づき団体加入し、本件自治会にイベント等業務を委託し、その対価として自治会費を支払う」というスタイルを前提しているという点です。
いくらその活動が「範囲内」であるとしても、本件自治会が任意加入団体であることに変わりはありませんから、個々の組合員に加入を強制したり、既に本件自治会を脱退した個々の組合員から(本件自治会に代わって)本件管理組合が自治会費を徴収したりすることはできません。
本件自治会を脱退した組合員は自治会費支払義務を負いませんから、本件管理組合がそれを徴収すれば不当利得となります。

そこで、争点③も問題となります。
争点③
組合員が本件管理組合に支払った「管理費」を原資に団体加入条項や会費支払決議に基づき自治会費を支払っているという体裁をとっているとしても、その原資の実態は「組合員から代行徴収した個々の組合員の自治会費」ではないか。
なお、「管理組合が自治会の代わりに自治会費徴収の事務処理を担う」という意味での代行徴収が認められることは概ね見解が一致しており、本件高裁判決も同様の立場です。

代行徴収でなければ、組合員が管理組合に支払っているのはあくまで「管理費」ですから、これを原資とする管理組合から自治会への支払いには区分所有法上の多数決原理が及びます。つまり、少数派の反対者がいても実行することができますし、不当利得の問題も生じません。
仮に代行徴収であれば、それはあくまで「個々の組合員の自治会費の支払い」です。そして自治会は任意加入団体であって強制加入はできませんので、脱退後の徴収分は不当利得となります。

長くなりましたが、以上が本件の争点と構造です。
以上を踏まえ、本件地裁判決と本件高裁判決がそれぞれどのように判断したかを整理してみます。

本件地裁判決の判断
争点①
イベント等活動も、その目的・内容によってはマンション・周辺環境の維持向上に資する活動として「範囲内」となる場合があり得る。

争点②
⑴「範囲内」というためには、団体加入が「建物等の管理又は使用に関する事項に該当し、建物等を維持していくために必要かつ有益であること」を要する。
⑵本件管理組合が管理する建物等の対象範囲(即ち本件マンションの建物・敷地・施設等)と本件自治会の活動地域が一致している。
⑶本件自治会の基本方針に、本件マンションの生活環境の改善・向上のための活動が含まれており、実際、本件自治会は防災等活動を実施している。
⑷このように、本件自治会は、建物等の管理に含まれる活動を基本方針とし、実際にも建物等を維持していくために必要かつ有益な活動を行う団体であるから、団体加入条項も会費支払決議も「範囲内」である。
⑸本件自治会への団体加入が建物等の管理に必要・有益である以上、本件自治会が「範囲外」の活動を行っていた場合でも(つまり、仮にイベント等活動が「範囲外」であるとしても)、本件自治会への加入が「範囲外」となるものではない。

争点③
自治会費が組合員数・戸数に応じて算出されるなど「組合員が支払うべき自治会費を管理組合が代わりに支払っている」という実態が存在すれば「代理徴収」(※代行徴収)と評価する余地がある。
⑵本件における自治会費は年度ごとに「活動内容を踏まえて定められた金額」である。
自治会細則などから、自治会費は「自治会の行う活動のうち管理組合の業務に関連する活動の対価の位置付けで支払われているもの」といえる。
⑷したがって、代理徴収にはあたらない(つまり、本件管理組合が各組合員から徴収しているのはあくまで管理費であって、会費支払決議に基づく自治会の支払は、規約や総会決議で決められる管理費の使途に過ぎない。)。本件組合員退会後に従前と同額の管理費を徴収しても、本件自治会退会の自由を侵害しない。

結論
原告の請求は全て棄却する。

本件高裁判決の判断
争点①
⑴イベント等活動は、専ら地域住民の親睦を図るのが目的であり、イベント参加者という一部の者のみが利益を享受するものである。
⑵イベント等活動は「範囲外」である疑いがある。

争点②
⑴本件自治会が行う防災等活動や住環境向上のための行政への働きかけなどは、管理組合の業務にあたる(即ち「範囲内」である。)。
⑵本件自治会は本件管理組合がマンション管理を行うために必要かつ有益な活動を行う団体である。
⑶本件管理組合が団体加入し、防災等活動に要する費用を支出するのは「範囲内」である。
⑷本件自治会の活動に「範囲外」のものがあったとしても、それだけで団体加入が「範囲外」であるとはいえない。
⑸下記争点③のとおり、退会した組合員は本件管理組合に対し、退会後に代行徴収された自治会費について不当利得に基づく返還を求めることができるため、団体加入条項や会費支払決議自体は無効とはいえない。

争点③
⑴本件自治会の支出の大半はイベント等活動に充てられていた。
⑵イベント等活動は、任意加入の地縁団体である自治会固有の活動である(争点①)。
⑶本件管理組合による本件自治会への自治会費支払いは、自治会活動と管理組合業務とを混同するものである(争点①)。
⑷本件管理組合が本件自治会にこれらを委託し、その対価を支払うことは本来許されない。
⑸本件管理組合と本件自治会の構成員が実質的に一致している。
⑹本件自治会の活動費の大半は、本件管理組合が支払う自治会費で賄っている。
⑺「範囲内」に含まれる活動とそうでない活動との区別が適切に行われているとは言い難い。
⑻本件管理組合による組合員からの管理費徴収(その割合的に該当する部分)は自治会費の代行徴収である。
⑼本件組合員による本件自治会退会後も代行徴収を続けるのは、実質的に本件自治会からの退会の自由を制限するものである。
⑽したがって、退会後に代行徴収された分は、不当利得となる。

結論
本件管理組合は本件組合員に対し、その本件自治会退会後に代行徴収された分に相当する金約5,000円を支払え。
団体加入条項や会費支払決議は有効であるから、これらの無効を主張する本件組合員の請求は棄却する。

事案と各裁判例の説明だけで思いのほか長文となってしまいましたので、今回はここまでとします。
本件の更なる分析や管理組合がとるべき対応策等については、気力・体力と相談しながらということで。

なお、マンション管理新聞1238号によると「双方ともに上告する考え」とのことです。

本記事の続きはこちらです↓