秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人について -職務執行停止仮処分-

令和4年4月19日、秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人(以下「管理組合」)の理事に関し、東京地裁民事第8部によって、職務執行停止仮処分決定が発令されました。
概要は以下のとおりです。

債権者:組合員1名(以下「依頼者」)(代理人弁護士:桃尾俊明)
債務者:管理組合及び46期理事(理事長及び理事5名)
    (以下「46期理事」。代理人弁護士:管理組合顧問弁護士2名)

主文
1.債務者秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人において、債務者Aは、債務者秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人を代表すべき理事及び理事の職務を、債務者B、債務者C、債務者D、債務者E及び債務者Fは、理事の職務をそれぞれ執行してはならない。
2.債務者秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合法人は、上記各債務者に上記各職務を執行させてはならない。

経緯
1.令和3年4月、桃尾は、組合員有志にて構成される「秀和幡ヶ谷レジデンスをより良くする会」の中心メンバーである依頼者から、同会が擁立する者(以下「立候補者」)の管理組合役員選任を目指す活動に係る助言等の業務を受任しました。

2.その後、46期理事長が招集し同年11月6日に開催された46期通常総会(以下「本件総会」)開催まで、依頼者を中心とする同会は、立候補者選任を支持する委任状・議決権行使書の勧誘を行いました。

3.本件総会において、これらの委任状等及び出席者の賛成により、立候補者を47期理事及び監事に選任する旨の決議がなされました(以下「本件決議」)。なお、本件総会には管理組合顧問弁護士が同席していました。

4.46期理事は、本件決議の有効性を争い、立候補者への役員業務の引継ぎを拒否し、その後も自身らが理事の職務を担っていると主張しました。

5.立候補者及び桃尾は、数回に亘り管理組合顧問弁護士を通じて和解的解決を提案しましたが、46期理事はこれらに応じませんでした。

6.そのため、令和4年1月14日、依頼者は桃尾を代理人弁護士として、東京地裁に対し46期理事の職務執行停止仮処分命令申立てを行い、上記主文のとおりこれが認められました(4月21日、その旨が登記されました。)。

7.管理組合の管理体制は、インターネットや雑誌等の各種メディアにおいて以前から広く取り上げられていたところ、その中には不正確な情報も散見されたため、依頼者の意向に基づき、本ブログを以て最新の情報をお知らせした次第です。

2021年改正版標準管理規約&区分所有法対照表

皆様、お待たせいたしました。お待たせし過ぎたかもしれません。
先日、こちらで6月22日に公表された改正標準管理規約の概要をご紹介しました。

その文末で、

あー、そういえば、以前作った標準管理規約&区分所有法の対照表も改定しなければなりませんね…

と呟きつつ、さり気なく以前の記事を引用しました(本対照表の趣旨はこちらをご参照ください。)。

根が真面目なため改定作業は7月上旬に済ませていたものの、公開するのを忘れておりました。今日は何故かTwitterのフォロワーが急に増えたので、この機会に公開します。今回はカッコよく(?)Googleドライブゥ!

ただ、相変わらず情けないことに内容の正確性について責任はとれないので(特に色分けは参考程度に)、用法・用量には十分ご注意ください。

 

標準管理規約改正(令和3年6月22日)の速報のようなもの

標準管理規約の本文とコメントに関する改正内容が6月22日に公表されました。

こちら↓の「『マンション標準管理規約』の改正について(概要)」に沿って、私が少し考えたり質問を受けたりした点に絞り、速報性を重視して(つまり内容の詳細さや正確性は大きく犠牲にして)簡単にコメントしてみようと思います。

https://www.mlit.go.jp/common/001410147.pdf 

1.ITを活用した総会・理事会
「WEB 会議システム等」(新設第2条11号にて次のように定義)を活用した総会・理事会(招集、実施、定足数・出欠、議決権行使の取扱い等)に係る諸規定が加わりました。

「 電気通信回線を介して、即時性及び双方向性を備えた映像及び音声の通信を行うことができる会議システム等をいう。」

「即時性及び双方向性を備えた映像及び音声の通信」とは…雑に言えばテレビ電話会議的なもの(ZoomとかTeamsのようなもの)を意味します。
先日、この実施に関して「例えば理事の一部について、最初から又は途中から音声だけの通信となった場合、理事会として成立せず、決議も無効になってしまうのか」というご質問を受けました。
確かに、このような状態では「映像及び音声」のうち「映像」を欠きますので、厳密には規約違反となり、その実施・決議に手続的瑕疵があるとして不成立・決議無効、という理屈も成り立ちそうです。
とはいえ、理事会におけるコミュニケーションのほとんどは「音声」によるはずですから、少なくとも「音声」において即時性及び双方向性が保たれているならば、一部の映像がないことが直ちに会議としての実体を損なわせるわけではないでしょう。「書類やデータを閲覧する必要がある」場合であっても、それらを「共有された映像で」見なければならないケースは少ない(事前に参照資料を提供しておけば足りる)はずです。
こうした理由から「その程度の事情によって『理事会が成立していない』とか『その決議が無効である』と法的に評価される可能性はかなり低い」と考えています。
もちろん、会議の内容、理事の人数、音声の即時性・双方向性等諸事情によりますし、何より無用な誤解やトラブルを防ぐためにも、できるだけ規約に沿った設備を整えるよう努めるべきです。

なお、総会は「招集、実施、定足数・出欠、議決権行使等」のあらゆる局面において理事会に比して煩雑・複雑であり、法律上求められる要件も多く、その導入にはかなり慎重な検討と綿密な準備を要します(今回改正された標準管理規約「コメント」も注意点に言及しています。)。そのため、面倒なので前述のとおり速報性を重視した本記事ではあえて触れないでおきます。

 

2.マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高い場合等の対応
この点については、昨年これらのブログでも検討しています。

面倒なので第18条や第42条関係コメントをご参照ください。

3.置き配
第18条コメントに以下のような加筆がなされました。

「専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。」

こうした置き配の導入を検討されている管理組合も多いと推察します。
ただ、これには上記コメントが述べている「共用部分(主に玄関扉前)に物品を置く」とは別に、「物品を置く人間(主に配達員)がそこまで進入する」という要素があること、そして導入に際してはこれらを峻別して検討し、それぞれについて具体的にルールを作る必要があることにご留意ください。

例えば…
A氏「置き配を認めてしまうと、マンションにいつ誰が入ってくるのか分からず、セキュリティ上不安だ」
B氏「対面せず玄関前に荷物を置いてもらえると、感染の心配もないし、身支度等を気にせずにも済むから導入してほしい」

…A氏は「配達員が受取人による個別の入館許可を経ずにエントランスを通過して住宅部分に入り、専有部分前まで来てしまうケース」を想定しています。
これに対しB氏は「インターホンを通じて受取人から入館を許可された配達員が届けに来るケース」を想定していますので、Aと議論が噛み合っていません。

オートロックやコンシェルジュ・管理人の有無といった諸事情に鑑み、「そもそも各マンションにおいて『置き配』とはどのような形態を指すのか」といった定義づけから整理し、その上で「どのような物品をいつまで置いて良いのか」「誰にどのような態様で入館を許可するのか」を、できるだけ具体化することをお勧めします。

4.専有部分配管

面倒なので第21条関係コメント加筆部分だけ引用しておきます。

「配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。」

これだけだと申し訳ないので、関連する裁判例もご紹介(≠解説)します。
東京高判平成29年3月15日(原審 横浜地判平成28年9月30日)

5.管理計画認定及び要除却認定の申請
こちらは面倒なので他の点と毛色がやや違うので、本日は泣く泣く割愛します。

6.その他所要の改正
(1)改元に伴う記載の適正化
コメント中で紹介されている文書書式日付部分「平成_年_月_日」の「平成」が削除されていました…。

(2)書面・押印主義の見直し
令和3年9月1日に、総会議事録の作成方法を定めた下記区分所有法第42条3項から「押印」が削除される改正がなされる予定です。

(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
(以下略)

改正経緯の詳細はこちら↓
http://www.jia.or.jp/resources/news_files/001/265/0000575/M6vyYjoT.pdf

これに伴い、標準管理規約第49条も↓のように改正されます。https://www.mlit.go.jp/common/001410141.pdf

ただ、これはあくまで「区分所有法の強行規定としての押印義務の撤廃」ですから、「各管理組合の規約で押印義務を課していないなら押印しなくていいよ」という意味に過ぎません。言い換えると、各管理組合の規約から「押印」が削除されない限り「(区分所有法ではなく)規約上の義務」として今後も押印を要する、ということになります。そのような「各管理組合の規約『のモデル』」(※本記事文末参照)として、今回標準管理規約においても押印が削除されたわけです。
他方、9月1日の法改正までは区分所有法上の強行規定としての押印義務が続きますから、それより前に規約から押印を削除しても、同日までは「区分所有法上の義務」として押印を要します。・・・少々ややこしいので整理してみます。

①令和3年8月31日まで:規約にどう定めていようと、要押印
②9月1日以降:規約から「押印」が削除されれば(又は元から規約に「押印」がなければ)押印不要。規約に残っていれば、要押印。

②に備えて、8月31日までの総会において予め削除しておくことも可能です。その手法は色々考えられますが、シンプルに条文で「但し、令和3年9月1日以降は…」などと記載したり、その削除に係る規約改正の「施行日」を令和3年9月1日にしたり、といったところでしょうか。

(3)近年の最高裁判決等に伴う改正
これは、こちらのブログ↓でも大はしゃぎした件です。

「理事は互選や理事会決議によって理事長を『選任する』と規定しつつ、『解任する』とは明記していない規約の下で、理事会決議を以て理事長を解任する(理事長職を解く。平理事には残す。)ことができるか」という問題であり、最高裁平成29年12月18日判決はこれを可能と判断し、私は胸をなでおろしました(いずれも理由は上記ブログのとおり。)。
この件は「規約にはっきり書いてあったならば問題にならなかった」ともいえ、そのため上記最高裁判決を受けて、今般の標準管理規約改正に際し「解任できる」ことを第35条や第54条で明記したわけです。
このような経緯ですから「この改正によって解任できるようになった」わけではなく、「規約上分かり易くなった」に過ぎません。

 

・・・大体こんなところでしょうか。
このブログでもしつこくお伝えしているように、標準管理規約は「モデル」に過ぎませんから、これが改正されたからと言って皆様の管理組合の規約が自動的に変わるわけではありませんし、標準管理規約に沿って改正しなければならないわけでもありません(※本記事の「規約違反」も、対応する標準管理規約の条項が採用されていることを前提としています。)。

今回の改正点も参考によく検討し、是非「良いとこどり」をしてください。

あー、そういえば、以前作った標準管理規約&区分所有法の対照表も改定しなければなりませんね…