第三者管理移行前に考えてほしい10のこと 特別編 -ガイドラインと弁護士の起用-

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この2回に亘って「多くの管理組合においては、いわゆる第三者管理を採用するよりも、外部専門家を顧問等のアドバイザーとして起用し、委託先管理会社による業務の適正化を図った方が安全かつ合理的」ということを述べました。

1.外部専門家の活用ガイドライン
そんな中、先日、国交省が「外部専門家の活用ガイドライン」を公表しました。

www.mlit.go.jpこれによると、ガイドラインが主な対象として想定するのは「管理組合の担い手不足の課題に直面し、又は懸念している」「管理不全マンションになることも懸念される」「日常的に区分所有者や管理会社との連絡調整等の業務がある理事長の担い手確保に苦慮、修繕積立金の値上げ・滞納回収が必要といった課題を抱えるようなマンション」とのことです。
そしてガイドラインは、第三者管理(の一部のパターン)を実現するまでのプロセスや注意事項などを詳細に説明しており、資料としては確かに充実しています。
・・・ただ、これに目を通した方、「めんどくさそう」と思いませんでしたか?
ガイドラインで示されている注意事項に目を配りながらこのプロセスをこなしていける人物が管理組合にいるのなら、その方は全日本上位数%に間違いなくランクされる理事長能力を備えているはずですから、前2回で述べたとおり、その方が理事長を務め
必要に応じて外部専門家の助力を得つつ管理会社をコントロールしていくのが合理的で経済的であると、私は考えるわけです(逆にいえば、ガイドラインが想定する「担い手不足」のマンションに、こうしたプロセスをこなせる方がいるのかが心配です。)。
ガイドラインも、そのプロセスにおいて「顧問やアドバイザーとして外部専門家の支援を受けること」を提案しているのですが、よほど特別な事情がなければ、私は「その形」で良いと思っています。

2.弁護士と第三者管理
さて、後編の最後で予告した「弁護士が管理者を務めること」について考えてみます。私は消極的であり、その理由は既に前編・後編で述べたとおりですが、改めて。
(1)業務内容
弁護士は法律の専門家であるものの、建物の維持管理の専門家ではありません。もちろんマンションの事情にもよりますが、短期的(日常的)にも長期的にも要求されるのはむしろ後者の能力であって、これに比べると法律の専門知識を要する場面は一時的なものが多いと思われます。
なお、最近は(私を含め)マンション管理士資格を有する弁護士が増えてきました。ただ、同資格試験合格程度の知識のみを以て第三者管理における外部専門家として期待される水準の業務をこなせるかというと、私は安易に賛成できません。同試験で問われる知識は「専門家として管理組合・区分所有者に助言するのに最低限必要な知識」であるとはいえるものの、「第三者管理を担うのに十分な知識」には足りないと思いますし、何より同資格は「経験」を担保していないからです。
(2)継続性
弁護士の多くは個人事業者ですから、身体的(病気等)・経済的(経営不振)・法律的(懲戒等)な事情により業務を継続できなくなった場合には、それを他の者が引き継ぐ体制は通常整っておりません。他の弁護士が「一時的につなぐ」ことや後任を務めることは不可能ではありませんが、業務に個性が強く表れる弁護士の特質上円滑に引き継がれるとは限りませんし、管理組合との信頼関係も一から構築し直さなければなりません。
(3)事業規模
上記(2)継続性とも関連しますが、個人事業者である弁護士が管理業務上何らかの「事故」を起こした場合、その賠償原資が潤沢であるとは限りません(もちろん弁護士保険で賄える場合が多いとはいえます。)。
(4)コスト
ガイドラインも「外部専門家には、区分所有者である役員よりも高度な善管注意義務が課されると考えられる」と指摘しているように、当たり前のことながら弁護士は細心の注意を払って業務にあたり、また管理業務に必要な知識をアップデートしていかなければなりません。
また、上記(1)~(3)の要件を充たすために弁護士(やその組織)は相応の負担を強いられます。
当然、これらのコストは弁護士に第三者管理を任せる場合に支払う費用に反映されることになります。
(5)弁護士が行う他の業務との違い
私が最も強調したいのはこの点です。
確かに、多くの弁護士は後見人、相続財産管理、破産管財といった「財産管理業務」を日常的に取り扱っており、これを理由とした「弁護士には第三者管理の適性がある」という意見もあるようです。
しかし、これら「財産管理業務」とマンション管理には根本的な違いがあります。
財産管理業務は(会社更生等は別として)基本的に「現状維持」「管理資産・対象者は固定」「収束・清算」を目的とするのに対し、マンション管理は全く逆に「修理・改良」「管理対象建物の状況は日々変化・区分所有者は流動的」「数十年単位の継続・発展」を目的とするということです。
もちろん、一定の能力は両者に共通して必要とされますから、弁護士が財産管理業務を通じて培った能力がマンション管理において役立つ場面は少なくありません。
しかし「弁護士であれば財産管理業務に慣れているから、マンション管理も十分に扱える」ということは決してありません。マンション管理はそれほど単純なものではないのです。

同業の先生方から叱られてしまうかも知れませんが、以上が私の率直な考えです。
今回までの3回に亘る記事が、第三者管理採用をお考えの皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。

・・・次回辺りではそろそろ民泊新法について書かなければなりませんね。

拝啓、楽天代表取締役 三木谷浩史様 -楽天、民泊事業参入-

www3.nhk.or.jp

楽天が民泊事業へ参入するようなので、先日Airbnb代表取締役田邉様を想って書いた私の切なる願いを、そのまま三木谷様へもお伝えします。

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第三者管理移行前に考えてほしい10のこと 後編

前回(AKBに学ぶマンション管理組合運営 -私のことは嫌いでも(以下略- - 弁護士・マンション管理士 桃尾俊明のブログ)の最後にお約束しましたので、硬派なブログに戻ります。第三者管理について考えた前編の続きです。

2.外部専門家(業者)側の事情
前編の「1.管理組合側の事情」の「(2)外部専門家の選定が大変」や「(3)第三者管理を担える外部専門家が少ない」と一部重複しますが改めて。

(1)広範な分野に対応できる外部専門家
マンションでは日々どのようなことが起こり、管理者(≒理事長&役員)はどのような場面で対応・判断を迫られるでしょうか。
日常的な管理・清掃、植栽、ゲストルーム等共用施設の管理、設備不良・故障、備品の購入、工事の発注、修繕・耐震・建替え計画の策定、管理人との遣り取り、管理費滞納等の問題のある区分所有者、住民間トラブル、会計・税務処理、専有部分内工事の申請・承認、専有部分売却時の仲介業者調査、対管理会社契約交渉、理事会・総会運営、隣地との境界確認、隣地住民とのトラブル、町内会等との関係構築、規約・細則変更、法人化とその登記・・・まだまだありますね。

これらに万遍なく「専門家レベルで」対応できる外部専門家を見つけるのは容易ではありません。

(2)継続性
マンション管理は数十年単位の仕事ですから、日々ノウハウや情報を蓄積していく必要があります。「外部専門家(管理会社も含みます)を雇う」とは、彼らが蓄積させてきたノウハウや情報を買うことでもあります。
ところが、あるマンション固有のノウハウや情報を外部専門家に集中させていた場合、その外部専門家が個人であったり小規模組織であったりすると、万一の場合にそれまでの積み重ねが失われてしまい易くなります。
また、外部専門家を替えた際に、こうした物件固有のノウハウや情報が(競合他社である)後任者にスムーズに引き継がれるとは限りません。

(3)コストと責任
こうした様々な問題への処理に要する日常的・突発的・継続的な作業は決して少なくありませんし、これらを第三者管理として引き受ける外部専門家も、高レベルな責任を負うことを前提に取り組まなければなりません。
そのため、(上記のように希少な)外部専門家にそれを委ねるとすれば、相応のコストを覚悟しなければなりません。

(4)財務的基盤
この「責任」とも関連しますが、外部専門家がミスや犯罪を犯した場合には最終的に金銭的賠償を求めることになります。
しかし、外部専門家が個人や小規模組織の場合、その賠償資金が乏しく被害回復を図れない虞があります(もちろん保険によりカバーがされる場合も多いでしょうけれど)。

(5)マンション管理会社
(コストについてはともかく)こうした条件をクリアし易い存在がマンション管理会社です。そのため「管理会社を外部専門家として起用するタイプの第三者管理」も考えられます。
ただ、それなら「役員は区分所有者が担い、管理の実質的大部分を管理会社に外注」という一般的なスタイルをとりつつ、管理会社の業務を監視監督すれば足りるのではないでしょうか(後述します。)。

3.管理意識
多くの方にとってマンションはとても大きな資産であり、大切な住まいであるはずです。
ところが、上記のような「役員は区分所有者が担い、管理の実質的大部分を管理会社に外注」という一般的スタイルをとっていても、「自分たちの資産を自分達で管理している」という意識はなかなか醸成されません。それなのに、この「役員は区分所有者」という要素まで欠けてしまったら管理意識はますます低下してしまい、第三者管理方式において不可欠である「外部専門家に対する監視・監督」も実効性を失うことになるでしょう。
輪番でも抽選でも長期政権であっても、とにかく「区分所有者が自ら管理を担っている」という意識の存在は、形には見えずとも少なからず管理状況に影響を及ぼしていると思います(もちろん、上記いずれの態様も過剰な場合は弊害もありますが。)。

4.私の考え
「第三者管理を採用しよう!」と考えている方へ。
2回に亘ってご紹介したように、それを実行すること、その後健全な管理を維持すること、その後方向転換することのいずれも、決して平坦な道ではありません。
もし、貴方が「それでもやる!」という決意をお持ちなのであれば、まずは貴方が理事長として、(上記のとおり外部専門家としての利点を広く備えているはずの)委託先管理会社と向き合い、その業務に問題があれば改善するよう求めるのが最も効率的で合理的だと思います。
その交渉に不安があり、また管理会社の業務の適否の判断がつかないのであれば(それが普通です。)、まずは外部専門家に「相談」し、一定期間管理を「手伝って」もらい、管理会社の業務の良し悪しを「見極め」てもらいましょう。
今は自主管理という方も同様です。こうした「相談」と「助力」を得ながら、管理会社を選択したり第三者管理採用の適否を見極めてもらったりするのです。
そのような関わり方であれば、外部専門家に支払うべき費用も(第三者管理の場合に比して)然程高額にはならないはずですし、その専門家との相性が悪くても、他に替わってもらえば良いだけです(「一旦始めた第三者管理を止める」よりもずっと簡単です。前編の「1(5)後戻りが困難」参照)。
しばらくそのように専門家の助力を得ながら管理会社を上手く使って管理に取り組み、その上で「やはり第三者管理が望ましい」という結論が変わらなければ、それから実行に移しても遅くはありません。
他の役員のなり手がいないのであれば、その定数を減らしてしまっても構いません(これも第三者管理採用よりずっと簡単にできることです。)。後で「役員に加わりたい」という仲間が現れた際に改めて増やせばよいのです。

「第三者管理を採用しよう!」と決断したということは、貴方はマンションの将来を真剣に考え、対策を模索し、第三者管理という方法に辿り着いた人であるということです。その上で「やれる」自信がある貴方であれば、きっと良い理事長になれると思います。

5.弁護士による第三者管理については番外編で
さて、弁護士の私が書いたこの記事をお読みになり「弁護士に管理者を任せてもダメなのか」という疑問を持つ方もおられるでしょう。
私は「お勧めしないし、当面私も引き受けない」とお答えします。
その理由は番外編として別の機会にご説明しようと思っています。

AKBに学ぶマンション管理組合運営 -私のことは嫌いでも(以下略-

今年もAKB総選挙が開かれましたので、いつもの便乗記事を書いてみます。

1.私のことは嫌いでも、管理組合のことは嫌いにならないでください!
この言葉を聞いて、前田あっちゃんというコは理事長経験者なのかと思いました。
管理組合理事会というグループには、ファンもいればアンチもいます。もちろん、最も多いのは無関心という方々です。ファンの中にもセンター(理事長)推しの方もいれば、渋く仕事をしている総監督(監事?)推しという方もいるでしょう。運営側(管理会社?)が気になる方もいるかも知れません。

理事長は、そんな管理組合を引っ張っていかなければなりませんから、全国民(区分所有者)から好かれることは期待できず、当然アンチや他メンバー推しからは嫌われてしまうこともあります。
そんな理事長は「私のことを理解してくれないのはおかしい!」などと怒ってはいけません。「私が管理組合のことを思って取り組んでいることは、いつか理解してくれる。今は嫌われても仕方ない。せめて資産価値を維持するために管理組合には協力して。」という気持ちを持つことが大切です。

2.総選挙を盛り上げる
次の選抜メンバー(次期理事会)を輪番やジャンケン(抽選)で決めるのも悪くありませんし、固定化された神7も頼りになりますが、やはり役員総選挙を盛り上げることで適度な緊張感を維持した方が管理も活性化することでしょう。大規模マンションであれば、アンダーガールズ(補欠)制や姉妹グループ(委員会)制の採用も有用です。

3.メンバーを過剰に責めない
役員といっても、殆どの方はつい最近まで普通の女の子(マンション管理未経験)ですから、当然間違った判断をしてしまうこともあります。
そんなとき、事情や経緯を説明させたり反省を促したりといった程度を超えて過剰に責めてしまっては、その方や現メンバーだけでなく、これからメンバー入りが予定されている方々を萎縮させてしまいます。
せいぜい姉妹グループへの移籍に止めましょう。丸坊主の強要など、もってのほかです。

4.情報公開のタイミングを見誤らない
人には、心の準備というものがあります。
いくら重要な事柄だからといって、事前配布された議案書にも書いていない驚くべき情報を、総会の場で突然公開されては困ってしまいます(法的に決議もできません。)。
例えば、多くの役員就任賛成票が集まったのに、総会の場で「明日物件を売ることになりました。」では、やはり総会はざわつきますし、長年神7として管理組合を守ってきた古参メンバーもいい顔をしないでしょう。直ちに代わりの役員を選任することも容易ではありません。
もちろん「とにかくその場で公開しておかないと、後で不本意な形で情報が漏れる恐れがある。」というケースもありますから、ある程度の現場の判断も必要ですが。

このツイートが思いのほか広まったので慌てて書きました。次こそは、本来の(?)硬派なブログに戻したいと思っています。

 

拝啓、Airbnb代表取締役田邉様 -民泊新法成立-

住宅宿泊事業法案(民泊新法)成立に伴い、Airbnb代表取締役の田邉氏が声明を発表したようです。

airstair.jp

その中で同氏は次のように述べておられます。

「ホームシェアを含む住宅宿泊事業は、日本に大きな可能性をもたらします。2016年だけで、Airbnbのホストコミュニティによる日本経済の押し上げ効果は約9200億円(83億ドル)でした。観光業を拡大、多様化し、かつ空き家の活用にも繋がります。」

・・・民泊が観光業のみならず日本経済全体に好影響を与え得るものであることについては、私も異論がありません。

しかし、上記「約9200億円の日本経済の押し上げ効果」の一部が、民泊を禁じている分譲マンション管理組合や区分所有者の犠牲の上に成り立っていることについても、改めてご認識いただきたいと思います。

豪華なエントランス、万全のセキュリティを備えたオートロック、管理の行き届いたホール、廊下、エレベーター、ゲストルーム、清潔に保たれたゴミ置場、静謐な環境・・・これらは全て、管理組合・区分所有者が経済的・物理的負担を負って懸命に維持しているものです。

もちろん、管理組合が積極的に民泊を許容しているのであれば、区分所有者も(主に収益物件としての価値向上という意味で)その利益を享受しているといえるでしょう。

しかし、上記のように民泊を禁じているマンションにおいて民泊を展開することは、管理組合や他の区分所有者の経済的・物理的負担へのフリーライドであると言わざるを得ません。

Airbnbを初めとする民泊業者の皆様、そしてホスト・ゲストになろうとする皆様は、どうかこの点を十分ご理解の上、管理組合のルールを順守して民泊事業を展開し、また民泊体験を満喫していただきたいと思います。

・・・民泊新法については、改めて検討した上で記事にする予定です(いつとはお約束できませんがw)。
民泊に関して不安に思っておられる管理組合の方は、やや古い記事となりますが、まずはこちらをご参照ください。

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民泊に関し管理組合とトラブルになっている方のご相談も受け付けております。

第三者管理移行前に考えてほしい10のこと 前編

前回記事とタイトルがかぶってしまいました。
自分の構成力のなさが恥ずかしいです。
そして今回も「10」にできる自信がありません。

マンション管理に関心のある方は「第三者管理」という言葉を聞いたことがあると思います。(似た言葉に「第三管理組合」がありますが全く異なります。それは本ブログで以前ご紹介した禁断の技のことです。)

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本ブログは専門家向けではなく、マンション管理の現場で奮闘する皆様に分かり易く解説することを主目的としていますので、(それを言い訳にして)ものすごくざっくり簡単にご説明すると・・・

第三者管理とは「区分所有者以外の専門家(業者)に、(外部の顧問としてではなく)管理組合役員の一員として管理を担ってもらう」という手法です(以下、ここではこの専門家(業者)を「外部専門家」といいます。)。
平成28年3月の標準管理規約改正以降話題になることが多く、国交省の上記標準管理規約改正に係るコメント文末でも複数の形態につき詳しく解説されています。http://www.mlit.go.jp/common/001135988.pdf
(ずーっと下にスクロールすると現れる別添1「外部専門家の活用パターン」)

この第三者管理は、主に次のような目的が想定されているようです。
・区分所有者の高齢化・専有部分の賃貸化等による役員のなり手不足や管理不全の解消
・大規模修繕・耐震改修・大型マンション等専門知識を要する問題への対処

もちろん、第三者管理はこうしたニーズに応え得る手法であるとは思います・・・が、今のところ、私は以下の理由によりあまり浸透しないと予想しており、お勧めもしていません。

1.管理組合側の事情
(1)現行制度から第三者管理採用までのプロセスが大変
標準管理規約を初めとする多くのマンションの管理規約では、役員就任資格が区分所有者に限定されています(ここでは「居住」の有無は無関係です。)。

そのため、第三者管理を採用するには規約変更を要します。
ただ、外部専門家が管理組合の意思決定に多大な影響を及ぼすようになりますから、区分所有者からの反発が生じることも多く、規約変更は必ずしも容易ではありません。

(2)外部専門家の選定が大変
一口に外部専門家といっても、どのような人物・業者に任せるかを選ばなければなりません。とはいえ、通常管理組合はその判断能力を備えていませんから、選定はとても難しくなります。単に「安ければいい」なら簡単ですが、そのような基準でマンションの将来を委ねて良いはずがありません。能力・得意分野・規模・人格・コストといった多くの観点から比較検討する必要があります。

(3)第三者管理を担える外部専門家が少ない
「マンション管理の専門家」としてどのような資格・肩書・業者をイメージされるでしょうか。建築士・弁護士・会計士といった所謂士業をお考えになるかも知れません。
ただ、ご存知のとおりマンション管理は建築設備・法務・会計等の全般に関わりますから、役員として管理組合の意思決定に関わる以上はオールラウンダーであることが望まれ、上記士業ではその点が不十分です。
その観点でマンション管理士も有力な選択肢となります。ただ、多くのマンション管理士資格保有者がおられるものの、未だ資格として広く世間に認知されているとは言い難く、また、例えば多くの管理組合と顧問契約を締結するなどして第三者管理を任せ得る水準の実績を積んでいる方は、残念ながら然程多くありません。

(4)第三者管理を採用した後は、その監視・監督が必要
もちろん、殆どの外部専門家は誠実に業務を遂行してくれるはずです。
とはいえ、これまでも管理会社従業員による横領事件や、分野は違うものの後見人弁護士や司法書士が資産を横領するという事件が少なからず発生しています。
従来の「管理会社にお任せ」よりも高い安心を求めるには、区分所有者自身による監視・監督が必要不可欠です。

(5)後戻りが困難
第三者管理は通常規約で根拠づけられますから、それを止めるには規約を改正する必要があります。
「第三者管理採用時にも改正したのだから、ただの規約改正くらい簡単にできるよ」と思われるかも知れませんが、そうでもありません。状況が全く異なります。

 一般的な規約において、規約改正を含む総会決議事項は理事会が策定します。
そのため「総会で決める」といっても、その方向性は実質的に理事会がほぼ固めることになりますし、多くの委任状は議長(≒理事長≒理事会)に集められますので、現実には理事会の方針を総会で覆すことは困難です。

そして、外部専門家はこの理事会の意思決定に強い影響力を及ぼしていますので(そのために外部専門家を起用していますから当然です。)、第三者管理を採用していない場合よりも一層その傾向は強くなるはずです。理事会「外」の区分所有者が外部専門家の業務を不適切と考えたとしても、簡単に交代させたり同制度を止めたりすることはできません。
もちろん、理念としては「他の理事等が外部専門家をコントロールする」ことになっているはずですが、真に理事会がそのような能力を有しているのならば正に下記のとおりです。

このように、第三者管理を採用し、健全にそれを維持するためには、管理組合・区分所有者自身に能力と努力が求められます。
もし貴方(達)が「自分(達)ならできる!」という自信と能力をお持ちであればそれはとても素晴らしいことですが・・・それなら、貴方が理事(長)として、現在委託している管理会社を監視・監督すれば足りる、というよりその方が合理的だと思うのです。

長くなりましたので「2.外部専門家側の事情」は次回にします。

不動産格差を嘆く前にしたい10のこと

のうち、ここでは2つしか書きませんし、そのうちの1つの大部分は別の機会に書きますし、そもそも私は10も思いついていませんので、初めにお詫びしておきます(なお、お察しのとおり、人のセックスも人の住む街も笑うな - 弁護士・マンション管理士 桃尾俊明のブログと同じく、私は

movies.yahoo.co.jp

を見たことがありません。)。

でもご安心ください。不動産コンサルタントである長嶋修氏の新作著書「不動産格差」には、格差を嘆く前にできることが10どころではなく紹介されています。

www.sakurajimusyo.com

書名や「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」という帯は少々刺激的ながら、内容は「不動産購入の基本的な教科書」といった印象で、データや写真を丁寧に引用した読み易く分かり易い本です。
新築・中古、またマンション・戸建てを問わず、これから不動産を購入しようとされる方にとって、のらえもんさんの「本当に役立つマンション購入術」と同様、良い参考資料になろうと思います。

専門家は絶対に教えてくれない! 本当に役立つマンション購入術 (廣済堂新書) | のらえもん |本 | 通販 | Amazon

私なりに一言で本書をまとめるならば「不動産には、立地のように努力では如何ともし難い決定的な要素があるものの、その調査・選択やリフォーム・管理によってその格差を挽回し、更には他に大きく差をつけることができる要素も数多くある」というところでしょうか(我ながらつまらないまとめですが。)。

同書の内容は多岐に亘りますから、このブログではそのうちのマンション管理について、そしてもっと絞って「管理組合の情報開示」と「第三者管理」の2点について、もう少し具体的に触れてみることにします。

1.管理組合の情報開示
長嶋氏は同書において、中古マンションの取得に際して管理組合の議事録等の閲覧ができれば有用な情報を得られるとしつつ、現実にはあまり開示はなされていない、と指摘しています。
確かに、総会や理事会の議事録は(きちんと作成されていればの話ですが)情報の宝庫です。とはいえ、詳しい議事録であればあるほど、プライバシーに関わる事項や対外的にはオープンにしたくない事項(管理組合内で対立が生じているとか、裏で誰かさんのような弁護士が暗躍しているとか)も盛り込まれていますから、これをそのまま開示しようという話だと、なかなか多くの区分所有者の賛同を得られないかも知れません。

そこで、こうした議事録等とは別に「マンションを買おうとしている人に見てもらうための資料」を用意しておくことが考えられます。その最たるものが管理組合のホームページです。マンション管理業界(?)に多少なりとも詳しい人であれば誰でも知っているマンションの実例をいくつか挙げておきます。

www.isa515.com

tokias.jp

prism511.com

パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー 【公式サイト】

手間もコストもかかる手法ですが、これほど充実していれば、それらの負担を大きく上回る効果がありそうです。

また、昨年夏に標準管理委託契約が改正され情報開示対象項目の充実が図られるという動きもありました。

国交省
マンション標準管理委託契約書・同コメントの改正概要 別添1
http://www.mlit.go.jp/common/001140312.pdf

このように、今後は一層「情報開示によって資産価値を上げる」という考え方が広まると思われますから、まず第一歩として管理組合(管理会社)から仲介業者に対してどのような説明がなされているかを把握することで管理意識を変え、それを日々の管理業務へ反映させることをお勧めします。
そして上記のようなホームページを作ることは大規模かつ高度な管理組合でなければなかなか現実的ではありませんので、最初は大きくハードルを下げ、簡易な広報紙のようなものから初めてみても良いでしょう。ただ、前述のような事情もありますから、「どんな情報を開示するか」については事前に管理組合内で十分に協議しておくことが肝要です。

2.第三者管理
長嶋氏は、管理組合の運営に第三者を介在させることも強く勧めておられます。
他方で、最近よく話題となる所謂「第三者管理」に関し、外部専門家に理事等役員としての議決権を持たせることには慎重になるべきと指摘し、あくまで第三者性・客観性を保てる方式を推しています。

この点は、私も全く同意見です・・・が、これについては一つのテーマとして別の機会に書いてみようと思います。