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不動産格差を嘆く前にしたい10のこと

のうち、ここでは2つしか書きませんし、そのうちの1つの大部分は別の機会に書きますし、そもそも私は10も思いついていませんので、初めにお詫びしておきます(なお、お察しのとおり、人のセックスも人の住む街も笑うな - 弁護士・マンション管理士 桃尾俊明のブログと同じく、私は

movies.yahoo.co.jp

を見たことがありません。)。

でもご安心ください。不動産コンサルタントである長嶋修氏の新作著書「不動産格差」には、格差を嘆く前にできることが10どころではなく紹介されています。

www.sakurajimusyo.com

書名や「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」という帯は少々刺激的ながら、内容は「不動産購入の基本的な教科書」といった印象で、データや写真を丁寧に引用した読み易く分かり易い本です。
新築・中古、またマンション・戸建てを問わず、これから不動産を購入しようとされる方にとって、のらえもんさんの「本当に役立つマンション購入術」と同様、良い参考資料になろうと思います。

専門家は絶対に教えてくれない! 本当に役立つマンション購入術 (廣済堂新書) | のらえもん |本 | 通販 | Amazon

私なりに一言で本書をまとめるならば「不動産には、立地のように努力では如何ともし難い決定的な要素があるものの、その調査・選択やリフォーム・管理によってその格差を挽回し、更には他に大きく差をつけることができる要素も数多くある」というところでしょうか(我ながらつまらないまとめですが。)。

同書の内容は多岐に亘りますから、このブログではそのうちのマンション管理について、そしてもっと絞って「管理組合の情報開示」と「第三者管理」の2点について、もう少し具体的に触れてみることにします。

1.管理組合の情報開示
長嶋氏は同書において、中古マンションの取得に際して管理組合の議事録等の閲覧ができれば有用な情報を得られるとしつつ、現実にはあまり開示はなされていない、と指摘しています。
確かに、総会や理事会の議事録は(きちんと作成されていればの話ですが)情報の宝庫です。とはいえ、詳しい議事録であればあるほど、プライバシーに関わる事項や対外的にはオープンにしたくない事項(管理組合内で対立が生じているとか、裏で誰かさんのような弁護士が暗躍しているとか)も盛り込まれていますから、これをそのまま開示しようという話だと、なかなか多くの区分所有者の賛同を得られないかも知れません。

そこで、こうした議事録等とは別に「マンションを買おうとしている人に見てもらうための資料」を用意しておくことが考えられます。その最たるものが管理組合のホームページです。マンション管理業界(?)に多少なりとも詳しい人であれば誰でも知っているマンションの実例をいくつか挙げておきます。

www.isa515.com

tokias.jp

prism511.com

パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー 【公式サイト】

手間もコストもかかる手法ですが、これほど充実していれば、それらの負担を大きく上回る効果がありそうです。

また、昨年夏に標準管理委託契約が改正され情報開示対象項目の充実が図られるという動きもありました。

国交省
マンション標準管理委託契約書・同コメントの改正概要 別添1
http://www.mlit.go.jp/common/001140312.pdf

このように、今後は一層「情報開示によって資産価値を上げる」という考え方が広まると思われますから、まず第一歩として管理組合(管理会社)から仲介業者に対してどのような説明がなされているかを把握することで管理意識を変え、それを日々の管理業務へ反映させることをお勧めします。
そして上記のようなホームページを作ることは大規模かつ高度な管理組合でなければなかなか現実的ではありませんので、最初は大きくハードルを下げ、簡易な広報紙のようなものから初めてみても良いでしょう。ただ、前述のような事情もありますから、「どんな情報を開示するか」については事前に管理組合内で十分に協議しておくことが肝要です。

2.第三者管理
長嶋氏は、管理組合の運営に第三者を介在させることも強く勧めておられます。
他方で、最近よく話題となる所謂「第三者管理」に関し、外部専門家に理事等役員としての議決権を持たせることには慎重になるべきと指摘し、あくまで第三者性・客観性を保てる方式を推しています。

この点は、私も全く同意見です・・・が、これについては一つのテーマとして別の機会に書いてみようと思います。

刑事弁護をやらない弁護士がローカス先生のブログを読んで思ったこと

私は刑事弁護を扱っていません。
高尚なポリシーがあるわけではなく「知識も経験もない」からという理由です。
「刑事弁護は専門性が高い分野であり、しかも短時間で判断・処理しなければならないことが多いから、私が付け焼刃的に勉強して担当するくらいなら、他の弁護士に任せた方が依頼者の利益になる。」と言い訳しています。
おそらく弁護士が東京ほど多くない地方ではなかなかこうはいかず、東京だからこそとり得るスタンスなのだと思います。

さて、最近「痴漢を疑われた男性が線路に降りて逃走した」とか「逃走してビルから転落して死亡した」といった事件が起こり話題となっています。

www3.nhk.or.jp

そんな中、twitterで積極的に情報発信をしている弁護士の三浦義隆先生(twitterではローカス先生という名で有名です。)が次のブログを公開したところ、大きな反響があったようです。

miurayoshitaka.hatenablog.com

miurayoshitaka.hatenablog.com

上記のとおり私は刑事弁護の知識・経験を備えていませんから、恥ずかしながらこれらのブログを読んだ感想は「ふむふむ、なるほど。」という程度のものでした。
紹介されている「裁判所の現在の運用」の実態や弁護士としての「感覚」の適否は、私には分かりません。ローカス先生とは異なる見解をお持ちの弁護士もいるでしょうけれど、それを分析する能力を私は持ち合わせておりません。

そんな私が僭越ながら上記ブログをまとめてみるならば「逮捕を避けるため、そして逮捕されてしまったとしても勾留を避けるためには、留まって弁護士を呼んだ方が安全。無理に逃げると却って逮捕・勾留のリスクが高まる。」ということになろうと思います。

こうした私なりの(浅い)理解・感想とは別に、気になった議論がありました。
このブログに端を発してtwitterの一部で展開された「推定『有罪』であるかのような現状の司法制度はけしからん」といった主張と、これに対するローカス先生の「全体を一気に改善するなら政治の仕事」という回答です。
結論から言えば、私もローカス先生の言うとおりだと思います。

刑事弁護活動は一般的に民事に比して短期決戦であって、その瞬間ごとの状況に応じて行動・対応しなければなりません(それくらいは私も知っています。)。これは弁護人のみならず被疑者自身も同様であり、今回のブログはその貴重な行動指針となるものといえます。

その最中において「現行の運用がおかしい。推定無罪の原則を蔑にするこの担当裁判官の意識を変えなければならない。」と嘆いたり、その根本的解決を図ったりしている余裕はありません(なお、ローカス先生がそれらを放棄しているわけではないことは容易にブログから読み取れます。)。

思いっ切り身近な(?)例に例えるなら・・・「審判が(客観的にはストライクであるのに)外角いっぱいをとってくれない」という状況下で、「貴方の判定はおかしい」と審判に詰め寄れば退場させられるでしょうし、「審判を替えてくれ」と頼めば笑われるだけで試合はそのまま続くことでしょう。
このとき、まともなキャッチャーなら、ピッチャーに「外角より内角を攻めよう」などとアドバイスするのではないでしょうか。
ただ、これだけでは「この審判は外角いっぱいをとらない」という本来のルールからすればおかしな状況が続いてしまいますから、根本的に解決するには野球界のエライ人がこの審判を首にするか、ルールを以て判定を厳格化するほかありません。

これは刑事司法制度も同じことで、裁判官が「無罪推定の原則」を守ろうとしないならば、最後は人事・立法という「政治」によって守らせるほかありません。

そして、多くの弁護士は刑事司法制度の枠外でも、「無罪推定の原則」が徹底されるよう政治的活動に尽力しています(刑事弁護に熱心に取り組んでいる弁護士ほど、こうした活動にも力を入れていると思います。)。

言うまでもなく、弁護士は個々の刑事事件において全力を尽くさなければなりませんし、それが不十分であれば批判は免れません。しかし、このように長期的・根本的な解決には政治的な力も不可欠です。
とすれば、その力を持っている市民がこの問題や刑事司法制度全般に関心を持ち正確な知識を得ることが肝要です。ローカス先生のブログは、その大きなきっかけになったと思います。

・・・なんてことを書いている途中で、ローカス先生が3本目のブログをアップされたようです。大事なことはこちらに全部書いてありますので、私からはこのへんで。

miurayoshitaka.hatenablog.com

人のセックスも人の住む街も笑うな

movies.yahoo.co.jp

突然ですが、皆さんこの作品をご覧になったことはあるでしょうか?
すみません、私はありません。
感想ブログやレビューによると、冒頭で「Don't laugh at my romance.」という英語タイトルが流れる素敵な作品のようです。

さて、実は少々怒っています。
笑ってはいけないのは、他人のセックスやロマンスだけじゃねーぞ、と。

日刊SPA!のこの記事。
ご近所トラブルが多い街・ワースト5 

news.livedoor.com

タイトルだけで嫌な予感がしましたが、中身を読んでみたところ・・・予想どおりとても不快感を覚えました。
SPAが面白おかしく街にレッテルを貼るだけならまだしも、有名な弁護士さんのコメントがそれに彩りを加えているので、ここで挙げられている街にお住まいの皆様の名誉と、その街の物件の資産価値を少しでも回復するべく、無粋ながらネタにマジレスをいたします。

まず、「ワースト5」とのことですが、何を基にしたランキングなのでしょう?
本文を読むかぎり街を評価しているのは佐藤弁護士のようであるものの、何を比べて順位をつけているのかがよく分かりません。
「トラブル多発の街」とのことですから、同弁護士の相談件数でしょうか。
だとすると、燦然と1位に輝く「成城の古参住民vs新参住民やミュージシャンが絡むトラブル」の相談件数は、足立区全域のマンション内騒音の相談件数より多いことになりそうですが、本当でしょうか。

また、全く別エリアであるにも関わらず一つにされている同率1位の玉川は、今では二子玉川ライズに代表されるところですが、本当にここで閉鎖的な古参住民と新参住民のトラブルが、1位にランクされる程度の頻度で起きているのでしょうか(古くからお住まいの住民が多いという意味に限れば、周辺の瀬田や上野毛の方が当てはまる気がします。)。

ベンチャー系のパリピが入居しているマンションは、2位にランクされるほど、そして六本木や麻布などよりも、恵比寿に多いのでしょうか。

スカイツリー周辺の下町のいじめが他の街と比較して「容赦ない」とは、事実でしょうか。佐藤弁護士は、このエリアと他のエリアとに有意な差を見出すことができるほどの件数のいじめ相談を受けているのでしょうか。仮に本当にそうだとしても、それをこのように公表するべきだったでしょうか。

豊洲の(タワー?)マンション・PTA内不倫やスポーツクラブのコーチとの不倫が他の街より多いことを、どうやって確かめたのでしょうか。例えば世田谷の大規模マンション(二子玉川ライズ(約1000戸)、深沢ハウス(約770戸)、東京テラス(約1000戸)、桜上水ガーデンズ(約880戸))と比べて、豊洲の方がご近所不倫(?)が多いことを示すデータはあるのでしょうか(なお、私はこれらの大規模マンションの住民から不倫相談を受けたことはありませんが、そのことを以て「豊洲の方が多い」という結論は導けません。)。佐藤弁護士やSPAの記者は、砂の塔をご覧になったのではないでしょうか。

momoo-law.hatenadiary.jp

足立区の賃料が都心に比して安いことは確かですが、その分「壁が薄い」のは本当でしょうか。少なくとも私はこれまで足立区のマンションの住民から「壁が薄くて夜の営みの声がうるさい」という相談を受けたことは一度もありません。そして、ここで単に「声」ではなく「人のセックス」の声を例に挙げる意味はあるのでしょうか。
なお、騒音問題は客観的な音の大きさよりも「静かであるはずなのに聞こえる」というギャップによって生ずることが多く、むしろ防音設備が整ったマンションの方がトラブル化し易いというのが、私の印象です。

最後に、佐藤弁護士が事務所を構えておられる文京区の治安が良いことに異論はないものの、少なくとも私のマンション管理相談経験からは、その件数において周辺区との明らかな差はありません。このエリアに多いヴィンテージマンション特有の相談もありますし、最近話題となったル・サンク小石川のトラブルが起こったのは正に文京区です。

mainichi.jp

率直に申し上げて、このランキングが「佐藤弁護士が実際に受けた相談件数」を基に作成されたとは思えません(佐藤弁護士の真意がそのまま表れた記事ではないのでは、とも推察します。)。
根拠が相談件数でないのだとすれば、何に基づく順位なのかを明示しないでこのような記事を掲載することは、安易で下品なレッテル貼りと言わざるを得ないと思います。

もし佐藤弁護士の実際の相談実績によってこのランキングを作成したのだとしても、それをこのような形で明らかにするべきであったか、大いに疑問です。
なぜなら、この記事によって、同弁護士に相談をした方々がお住まいの成城、玉川、恵比寿、スカイツリー周辺、豊洲、足立区全域という街に対する社会的評価が低下しかねないからです。物件を所有しているならば、その資産価値(売却価格、賃料)への影響が生ずることもあり得ます。

街にはそれぞれ特徴があることは否定しません。
しかし、ネガティブな事柄であればあるほど、それを語る際には明確な根拠を示すべきです。

人生最大級の買い物で手に入れ、思い出や思い入れの詰まった住まいのある街を笑われて喜ぶ人はいないのですから。

第三管理組合の作り方 -用法・用量を守って正しく作ってください-

本日、こんなブログを読みました。
面白いのでまずは皆様もご一読ください。

www.gentosha.jp

・・・いかがでしたか?
リゾートマンション、共用部分、税金、管理費・修繕積立金、雨漏り、資産価値、管理組合の分裂・対立・・・区分所有法の教科書のように、マンションに関する重要単語が盛り沢山でワクワクしますね。しませんか。

その中でもひときわ目を引くパワーワードがありました。
そう、「第二管理組合」です。

皆様ご存知のとおり、区分所有建物(分譲マンション)における区分所有者は区分所有法上当然にその建物の管理を担う団体を構成し、一般的にその団体を管理組合と呼びます。
このような性質上、一つのマンションの管理組合は一つです(一部共用部分や団地という例外もありますが、ここでは割愛します。)。

では、「第二管理組合」とは何でしょうか。

最初から管理組合、理事会又は規約の体裁すら整っておらず複数の管理組合がほぼ同時に「立ち上がる」というケースもありますが、比較的多いのは事後的分裂型だと思います。

例えば以下のようなケースです。
①X理事会のA理事長が総会を招集して、Aとその仲間が多数を占める役員選任決議をし、新たにY理事会を構成した。
②A理事長と対立するX理事会のBら平理事グループが、①の手続的瑕疵を理由にその決議無効を主張しつつ(つまりY理事会は存在しないことを前提に)、X理事会において規約に則りA理事長を解任してBを理事長に選任した。
③B理事長が総会を招集し、Bとその仲間で多数を占める役員選任決議をし、新たにZ理事会を構成した。

以後Y理事会とZ理事会が、それぞれ自分たちが正当な理事会であると称して活動し、それぞれが勝手に招集した総会を「管理組合総会」などとして実績を残していけば、あたかも二つの管理組合が存在するかのような状態が出来上がります。
もちろん、これは「二つあるように見える」だけであって、結局は①の役員選任決議の有効性如何により、いずれが正当な理事会(その後の総会)であるかが決まるわけです。

ここで、このブログの読者の方は不思議に思うのではないでしょうか。
①の総会で賛成票を投じた区分所有者はA理事長とY理事会を支持しているのだから、③の総会は無視されて定足数や決議要件を充たさず、Z理事会は成立しないのではないか・・・と。
ところが、理事会・理事長名義で総会議案書が手元に届けば、特に吟味せず委任状や賛成の議決権行使書を返送してしまう管理に無関心な区分所有者も少なくありません。これによって①でも③でも形式的な決議要件を充たしてしまう、という事態が生じ得るのです。

また、両陣営がこうした要件をきっちり充たしていなくても(傍から見ればいずれが正当であるかが明確であっても)、法的手続による決着に至らない限り「事実上併存している」という状態はあり得ますし、実際はそのようなケースが多いでしょう。「管理組合の対立を法的手続で解決しよう。」という意識はまだまだ広まっていませんので。

以上からも分かるとおり、第二管理組合は、マンションが以下のような条件を充たすと誕生し易いといえます。
(1)特定の区分所有者間に激しい対立があり、双方に強力なリーダーがいる。
(2)対立当事者以外の区分所有者の多くはマンション管理に無関心である。
(3)元々の管理組合運営が杜撰である(自主管理、居住所有者が少数等々。)。
(上記ブログのようなリゾートマンションは、(2)(3)を充たし易く要注意です。)

このような仕組みやコツさえ分かれば(決して簡単ではないものの)「第三管理組合」を作ることもでき、実際、私は第三管理組合の立ち上げを手伝ったことがあります。

もちろん、このような分裂状態は極めて不健全であり、泥沼化して管理が滞りスラム化してしまっては元も子もありませんから、管理組合や現行理事会が自分の思うように動かないからといって安易に対立を煽るべきではありません。
私がお手伝いした第三管理組合も、その後何とか第二管理組合との和解を経て最終的にマンション統一を果たしたようですが、それまでの道のりは険しいですし、統一後も対立感情がなくなるわけではありません。

将来こうした事態に陥らぬようにするには、やはり日頃から区分所有者間・住民間において適度なコミュニケーションをとっておくことが肝要です。

momoo-law.hatenadiary.jp

それでもやむを得ない場合は・・・ご相談ください。

市場移転問題と管理組合

大変ご無沙汰しております。
前回記事から3か月も空いてしまいました。

この間も、ブログで書いてみようと思ったテーマをいくつか見つけていました。
先日閣議決定された民泊新法、第三者管理、標準管理規約のコミュニティ条項に関する梶浦弁護士の書籍、日弁連総会の委任状騒動と管理組合総会における委任状の扱い等々・・・
ただ、最近どうも気になる件があるので、今回はそちらを取り上げます。
先日百条委員会が開かれたばかりの築地市場移転問題です。

予めお断りしておきますが、私はこの件について各種報道やSNSで回ってくるコメントを読んで得た程度の知見しか持ち合わせていません。そのため、ここで「移転すべきorすべきでない」という私見を述べることはできません。

私が気にしているのは「議論の対象・性質が整理されているか」ということです。

私は、市場移転の問題はざっくり以下のように分けられると理解しています。
(1)豊洲は市場として安全か(豊洲自体の安全性、築地との比較・・・)
(2)豊洲移転の意思決定~実行プロセスの適法性・合理性(盛り土、土地取得契約、基準設定・・・)と、その責任の所在

まず(1)について
食品を扱う市場である以上、安全でなくてはなりません。
もちろん、一口に「安全」といってもその水準には高低の幅がありますから、どの程度の安全性を要求すべきであるかの判断において政治的・経済的事情を無視することはできません。

とはいえ、基本的には「土地建物を食品市場として使うことを前提に、土地からどのような量の、どのような成分が、どのように検出されると危険であり、どのような措置を講ずれば危険を除去できるのか(orできないのか)。そして、これらを豊洲と築地で比較すると、どちらが市場として安全であるのか。」という科学の問題であると思います(もし「食の安全が最優先」であり、立地の選択肢が「築地or豊洲の二択」であるならば、端的に両者の安全性を比較すれば決まるはずです。)。

次に(2)について
意思決定~実行プロセスの政治的・実務的過程にミスや怠慢や不正があったならば当然その検証をすべきであって、担当者も十分説明する義務がありますし、責任者にはきちんと責任を取ってもらう必要もあります。

しかし、そのことは上記(1)の判断に影響を与えないはずです。
石原元都知事を例に挙げて簡単に言えば、もし「石原氏に職務怠慢が認められた」としても「豊洲の土地汚染が市場に影響を与えず、かつ、築地よりも安全である」ならば移転すべきでしょうし、逆に「石原氏が完璧に職務を全うした」としても「豊洲市場の安全を保てない」ならば移転すべきではありません。

ところが、このあたりが必ずしも峻別されないままの議論が散見されるように感じます。
安全性は事後的にであろうと科学的調査を以て検証すべきことであり(上記(1))、その結果が判明したならば、移転するか否かは政治的責任追及(上記(2))とは切り離して(少なくとも並行して)判断すべきではないでしょうか。

さて、こういう議論の混乱は管理組合でも頻繁に起こります。例えば・・・
「長期間に亘って一部住民が共用部分に駐輪している。調べてみると、理事長が勝手に使用を許可していたようだ。駐輪場使用が長期間継続しているし、今のところ実害も見当たらない。管理組合(理事会)としては、物理的現状を維持しつつ規約・細則の変更や今後の使用料徴収といった方法で解決を図ろうとしている。」というケースがあるとします。

問題は以下のように分けられます。
(ア)駐輪場を維持するか否か、維持するとしてどのように運営するか。
(イ)勝手に使用を許可した理事長にどのような責任があり、その責任をどうとってもらうか(解任、謝罪、賠償・・・)

このような場面で「理事長が悪いのだから、その責任を明確にしない限り駐輪場使用を認めるな」という意見が出ることは少なくありませんが、あまり合理的とは思えません。
駐輪場を維持するか否かは適法性、安全性、利便性、公平性の観点から考えるべきことであって、理事長の責任云々とは無関係だからです。

こうした意見に対しどのように対応すべきか、理解を得るのが難しい場合にどうすべきか・・・の手法や心構えがあるのですが、それはまた別の機会に。

最近の話題と管理組合とを何とか結びつけたところで、今回はこの辺で。

キャッスル大阪 ザ・タワー -真田丸と管理組合-

終わっちゃいましたね・・・・真田丸

www.nhk.or.jp


NHKさん。もちろん総集編も見ますが、キャスト総出演で「絶対に笑ってはいけない大阪城」をやってくれませんか。

さて、相変わらず人気ドラマに便乗するわけですが・・・
このブログと真田丸をご覧の皆様であれば、もうお気づきですよね。
・・・終盤の大阪城は、管理組合そのものだということに。

大阪城  徳川勢との対立という難題に直面
管理組合 管理費滞納・大規模修繕・民泊・・・という難題に直面

大阪城  秀頼や大野治長木村重成ら重臣だけでは解決が難しい
管理組合 理事長や理事会だけでは解決が難しい

大阪城  外部から戦の専門家を招き入れる
管理組合 外部からマンション管理の専門家を招き入れる

大阪城  専門家同士(信繁vs又兵衛vs勝永・・・)が対立
管理組合 専門家同士(弁護士vsマンション管理士vs管理会社・・・)が対立

大阪城  専門家を信頼しようとする秀頼と、専門家を疑う重臣
管理組合 専門家を信頼しようとする理事長と、専門家を疑う理事

大阪城  茶々や大蔵卿局が秀頼に「もう戦には関わらないで」と哀願
管理組合 ご家族が理事長に「もうマンション管理には関わらないで」と哀願

大阪城  専門家が徳川勢を撃破しそうになったところで秀頼出馬せず
管理組合 専門家が問題を解決しそうになったところで理事長物件売却

しかし、決して誰も悪くないのです(大蔵卿局は除く)。
大阪城でも管理組合でも、皆が自分なりに必死に考えて、豊臣家や管理組合や家族を守ろうとしています(大蔵卿局を含む)。そして、それぞれに重要な事情があるのです。
立場も知識も経験もまるで異なるのですから、意見がピッタリと合わなくて当然です。

大切なのは、こうした対立を受け止めて、相手を尊重し、時には自身の信念を少し曲げながらでも、あきらめずに進んでいくということです。
そう、望みを捨てぬ者だけに道は開けるのです(これを書きたかった。)。

大阪城も、信繁達を起用しなければあれほどまでに戦えなかったことでしょう。
管理組合の皆様にも、「管理に行き詰った」と思ったならば、まずはお気軽に外部の専門家にご相談することをお勧めします。マンション内に居座ったり秘密を間者に漏らしたりはしませんのでご安心を。

それではおのおの、ぬかりなく(これも書きたかった。)。

規約作りは恥じゃないし役に立つけど万能じゃない

www.tbs.co.jp

すみません。見ていないせいもあって雑なタイトルとなってしまいました。
いや、ガッキーはもちろんカワイイですよ。ただ、私は常々「リーガルハイの続編を作るなら多部未華子でお願いしたい」と思っているもので・・・。

さて、こんな記事を目にしました。

www.sankei.com

色々な点から解説しておく必要がありそう(つまり、性懲りもなく連載になりそう)ですが、一言でいうと「管理組合がある行為を排除するにあたり、規約や細則は根拠として不可欠ではあるが、万能ではない」となります。

より具体的には「事実関係の立証」と「運用」のいずれかを失敗すると規約は役に立たないということ、そして(これらと関連しますが)裁判所は「実際どの程度の影響が生じているか」を重視し、規約に形式的に違反しているからといって、それのみを以て直ちに管理組合の請求を認めてくれるわけではないということです。
これらは、私が各種セミナーや勉強会で頻繁に指摘していることであり、実際に取り扱った案件において重要な意味を持ったことでもあります。

まず「事実関係の立証」について述べようと思います。

その準備として、上記記事に現れる様々な事実関係を「争いのない事実」「管理組合の主張」「婚活業者の主張」「裁判所の判断」に分類してみます(なお、まだ実際の判決文を入手できておりませんので、差し当たり上記記事だけを頼りにこのブログを書いていることにご留意ください。)。

1.争いのない事実
(1)管理規約は、専有部分について「住宅または住宅兼事務所(いわゆるホームオフィス)として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定している。
(2)細則で「店舗使用の禁止」を明確化し、事務所として使う場合であっても、不特定多数の出入りがあったり、繰り返し特定の人(会員など)が訪れたりするようなケースはNGとしていた。
(3)婚活業者は平成25年2月に簡易裁判所に調停を申し立て、同11月に管理組合との間で調停条項がまとまった。

2.管理組合(原告)の主張
(ア)当初、婚活業者の事務所には約1週間で少なくとも69人の来訪者があった。
(イ)組合側はすぐに規約や細則を遵守するよう警告した。
(ウ)婚活業者への来客が多い月で50~70人超にのぼる。
(エ)窓口業務を行っている可能性が高そうな法律事務所などには個別の連絡を行い、改善対応の要請にあたっていた。
(オ)窓口業務停止の猶予期間を過ぎても来客が減っておらず、調停で合意した内容が履行されていない。
(カ) 婚活業者が新聞広告やHPにオフィスとしてこのマンションの所在地を記載し、HPには「婚活相談は当相談所へご連絡ください」とも記されている。

3.婚活業者(被告)の主張
(a)別のエリアに営業拠点を設けるべく準備していた。
(b)「士業など他の事務所がどの程度対策を講じているのか教えてほしい」と管理組合側に書面で申し入れたが、具体的な回答を得られなかった。
(c)マンションの秩序は利用者間に公平かつ平等な方法にて確保されるべきであり、管理組合が当社へ殊更に厳しい態度をとる理由が不明である。
(d)HPなどに住所を記載しているのは「本店」位置を示すのが目的で、マンション内で結婚相談業務を営んでいるわけではない。
(e)管理組合が確認したという来客数の算定根拠が不明。
(f)同じマンションの法律事務所や税理士事務所が、それぞれのHP上で「関西にお住まいの多くのお客さまからお越しいただいています」と表示している。
(g)婚活業者のみを問題視する本件訴訟提起は信義則に反し明らかな権利濫用である。

4.裁判所の判断
(A)(婚活業者のHPの記載から)平成27年1月以降もマンションを結婚相談業務に係る店舗として使用し続けている。
(B)管理組合が、マンションに入居する弁護士や税理士の事務所に対して、細則を遵守させるべくどのような措置を講じたのか明らかでない。
(C)婚活業者だけを相手取って訴訟を起こしたことは権利濫用にあたる。
(D)調停条項はマンション居住者に公平に適用されることが要点になっているにもかかわらず、本件訴訟はそのことに目をつむり婚活業者を狙い撃ちして行われた。

大体こんなところでしょうか。
さて、どうしてわざわざこんな整理をしたのかは、民事訴訟において判決が導き出されるまでの過程に関わります。

ざっくり言うと、本件のような争いにおいて裁判所は、【X】「まず双方当事者が繰り出す主張・証拠に基づき事実関係を認定し」【Y】「その認定した事実に基づき法的な判断をする」という手順をとるのです。
本件にあてはめると、【X】「このマンションや管理組合でどのようなことが起こっていたか」が(A)(B)であり、【Y】「その事実に基づき婚活業者の営業を止めさせるべきか」が(C)(D)です。
この【X】に向けてなされる管理組合側の活動が、冒頭述べた「規約適用の前提となる事実関係の立証」にあたるわけです(被告である婚活業者にとっても同様です。)。

具体的に述べると・・・、
本件における争点の一つである「来客数」につき、管理組合は(ウ)(カ)のように主張したのに対し、婚活業者は(d)(e)のように反論しました。ところが、記事を見る限り裁判所の認定である(A)~(D)では来客数について触れられていません。
おそらく、実際の判決では何らかの認定がなされたのでしょうけれど、私は「管理組合が立証しきれなかった」、つまり裁判所が「月に50~70人の来客があった」とは認めなかった可能性がありそうだと思っています。

別の争点である「管理組合による法律事務所等への警告の有無」についてはより鮮明です。管理組合が(エ)のように主張したのに対し婚活業者が(b)(c)(f)のように反論したところ、裁判所は(B)のとおり「明らかでない」と認定したようです。

以上を踏まえると、裁判所は【X】「来客数がどの程度であったかも不明であるし、他の事務所への警告の実態も不明である」という前提で、【Y】「婚活業者事務所としての使用を止めさせるべきか否か」を判断することになります。

いかがでしょう。もちろん、これらの事情だけで結論が定まるわけではありませんが、こうしてみると本件において管理組合の請求が認められなかったことも納得し易いのではないでしょうか。

・・・このように、【X】「そもそもどのようなことが起こっているのか」という事実関係を訴訟においてきちんと立証できないと、その先の【Y】「だからどうしてほしい」にまで辿り着けないのです。
再度本件にあてはめると、来客数の記録(防犯カメラ、業務日誌等)や、他の事務所への警告の形跡(内容証明、議事録等)といった証拠がきちんと揃っていたかが気になるところです。

同じような問題を抱えている皆さんの管理組合において、こうした証拠はきちんと集められているでしょうか。
相手も警戒しますから、トラブル・対立が表面化してからでは間に合いません。常日頃から最悪の事態をも想定して管理に取り組んでおくという意識の有無が、訴訟という局面で勝負を分けることになります。是非、記録化・証拠化への意識を高めていただきたいと思います。

長くなってしまいましたので、今回はこの辺で。