世田谷区マンション交流会のレジュメ -事件は10年後に起こるんじゃない、今(以下略-

9月10日に世田谷区マンション交流会(世田谷区都市整備政策部住宅課共催)によるパネルディスカッションが開催され、NPO日本住宅管理組合協議会の川上湛永氏と著名なマンション管理士である丸山肇氏、そして僭越ながら私がパネリストを務め、それぞれ20分ずつの基調講演を行いました。

www.city.setagaya.lg.jp

こちらがイベントのご案内
http://setagayaku-mansion.jp/wp-content/uploads/2017/08/seminar_170802.pdf

・・・やっちまいました。お二人は講演に際して素晴らしいレジュメを用意されていたのに、私は手控えだけ。そして会場の皆様に「近日中にレジュメの代わりとしてブログをアップします。」とお約束したのに、1週間以上が経過してしまいました、スミマセン。

共通テーマは「10年後のマンション管理はどうなっている?」というものでしたので、私は以下のとおり「法制度の10年後」「マンションを取り巻く社会の10年後」「10年後に備えて『今』行うべきこと」の3点をほんの少しずつお話ししました。

1.法制度の10年後
(1) といっても、区分所有法をベースとする法体系に大きな変化はないはずです。その間に生じる実務的な問題については、標準管理規約や周辺法令の改正によってカバーされることになります。民泊新法が良い例ですね(決して「2016年の改正標準管理規約におけるコミュニティ条項削除は悪い例だ」という意味ではありません。)。
(2) 法制度の改正が社会的な動きに先行することはありません。そして、この「動き」の殆どはビジネスによるものであり、それに追随する形で法整備がなされます(こちらも、民泊新法が良い例です。)。
(3) つまり、国交省ではなく管理組合の皆様こそが「マンション管理の最前線(カッコイイw)」にいるつもりで日頃からアンテナを張り、「この問題は管理組合でも起こるのでは」と察知することが何よりも紛争予防になるのです。
もちろん、その都度大袈裟に総会や理事会の決議をとる必要まではありません。これらの会議やエントランスでの雑談・情報交換が、後々大いに役立つはずです。

2.マンションを取り巻く社会の10年後
(1) 既に始まっていますが、今後10年で更に社会は縮小傾向が進むと予想され、管理組合が受ける影響も小さくありません(上記パネリストのお二人も、この点を強調されていました。)。
具体的には、高齢化による経済力低下に伴う管理費等の滞納や修繕積立金不足、人口減・賃貸化による役員のなり手不足・管理組合の空洞化、更にこれらが進行すれば孤独死や空き家問題も起こります。
(2) 他方、こうした困難に立ち向かうという機運が、管理組合の活動を活発化させるきっかけにもなっています。マンションという大きなハコを、少ない(少なくなる)人間で知恵を持ち寄って何とか使っていかなければなりませんから。
分かり易いところでは、シェアカー・シェアサイクル、駐車場運営の合理化、コミュニティ活動、第三者管理等専門家の起用が具体例として挙げられ、また民泊やシェアハウスも管理組合の意思決定次第で有効な資産運用方法となり得ます。

(3) ただ、こうした取組みにはいずれも「他者との関わり」が不可欠であるところ、残念なことながら、その「関わり」こそがトラブルの種でもあるのです。

3.10年後に備えて「今」行うべきこと
(1) では、10年後に生じるトラブルに対し、どのように対処すればよいのでしょうか。
「10年後に10年後のトラブルが起こるのではありません。
『今』撒かれた種が10年後にトラブルを起こすのです!」(ここで私はこの日一番の大声&ドヤ顔を繰り出しました。)。
(2) マンション管理においては
長期修繕計画や修繕積立金がその典型例ですが、その他の様々な法的トラブルも同様です。現在進行中の紛争において10年前の文書が証拠になることは全く珍しくありません。
(3) 日常の管理において「トラブルは必ず起こる」と心掛けながら、規約・細則等ルールの実践(警告、催促)や詳細な記録化(議事録・請求書・警告書・メール・FAX・業務日誌)を徹底することが10年後の管理組合を助けることになります。
(再び大声&ドヤ顔で)「10年後の裁判官に見てもらうつもりで記録を作るのです!」
(4) そして、こうした取組みを管理組合だけで実行することは困難ですから、管理会社や外部の専門家との協働体制を作りましょう。たまに誤解される方がいますが、管理会社は決して敵ではありません。管理組合にとって非常に有用なパートナーです。安易なリプレースは却って管理を後退させます。
(5) また、上記「1」でも述べたとおり良質な情報の収集も重要です。もちろんブログ、セミナー、専門誌といった情報源は大いに活用すべきですが、他の管理組合の「生の」経験談は成功例・失敗例問わずとても参考になりますから、各種勉強会や(このセミナーを主催した世田谷区マンション交流会のような)交流会に出席したり、ご近所の(できれば同規模の)管理組合と情報を交換したりしてみてはいかがでしょうか。

民泊新法と管理組合 -標準管理規約改正版のつまみ食い-

武井咲が結婚しようともマンションで暮らしていかなければなりませんので、民泊新法の検討を続けますよ・・・。
民泊新法と管理組合に関する前回記事でも触れたように、

momoo-law.hatenadiary.jp

8月29日に国交省が民泊新法対応の標準管理規約改正版を発表しました。
まずこちらのサイトを開いてみてください。

www.mlit.go.jp下の方に掲載されている「添付資料」
【資料1】改正の概要
【資料2】マンション標準管理規約(単棟型)及びコメント(民泊関係改正)
【資料3】パブリックコメントにおける主な意見の概要とこれらに対する国土交通省の考え方
が今般発表されたものです。
そこで、今回は速報としてこれらの内容(のほんの一部を選んで)ご紹介しつつ、僭越ながら私なりに考えを述べてみたいと思います。 

1.【資料1】改正の概要
本当に概要です。

2.【資料2】マンション標準管理規約(単棟型)及びコメント(民泊関係改正)
こちらがメインですね。
今回の改正は民泊新法に関連する部分に限られていますので順に見ていくつもりだったのですが、前回記事でも述べた(言い訳した)ように、あくまで「民泊を禁じたい管理組合」の視点に立って(つまり民泊を認めることに関する事項はスルーして)ご紹介・・・ということにしたら対象は第12条のみとなりました*1
なお、ご存知の方も多いと思いますが、標準管理規約には本文(条文)と、各条文に関する「コメント」という国交省による解説部分があります。以下「コメント」はこれを意味します。

(1) 第12条
民泊を可能とする場合の例(ア)と禁ずる場合の例(イ)が挙げられていますので、(イ)の方を参照します。

(イ)住宅宿泊事業を禁止する場合
(専有部分の用途)
1 区分所有者はその専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

第1項は改正前と同じです。これを以て民泊が禁じられているかどうかは議論があるところですが、前回記事で述べたとおり規約上明確にしてしまえば解決する問題です(コメントにも同趣旨の記載があります。)。
第2項が今回の改正の「目玉」です。
とはいえその内容は、民泊新法の該当条文を指摘して「住宅宿泊事業に使用してはならない」とするシンプルなものです。
前回記事で述べたとおり(さっきからこればっかりw)、とりあえずこの文言は皆様の規約に(既に規約等で民泊を禁じている場合は、それらに加筆する形で)盛り込んでおくと良いと思います。旅館業法上の許可を得た場合や特区民泊といった例外的場合を除き、現行法上民泊は民泊新法でのみ許容されていますから、同法を根拠とするものを封じておけば一先ずルール上はカバーされるからです

(2) 第12条関係コメント

④ 新規分譲時の原始規約等において、住宅宿泊事業の可否を使用細則に委任しておくこともあり得る。
(条項例)

1 区分所有者はその専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

この④は、民泊を許容するか否かを「使用細則で定める」こともできるとし、条項例を挙げています。
その手法自体に問題があるわけではありませんが、私は「特段の障害がないのであれば規約で明記」とお勧めしています。長くなるのでその理由は次回以降で。

⑤ (イ)の場合において、住宅宿泊事業の実施そのものだけでなく、さらに、その前段階の広告掲載等をも禁止する旨を明確に規定するため、「区分所有者は、前2項に違反する用途で使用することを内容とする広告の掲載その他の募集又は勧誘を行ってはならない」のような規定を置くこともあり得る。

⑤は、(規約・使用細則のいずれを活用するかを問わず)民泊自体の禁止のほか、その主な営業手段である広告掲載等の行為をも禁ずる旨を提案しています。
実務的には、民泊自体の禁止条項と同程度に重要な事項である(にも関わらず、必ずしもそのことが世間的に共通認識となっていない)ため、標準管理規約ではこういった条項案こそもっと多様に提案するべきだと思っています。具体的にどのような条項を設けるべきかについては、次回以降にまわします。

3.【資料3】パブリックコメントにおける主な意見の概要とこれらに対する国土交通省の考え方
こちらは、標準管理規約改正版の策定にあたり国交省の募集に応じて寄せられた「意見」と、それらに関する国交省の「考え方」です。昨年の標準管理規約改正の際にも同じように公開されました。
官民双方の「現場」がどのように考えているかの参考になりますので、こちらも気になった2点をご紹介します。
(1) まず、「意見」全体を見回してみると「民泊を認めるべきではない(認めるべきだ)」とか「こういう規約を盛り込んでほしい」といった趣旨の意見が散見されました。
もちろん何らかの意図があってのことでしょうし、個々の規約とは別次元の問題として標準管理規約のあり方を論ずる意味は大いにあるでしょう。
しかし、繰り返し述べるとおり標準管理規約は「モデル」に過ぎませんから、特に民泊を許容するか否かという重大な問題は、是非「自分たちのマンションの意思決定の問題」であると捉えて(冷たい言い方かも知れませんが「標準管理規約に頼らずに」)、必要に応じて外部専門家を含め様々な意見を集めながら良く考えて決定していただきたいと思います。
この点は「考え方」でも次のように述べられています。

・・・民泊を許容するかどうかについて、あらかじめ区分所有者間でよく御議論いただき、その結果を踏まえて、民泊を許容する、あるいは許容しない、どちらかの旨をマンション管理規約上に明確化しておいていただくことが望ましいと考えております。

このように、国・行政は基本的に「管理組合(規約)まかせ」です*2

(2) 規約改正が間に合わない場合
このような意見が寄せられたようです。

管理組合によっては、住宅宿泊事業法の施行に管理規約の改正が間に合わないケースが発生することが想定される。その場合に、法令施行後すぐに住宅宿泊事業の届出がなされてしまうと、当該マンションでは、住宅宿泊事業が行えることが既成事実となってしまう可能性がある。そのため、法令施行に管理規約の改正が間に合わない場合の対応や考え方について明らかにしてほしい。 

これに対し「考え方」はこのように答えています。

・・・管理規約の改正までには、一定の期間を要することから、管理規約上に民泊を禁止するか否かが明確に規定されていなくても、管理組合の総会・理事会決議を含め、管理組合として民泊を禁止する方針が決定されていないことについて届出の際、確認する予定としております。

ホントかなぁ・・・というのが率直な感想です。
もちろん、行政がそこまで踏み込んで実質的に判断をしてくれるのであればそれに越したことはありませんが、適法な届出がなされた場合に「いや、この管理組合は理事会で禁止方針を決議しているから」という理由で民泊を認めない、なんて判断ができるのでしょうか(少なくとも、届出をする方からすればちょっと容認し難い運用ではないかと思います。規約上「理事会が判断する」という仕組みがとられているのならばともかく)。
とはいえ国交省がこのように言ってくれているのですから、民泊を禁じたいけれど規約*3改正が間に合わない管理組合は、とりあえず理事会決議をし、議事録に正確・丁寧に反映させておくべきです。

なお、前述した標準管理規約第12条関係コメント④でも触れられているように、特別決議を要する規約改正に比してハードルが低い(通常普通決議で足りる)細則改正による民泊禁止も理屈上可能です。
この点、上記のとおり(そして次回以降説明を予定している理由により)私は「できれば規約で」というスタンスですが、「規約化しておきたいものの特別決議は難しい。でも普通決議なら何とかなりそう。」という場面もあり得ます。

そういった場合には・・・、あ~そろそろ出かけなければならないので今回はこの辺で。
次回以降で、民泊を禁じたい管理組合がなすべき対策をより具体的に検討していきたいと思います。

*1:民泊を認める場合の手当てについては、今後・・・書くかどうか考えます。これを認めるか否かは管理組合の意思決定の問題であり、良し悪しの問題ではありません。実際、「民泊を認めた方が資産価値の向上を期待できる物件」は少なからず存在すると思います。

*2:それには法律上の理由がありますので、この「区分所有法と規約」というテーマについてはいずれ詳しく述べたいと思います。上記「民泊禁止は規約で定めるべきか細則で足りるか」とも関連します。

*3:ここでは文脈上使用細則を含むと考えて良いでしょう。

牛乳石鹸で洗い流せるもの

話題性の高さから多数のアクセスを期待しつつ頑張って書いたこの記事

momoo-law.hatenadiary.jp

が、思いのほかアクセスを集めず凹んでいます。原因を分析したところ「時機を逸した」という結論に至りましたので、どうせならもっと最近の話題に便乗するべく、こちらをテーマに考えてみます。

www.youtube.com・・・これも乗り遅れてしまったような気もしますが。

ご覧にならないと訳が分からないでしょうからともかくご覧いただくことにして、ここではCMの説明は省きます。
このCMを見た私の率直な感想は、こういうものでした。


ところが、私のtwitterのTLを観測した限りではありますが、これとは異なる解釈をされている方(その上でこのCMを強く批判されている方)がとても多く少々驚きました。

それらのご意見に目を通していくと、その解釈やCMへの評価を分ける大きなポイントは、この夫(一般的な意味での「夫」と区別するために、ここでは新井浩文さんの演技力に敬意を表し「新井夫」といいます。)が「普段から憮然としてゴミ捨てをしたり子供への愛情を示さなかったり仕事にかまけて家庭を後回しにしたりする夫」であると捉えるのか、「普段は優しく家庭を大切にしている(少なくとも努力して表面上はそのように振る舞っている)が、このCMが描いた日だけ違う態度をとった夫」であると捉えるのか、であると思いました。

概ね以下の理由から、私は後者のように解釈しました。
(1)妻が新井夫にケーキやプレゼントの購入を頼む様子が、ごく自然であること(日常的にそのような依頼をし、それを新井夫が快く受け入れていたと想像できること)
(2)新井夫のスマホ待受け画面が家族写真であり、新井夫も笑顔であること
(3)飲みに行ったきっかけは、上司から説教を受け落ち込んでいる後輩を歩道橋の上から見かけたという偶然の出来事であったこと(突発的・衝動的に思いついた行動であったこと)
(4)子の誕生日夜に飲んで帰宅した新井夫を責める妻の台詞に「『また』大事な日に飲んできたな」というニュアンスがなかったこと(新井夫がこのような行動をとったことは初めて、又は多くないと思われること)

とすれば、このCMの当日は、新井夫が「家族に対しこれまでとは違う様子を示した日」であることになります。
そして、こうした態度の変化やその(無)表情から、かなり「心が疲れている」ことがうかがえます*1
また、CMの描写からは、その理由は、新井夫が、父の振る舞いや教育方針をベースとする自身の「父親像」と現在の「家族に優しい」自分とのギャップに悩んだからであると想像できます*2

もちろん、これらは私の勝手な解釈であって、まるっきり読み違えているかも知れません。通常より長いとはいえCMという超短編であり情報量はかなり少ないですから、様々な解釈が産まれるのは当然のことです。そのため、CMという方法でこうしたメッセージを発するべきであったかなど、「炎上」した理由は色々と考えられるところです。

さて、ここまで長々「分析」してみましたが、私はこのCMを見て、「CMとしての是非」よりも、この新井夫のように「いつもと違う様子」を示す人物に対し、周囲の人間(妻や同僚や上司、そして相談を受けた弁護士)はどのように接すれば良いか、が気になりました。
そこで、CMとしての評価は置いておき、上記私の「解釈」のような事態が身近で現実に起こったと仮定して、とるべき対応について考えてみます。

この新井夫に対し、多くの方が(おそらくその多くは妻のお立場から)、「甘えに過ぎない」「結婚する資格がない」「妻は悩んでいても逃げるという選択肢がない(妻が同じように振る舞えば子が死んでしまうこともあり得る)のだから不公平だ」といった趣旨の批判をなされていました。・・・いずれもそのとおりです。妻として、新井夫の態度や行動を許せないのは当然のことです。ですから、夫(や妻)が新井夫のような行動をとった場合、多くの場合(程度はともかく)非難が妥当するでしょう。

ただ、私はこのCMを見て、人気ツイッタラーであり今や人気ブロガーでもあるローカス先生のこのツイートを思い出しました。事情が完全に一致するわけではありませんが、「いつもと(マイナス方向に)行動・態度が違う」という点は新井夫にも当てはまりそうです。

togetter.com

身体的な体力はもちろん、「心の体力」も人それぞれです。
同じ負荷であっても、余裕で対処できる人もいれば、そうでない人もいます。弱点となる負荷も人それぞれです。受験は難なくこなしたけれど、仕事のストレスに敏感な人(やその逆)もいます。仕事や勉強の経験(の質や量)、人間・家族関係(新井夫の場合は父親像)、身体的事情など、個々の「心の体力」の強弱の理由も様々です。
そして、「心が疲れてしまった」理由の合理性の有無や、それに起因する当人の行為が正当化できるか否かと、「とにもかくにも疲れてしまった心をどうケアするべきか」と
は別問題です。

新井夫の悩みは前時代的なものであったといえますし、彼の行動は確かに非難に値するものでした。
しかし、彼の「心が疲れてしまっていた」のであれば、その心にはケアが必要です。
その取り得るケアの一つとして「とりあえずゆっくり風呂にでも入ってこい」が効く場面もあり得ると思うのです。

弁護士という仕事をしていると、依頼者であれ相手方であれ「心が疲れてしまった」と思われる人の話を聞く機会は少なくありません。このCMは、そんな方に如何に接するべきなのかを考える機会となりました。

・・・というブログを書きながら、別の画面で「滞納管理費等を直ちに支払え」という内容証明を作成しています。優しく接すべき場面とそうでない場面があるという単純な話かも知れませんね。民泊新法のブログの続きも早く書かなければ・・・。

*1:鬱も含む趣旨ですが、私は正確な知識を持ち合わせておりませんし、鬱に至らない場合も含めて考えたいため、このように表現します。

*2:なお、「『憮然としてゴミ捨てをしたり子供への愛情を示さなかったり仕事にかまけて家庭を後回しにしたりする』くせに『家族に優しい』と自称するなんてとんでもないヤツだ」という批判も多く見受けられました。しかし、やはり私は上記のとおり、「実際に普段は優しい」からこそ新井夫は「家族に優しい自分」と自己評価し、その自己評価と「家族に優しくなかった自身の父による父親像」とのギャップに悩んでいたのだと考えています。

民泊新法と管理組合 -規約変更の要否-

今更ながら、今年6月に住宅宿泊事業法(といちいち書くのは面倒なので「民泊新法」といいます。)が成立しました。施行は(早ければ)平成30年1月と予定されています。
立場上何かブログに書かなきゃなぁ・・・と思いながら何か月も経ってしまい、その間に多くの専門家が同法の内容を解説しているようなので、私はもういいか、と心が折れそうになった日もありました。

が、管理組合の方々からこんな声が聞こえてきました。
「民泊新法について勉強しようにも、複雑で難しい。」
なるほど、確かに日頃法律に触れる機会のない方が「届出」「住宅とは」「人を宿泊させる事業とは」「住宅宿泊事業」「管理業者」「委託義務」「仲介業務」「標識」「旅館業法」「建築基準法」・・・という用語や法律や考え方をきちんと理解するのは容易ではありません。

しかし、管理組合の方が民泊新法を学ぶ動機の殆どは「民泊を阻止したいから」でしょう。
そうであれば、複雑な解説は不要です。
管理組合がやるべきこと(やれること)は限られていますし、シンプルです。
「複雑で難しい」とお困りの皆様の誤解を解かなければ。
・・・なんということでしょう。昨年既に殆どのことをこのブログで書いているではありませんか。

momoo-law.hatenadiary.jp

とはいえ、「こちらを読んでください。終わり。」ではせっかくこのブログにアクセスしてくれた方から打診棒で叩かれかねません。
そこで、この昨年の記事(旧記事)と重複することもありますが、改めて「管理組合が民泊を阻止する」にあたって何をすべきなのかを、できるだけ分かり易くするために(そして私の手間を省くためにも)対象を絞って整理してみようと思います。

1.民泊新法の内容
同法は「民泊をするにはどうしなければならないか」を定めた法律ですから、極論すれば「民泊をさせたくない管理組合」の皆様が苦労して詳しく勉強する必要はありません。
もちろん、民泊事業者に対して「民泊新法に違反しているではないか」と指摘する場面においては有用な知識となりますが、そのような対処時には専門家に相談することもできますから、その勉強は本ブログでご提案する程度のことを済ませてからでも間に合います。

2.規約等による民泊の禁止
上記旧記事でも触れたとおり、この点を誤解されている方は少なくありません。
民泊新法によって「これまで旅館業法等に抵触していた(つまり違法であった)民泊が(一定の制約の下で)合法的にできるようになった」に過ぎないのであって、「管理組合が民泊を甘受しなければならない」わけではないのです。

例えば「ペットを飼うこと」「ベランダの柵に布団をかけて干すこと」は、いずれもそれ自体合法であり、戸建て住宅で行うには何の問題もない行為ですが、多くのマンションでは規約等(あえて「等」をつけています。理由は改めて。)によって禁じられています。
民泊新法によって、民泊がようやくペット飼育や布団干しと同じラインに立ったというだけなのです。

なお、先日こんなニュースがありました。
「民泊、マンション規約で禁止なら認めず 国交省

www.asahi.comこのニュースからも、上記のとおり「規約で民泊を禁じ得る」ことが分かります。
そして、ここでいう「仕組み」は、民泊新法や同法に基づく諸法令といった「民泊事業者と行政」との間に適用されるものを指すと思われます(例えば「民泊事業の届出時にそのマンションの規約を提出させ、禁止されていれば認めない。」といった仕組みが考えられます。)。
そのような「仕組み」が実効的に機能することが望まれますが、規約にはこれとは別次元の「管理組合内のルール」という本来的な役割がありますから、もし上記のような「仕組み」が作られなかったり実効性がなかったりした場合でも、この「ルール」を以て民泊を禁ずることができるのです。

3.規約等の変更
管理組合の規約等の状態によってパターン分けをします。
(1)規約等によって既に民泊禁止を定めている管理組合
そのような規約等を設定する際に十分検討を済ませたでしょうし、そこで禁じた民泊と民泊新法に基づく民泊に態様の大きな違いはないはずですから、基本的に慌てる必要はないと思います。
余裕があれば、次の定期総会などの機会を活用し、今後パブリックコメントを経て発表される予定の民泊新法対応標準管理規約改正案も参考に、更なる改良に取り組んでください(「住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない」という文言を加筆的に盛り込んでおくことをお勧めします。従前の文言と意義において重複するとは思いますが、政策的意味はあると考えます。)。
「新法民泊に伴うマンション標準管理規約の改正等について」国交省https://www.mlit.go.jp/common/001189187.pdf

(2)規約等に現行標準管理規約第12条と同趣旨の条項がある管理組合
(ここでは標準管理規約自体の説明は省きます。この記事が少し参考になると思います。)
標準管理規約に関する誤解と正解 - 弁護士・マンション管理士 桃尾俊明のブログ
このような管理組合が一番多いのではと予想します。
標準管理規約第12条の
「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」
という条項(や、多少文言が異なっていても同趣旨の条項)が規約等の中にあるかどうかをご確認ください。
こうした条項があり、かつ、それ以外に専有部分の用途を制限した条項がない場合がこのパターンに分類されます。

詳しくは上記旧記事をご参照いただくとして、結論を。
速やかに、上記(1)の標準管理規約改正案や他のマンションにおける事例を参考にして、また必要に応じて専門家にご相談の上、民泊を禁ずるルールを設定するようお勧めします。
「上記標準管理規約第12条の文言を以て民泊が明確に禁じられている」と法的に評価されるか否かが未だ不透明であるからです。
つまり、このまま放置しておくと、最悪の場合裁判においてその争点でも戦わなければならないということです。規約等の変更により重要な争点を一つ(管理組合に有利な方向で)潰せるのならば潰しておくべきです。

(3)規約等に標準管理規約第12条のような規定も、民泊を禁ずると解釈し得る他の規定もない管理組合
その管理組合では、(民泊新法に則った)民泊が許容されている状態にあると考えるべきですから、(上記(2)の管理組合よりも危機感をもって)規約等を整備してください。

長くなってしまいましたので、今回はここまで。
次回は、もう少し具体的に、どこに(規約なのか細則なのか集会(総会)決議なのか。本記事で「規約『等』」とした理由と併せて)、そしてどのようなルールを定めるべきなのかについて考えてみます。

第三者管理移行前に考えてほしい10のこと 特別編 -ガイドラインと弁護士の起用-

momoo-law.hatenadiary.jp

momoo-law.hatenadiary.jp

この2回に亘って「多くの管理組合においては、いわゆる第三者管理を採用するよりも、外部専門家を顧問等のアドバイザーとして起用し、委託先管理会社による業務の適正化を図った方が安全かつ合理的」ということを述べました。

1.外部専門家の活用ガイドライン
そんな中、先日、国交省が「外部専門家の活用ガイドライン」を公表しました。

www.mlit.go.jpこれによると、ガイドラインが主な対象として想定するのは「管理組合の担い手不足の課題に直面し、又は懸念している」「管理不全マンションになることも懸念される」「日常的に区分所有者や管理会社との連絡調整等の業務がある理事長の担い手確保に苦慮、修繕積立金の値上げ・滞納回収が必要といった課題を抱えるようなマンション」とのことです。
そしてガイドラインは、第三者管理(の一部のパターン)を実現するまでのプロセスや注意事項などを詳細に説明しており、資料としては確かに充実しています。
・・・ただ、これに目を通した方、「めんどくさそう」と思いませんでしたか?
ガイドラインで示されている注意事項に目を配りながらこのプロセスをこなしていける人物が管理組合にいるのなら、その方は全日本上位数%に間違いなくランクされる理事長能力を備えているはずですから、前2回で述べたとおり、その方が理事長を務め
必要に応じて外部専門家の助力を得つつ管理会社をコントロールしていくのが合理的で経済的であると、私は考えるわけです(逆にいえば、ガイドラインが想定する「担い手不足」のマンションに、こうしたプロセスをこなせる方がいるのかが心配です。)。
ガイドラインも、そのプロセスにおいて「顧問やアドバイザーとして外部専門家の支援を受けること」を提案しているのですが、よほど特別な事情がなければ、私は「その形」で良いと思っています。

2.弁護士と第三者管理
さて、後編の最後で予告した「弁護士が管理者を務めること」について考えてみます。私は消極的であり、その理由は既に前編・後編で述べたとおりですが、改めて。
(1)業務内容
弁護士は法律の専門家であるものの、建物の維持管理の専門家ではありません。もちろんマンションの事情にもよりますが、短期的(日常的)にも長期的にも要求されるのはむしろ後者の能力であって、これに比べると法律の専門知識を要する場面は一時的なものが多いと思われます。
なお、最近は(私を含め)マンション管理士資格を有する弁護士が増えてきました。ただ、同資格試験合格程度の知識のみを以て第三者管理における外部専門家として期待される水準の業務をこなせるかというと、私は安易に賛成できません。同試験で問われる知識は「専門家として管理組合・区分所有者に助言するのに最低限必要な知識」であるとはいえるものの、「第三者管理を担うのに十分な知識」には足りないと思いますし、何より同資格は「経験」を担保していないからです。
(2)継続性
弁護士の多くは個人事業者ですから、身体的(病気等)・経済的(経営不振)・法律的(懲戒等)な事情により業務を継続できなくなった場合には、それを他の者が引き継ぐ体制は通常整っておりません。他の弁護士が「一時的につなぐ」ことや後任を務めることは不可能ではありませんが、業務に個性が強く表れる弁護士の特質上円滑に引き継がれるとは限りませんし、管理組合との信頼関係も一から構築し直さなければなりません。
(3)事業規模
上記(2)継続性とも関連しますが、個人事業者である弁護士が管理業務上何らかの「事故」を起こした場合、その賠償原資が潤沢であるとは限りません(もちろん弁護士保険で賄える場合が多いとはいえます。)。
(4)コスト
ガイドラインも「外部専門家には、区分所有者である役員よりも高度な善管注意義務が課されると考えられる」と指摘しているように、当たり前のことながら弁護士は細心の注意を払って業務にあたり、また管理業務に必要な知識をアップデートしていかなければなりません。
また、上記(1)~(3)の要件を充たすために弁護士(やその組織)は相応の負担を強いられます。
当然、これらのコストは弁護士に第三者管理を任せる場合に支払う費用に反映されることになります。
(5)弁護士が行う他の業務との違い
私が最も強調したいのはこの点です。
確かに、多くの弁護士は後見人、相続財産管理、破産管財といった「財産管理業務」を日常的に取り扱っており、これを理由とした「弁護士には第三者管理の適性がある」という意見もあるようです。
しかし、これら「財産管理業務」とマンション管理には根本的な違いがあります。
財産管理業務は(会社更生等は別として)基本的に「現状維持」「管理資産・対象者は固定」「収束・清算」を目的とするのに対し、マンション管理は全く逆に「修理・改良」「管理対象建物の状況は日々変化・区分所有者は流動的」「数十年単位の継続・発展」を目的とするということです。
もちろん、一定の能力は両者に共通して必要とされますから、弁護士が財産管理業務を通じて培った能力がマンション管理において役立つ場面は少なくありません。
しかし「弁護士であれば財産管理業務に慣れているから、マンション管理も十分に扱える」ということは決してありません。マンション管理はそれほど単純なものではないのです。

同業の先生方から叱られてしまうかも知れませんが、以上が私の率直な考えです。
今回までの3回に亘る記事が、第三者管理採用をお考えの皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。

・・・次回辺りではそろそろ民泊新法について書かなければなりませんね。

拝啓、楽天代表取締役 三木谷浩史様 -楽天、民泊事業参入-

www3.nhk.or.jp

楽天が民泊事業へ参入するようなので、先日Airbnb代表取締役田邉様を想って書いた私の切なる願いを、そのまま三木谷様へもお伝えします。

momoo-law.hatenadiary.jp

第三者管理移行前に考えてほしい10のこと 後編

前回(AKBに学ぶマンション管理組合運営 -私のことは嫌いでも(以下略- - 弁護士・マンション管理士 桃尾俊明のブログ)の最後にお約束しましたので、硬派なブログに戻ります。第三者管理について考えた前編の続きです。

2.外部専門家(業者)側の事情
前編の「1.管理組合側の事情」の「(2)外部専門家の選定が大変」や「(3)第三者管理を担える外部専門家が少ない」と一部重複しますが改めて。

(1)広範な分野に対応できる外部専門家
マンションでは日々どのようなことが起こり、管理者(≒理事長&役員)はどのような場面で対応・判断を迫られるでしょうか。
日常的な管理・清掃、植栽、ゲストルーム等共用施設の管理、設備不良・故障、備品の購入、工事の発注、修繕・耐震・建替え計画の策定、管理人との遣り取り、管理費滞納等の問題のある区分所有者、住民間トラブル、会計・税務処理、専有部分内工事の申請・承認、専有部分売却時の仲介業者調査、対管理会社契約交渉、理事会・総会運営、隣地との境界確認、隣地住民とのトラブル、町内会等との関係構築、規約・細則変更、法人化とその登記・・・まだまだありますね。

これらに万遍なく「専門家レベルで」対応できる外部専門家を見つけるのは容易ではありません。

(2)継続性
マンション管理は数十年単位の仕事ですから、日々ノウハウや情報を蓄積していく必要があります。「外部専門家(管理会社も含みます)を雇う」とは、彼らが蓄積させてきたノウハウや情報を買うことでもあります。
ところが、あるマンション固有のノウハウや情報を外部専門家に集中させていた場合、その外部専門家が個人であったり小規模組織であったりすると、万一の場合にそれまでの積み重ねが失われてしまい易くなります。
また、外部専門家を替えた際に、こうした物件固有のノウハウや情報が(競合他社である)後任者にスムーズに引き継がれるとは限りません。

(3)コストと責任
こうした様々な問題への処理に要する日常的・突発的・継続的な作業は決して少なくありませんし、これらを第三者管理として引き受ける外部専門家も、高レベルな責任を負うことを前提に取り組まなければなりません。
そのため、(上記のように希少な)外部専門家にそれを委ねるとすれば、相応のコストを覚悟しなければなりません。

(4)財務的基盤
この「責任」とも関連しますが、外部専門家がミスや犯罪を犯した場合には最終的に金銭的賠償を求めることになります。
しかし、外部専門家が個人や小規模組織の場合、その賠償資金が乏しく被害回復を図れない虞があります(もちろん保険によりカバーがされる場合も多いでしょうけれど)。

(5)マンション管理会社
(コストについてはともかく)こうした条件をクリアし易い存在がマンション管理会社です。そのため「管理会社を外部専門家として起用するタイプの第三者管理」も考えられます。
ただ、それなら「役員は区分所有者が担い、管理の実質的大部分を管理会社に外注」という一般的なスタイルをとりつつ、管理会社の業務を監視監督すれば足りるのではないでしょうか(後述します。)。

3.管理意識
多くの方にとってマンションはとても大きな資産であり、大切な住まいであるはずです。
ところが、上記のような「役員は区分所有者が担い、管理の実質的大部分を管理会社に外注」という一般的スタイルをとっていても、「自分たちの資産を自分達で管理している」という意識はなかなか醸成されません。それなのに、この「役員は区分所有者」という要素まで欠けてしまったら管理意識はますます低下してしまい、第三者管理方式において不可欠である「外部専門家に対する監視・監督」も実効性を失うことになるでしょう。
輪番でも抽選でも長期政権であっても、とにかく「区分所有者が自ら管理を担っている」という意識の存在は、形には見えずとも少なからず管理状況に影響を及ぼしていると思います(もちろん、上記いずれの態様も過剰な場合は弊害もありますが。)。

4.私の考え
「第三者管理を採用しよう!」と考えている方へ。
2回に亘ってご紹介したように、それを実行すること、その後健全な管理を維持すること、その後方向転換することのいずれも、決して平坦な道ではありません。
もし、貴方が「それでもやる!」という決意をお持ちなのであれば、まずは貴方が理事長として、(上記のとおり外部専門家としての利点を広く備えているはずの)委託先管理会社と向き合い、その業務に問題があれば改善するよう求めるのが最も効率的で合理的だと思います。
その交渉に不安があり、また管理会社の業務の適否の判断がつかないのであれば(それが普通です。)、まずは外部専門家に「相談」し、一定期間管理を「手伝って」もらい、管理会社の業務の良し悪しを「見極め」てもらいましょう。
今は自主管理という方も同様です。こうした「相談」と「助力」を得ながら、管理会社を選択したり第三者管理採用の適否を見極めてもらったりするのです。
そのような関わり方であれば、外部専門家に支払うべき費用も(第三者管理の場合に比して)然程高額にはならないはずですし、その専門家との相性が悪くても、他に替わってもらえば良いだけです(「一旦始めた第三者管理を止める」よりもずっと簡単です。前編の「1(5)後戻りが困難」参照)。
しばらくそのように専門家の助力を得ながら管理会社を上手く使って管理に取り組み、その上で「やはり第三者管理が望ましい」という結論が変わらなければ、それから実行に移しても遅くはありません。
他の役員のなり手がいないのであれば、その定数を減らしてしまっても構いません(これも第三者管理採用よりずっと簡単にできることです。)。後で「役員に加わりたい」という仲間が現れた際に改めて増やせばよいのです。

「第三者管理を採用しよう!」と決断したということは、貴方はマンションの将来を真剣に考え、対策を模索し、第三者管理という方法に辿り着いた人であるということです。その上で「やれる」自信がある貴方であれば、きっと良い理事長になれると思います。

5.弁護士による第三者管理については番外編で
さて、弁護士の私が書いたこの記事をお読みになり「弁護士に管理者を任せてもダメなのか」という疑問を持つ方もおられるでしょう。
私は「お勧めしないし、当面私も引き受けない」とお答えします。
その理由は番外編として別の機会にご説明しようと思っています。