平成30年10月の皆様へ -本番数日前からの宅建士試験対策-

皆様、平成29年度宅建試験、大変お疲れ様でした。
実は私も参戦いたしまして、各予備校が発表した解答速報に基づき先ほど自己採点をしたところ、40点取れていたようで一安心しています。

合格発表はまだまだ先の11月29日ではありますが、それまで待っていては忘れてしまいそうですので、今のうちに私の受験対策をまとめておこうと思います(何かの間違いで不合格になっていたとしてもきっとお知らせしませんので、その気配を察した方はそのままお忘れください・・・)。
仕事柄、知識面においては大いに有利なスタートラインからの受験対策であるため(だったらもっと高得点を取れとの声が同業者から聞こえてきそうですが無視します。)、必ずしも皆様にそのままご活用いただけるものではありませんし、更に言えばあんまりマネしない方がいいような方法でもありますから、ほどほどに参考にしてください。

まず、私が勝手に師と仰いだ先生をご紹介します。
湾岸の妖精こと、のらえもん大先生です。
私が何とか40点を確保することができたのは、同先生のこのブログのマネをしたおかげであったといえます。

zakki.wangantower.com

ただ、こののらえもんさんの記事には弊害もありまして・・・「ギリギリでも何とかなる(からギリギリまで準備をしない)」という人間の弱さが思いっ切り顔を出してしまうということです。
私がこのブログを読んで感心したのはそれが書かれた昨年11月のことでしたから、その頃から地道に準備をしていればここ数日のような苦労をしなくて済んだのに、ギリギリ感まで律儀に再現してしまったわけです。

そんなわけで、私がこれからご紹介する方法は、あくまで「もう全然時間がないけれど、大人の事情でどうしても受からなければならない。受かりさえすれば、他に何もいらない。」という人のためのものであることを予めご承知おきください。

1.勉強する範囲の取捨選択
時間がない状況下での試験対策全般について言えることだと思いますが「どこまで多くの範囲を勉強できるか」よりも「どこまで勉強する範囲を絞れるか」の方が重要です。また、ご存知のとおり宅建の試験範囲は多岐に亘り、しかも各範囲の性質が結構違います。
そのため、①「やらなくても(大体)分かる」、②「やれば分かりそう」、③「やっても分からなそう」に分け、①と③に関しては「一切やらない」を徹底するのが得策だと思います。
宅建は大きく分けて、
(1)権利関係、(2)宅建業法、(3)法令上の制限・税・その他
に分けられますから、まず私は「(1)権利関係」を丸ごと勉強しないことにしました。これは仕事柄何とかなるだろうという見込み(期待)によるものです(多くの方はそうはいかないでしょうから、(1)を細分化して一部をカットするか、覚悟を決めて全て勉強するかという選択になるでしょう。)。
これに加えて、私は(3)のうち「税・価格」を全てカットし、更に(3)のうちの「土地区画整理法」「宅地造成等規制法」も勉強しないことにしました。これらを選んだ理由は色々ありますが、端的にいえば「過去問をざっと眺めたところ、③っぽかったから」からです(税務関係は「仕事の経験上何とかなるかも」という思惑もありましたが。)。

2.選んだテキスト
一部のらえもん先生のマネをしました。
いずれも2017年版の「出る順宅建士」シリーズ(LEC)です。
・合格テキスト ②宅建業法
・合格テキスト ③法令上の制限・税・その他
・ウォーク問過去問題集 ②宅建業法
・ウォーク問過去問題集 ③法令上の制限・税・その他

3.勉強の進め方
しつこいようですが時間がありません。
そこで、概ね4日間(2回の週末)を使って以下のとおりに勉強しました。時系列順です。
(1) 宅建業法
合格テキストを1章読む→その部分の過去問を解き解説を読む→次の章を読む(以下最後まで繰り返し)
(2) 法令上の制限・その他(「税・価格」と上記「土地区画整理法」「宅地造成等規制法」はすっ飛ばします)
ウォーク問過去問題集の「解説だけ」を1章読む→過去問をやり、また解説を読む→次の章の「解説だけ」を読む(以下最後まで繰り返し)
(3) 宅建業法の過去問を一気にやる(1問ずつ解説を確認しながら)
(4) 法令上の制限・その他の過去問のうち、後述するサービス問題部分のみをやる。

これだけです。その他のテキストも一切読みませんし、「本番と同じように2時間で50問」もやっていません。それらよりも上記のように過去問を徹底した方が知識が残ると考えたためです。

ご存知のとおり宅建は過去問の肢が繰り返し出されており、そのため受験生の多くも過去問を中心に勉強します。ということは「過去問に出ていない知識は他の受験生も知らない」ことが多いと言え、「それを知らないから落ちる」ということも起こりにくいはずです。

また、「勉強する範囲を絞る」は「使用するテキスト・問題集を絞る」という意味でもあります。理解・記憶の曖昧な知識が頭の片隅にふわふわしているよりも、少ない知識でも「あのテキストのあそこにあのように書いてあった」と確実にしておく方が「4択試験」には有効であるからです。曖昧な知識は一つも肢を切れませんが、確実な一つの知識は4択を3択や2択にしてくれます。そう、お気づきかと思いますが、せっかく買った「・合格テキスト ③法令上の制限・税・その他」が登場しません。「見たらパニクる」という恐怖心もあり、結局ほとんど使いませんでした。

4.勉強のコツ
(1) サービス問題
今年の第50問の正解は「1 木材の強度は、含水率が少ない状態の方が低くなる」でした。そしてこの肢は、上記ウォーク問掲載の「建物」(わずか7問)において2回も登場します。こんな知識は1,2度解説を読んでいれば覚えてしまうはずですから、そこに目を通していればサービス問題といえます。
こうした知識は、テキストや過去問集において「重要度低(Bやcランク)」とされていますが、「重要・難解な問題」と「単純な問題」は、いずれも同じ1点です。
これは、狭い出題範囲の中で繰り返し同じようなことが問われている「農地法」にも言えます。
このように(やると決めた範囲に関しては)「重要性」に惑わされず過去問をつぶしておくことが肝要だと思います。
(2) 条文
先ほど「使ったテキストはこれだけ」と書きましたが、一つ忘れていました。
宅建業法の条文」です。
宅建業法の問題は(他の法律もそうですが)、基本的に全て条文知識です。ということは、条文に答えが凝縮されているということです。
仕事柄条文を読むことに慣れているから採り得る方法なのかも知れませんが、私は宅建業法の部分だけをプリントし、テキストに出てきた条文に線を引きながら読むことにしました。これによって知識が定着するのと「ひっかけ問題にひっかかりにくくなる」という効果が期待できます。
今年の第28問の肢に「専任代理契約」という語が登場しました。私の過去問集に出てくるのは「専任媒介契約」ばかりでしたし、試験後の会場やツイッターでも「専任代理ってなんだよ…」といった声が聞こえました。多くの受験生が混乱したと推察されます(それを狙った出題でしょう。)。
しかし、頻出する「専任媒介契約」が定められた宅建業法第32条の2のおとなりである第34条の3には、はっきりと「媒介契約に関する規定は、代理契約に準用する」と定められています。
このように、せめて最も多く出題される宅建業法だけでも、「全ての問題の基礎」である条文に目を通すことで、無用な混乱を避けることをお勧めします(勉強する範囲を広げる時間があるなら、その時間をこうして知識を深める方向に使った方が得点に結びつき易いと考えます。)。
ただ、宅建業法は同法の条文のみならず規則等の下位法令の知識も問われますから、これらについては付箋をつけて補充するといった工夫も必要になります。

5.本番
最後に、本番で私が気を付けたことを簡単に並べてみます。
(1) 全く分からなそうor見慣れない用語がある問題であっても、一度はじっくり問題文を読む
(2) その上で、迷った問題はさっさと飛ばして進む
(3) 計算を要するなど、時間がかかる問題も後回し
(4) 「正しいものはどれか」なのか「誤っているものはどれか」を間違えないように、各肢を判断するたびに(単に丸印や×印をつけるのではなく)「正」とか「ウソ」などとメモしておく

いかがでしたでしょうか。
数日後に本番を控えて絶望している平成30年10月の皆様、是非諦めずにトライしてみてください。
このブログの方法そのままでなくても、何か少しでも参考にしていただければ幸いです。
そして、平成29年のうちにこのブログをご覧になった皆様、やっぱり今のうちからコツコツと勉強しておいた方がいいですよ・・・。

民泊新法と管理組合 -規約改正が間に合わない管理組合のリスク(民泊新法施行規則案)-

※10月1日(公開は9月30日):「2 2つのルート」以下の部分を修正しました。
※10月2日:マンションタイムズ(10月1日号№388)を参考に、文末に加筆しました。

民泊新法と管理組合について、これまで以下の2回

momoo-law.hatenadiary.jpmomoo-law.hatenadiary.jpにわたってご紹介したところ、記者の方に本ブログをご覧いただいたことがきっかけで、住宅新報さん(平成29年9月26日発売3534号)に、上記2本目の記事で言及した標準管理規約とその国交省コメントに関して、私の意見を掲載していただきました(※登録会員限定記事です。)。

www.jutaku-s.comその主なポイントは「民泊新法施行までに規約*1による民泊禁止が間に合わない場合に管理組合がとるべき対応如何」でした。

そんな中、9月21日付で国交省厚労省から「住宅宿泊事業法施行令(仮称)の案について(概要)」「住宅宿泊事業法施行規則(仮称)等の案について(概要) 」が公開され、これらに関する意見募集(パブリックコメント)が始まりました。
(1) 意見募集

http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000164095
(2)
「住宅宿泊事業法施行令(仮称)の案について(概要)」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000164096
(3)「住宅宿泊事業法施行規則(仮称)等の案について(概要) 」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000164097

今回は、このうち(3)の規則案と上記「民泊新法施行までに規約による民泊禁止が間に合わない場合に管理組合がとるべき対応如何」との関係について検討します。

1 規則案における民泊事業を行おうとする者の届出の方法
規則案は以下のように示しています(下線は私によるものです。)*2

(4)届出(法第3条第2項及び第3項関係)
① 届出書の様式等を定める。
② 届出書の記載事項は、
・届出住宅の規模等
・住宅宿泊管理業務を委託する場合には、住宅宿泊管理業者の商号、名称等
・住宅が賃借物件である場合の転貸の承諾の旨
住宅が区分所有建物である場合には規約で住宅宿泊事業が禁止されていない旨(規約に住宅宿泊事業に関して定めがない場合は管理組合に禁止する意思がない(※)旨)
等とする。
③ 届出書に添付する書類は、
・住宅の図面、登記事項証明書
・住宅が賃借物件である場合の転貸の承諾書
住宅が区分所有建物である場合には規約の写し(規約に住宅宿泊事業に関して定めがない場合は管理組合に禁止する意思がない(※)ことを確認したことを証する書類)
等とする。
※「管理組合に禁止する意思がない」ことは、管理組合の理事会や総会における住宅宿泊事業を禁止する方針の決議の有無により確認する予定。

2 2つのルート
上記下線部からは、分譲マンションで民泊事業を行おうとする事業者は、
ルートA 届出書に「この管理組合は民泊を禁止していない」と書き、資料として規約を提出する。
又は、
ルートB 届出書にAと同様に書きつつ、(規約に定めがないため代替的に)
総会・理事会決議(議事録)を提出する(※部分)。
のどちらかの届出ルートをとるように読み取れます。

(1) ルートA
この場合、役所は規約を確認し「民泊ダメ」と書かれていれば許可しませんし、「民泊可」と書かれていれば(そして他の要件を充たしていれば)許可します。
なお、上記規則案が述べる届出書記載事項は「規約で民泊が禁止されていない旨」とされていることから、ここだけを読むと「言及がない」場合も含まれそうですが、その場合は下記ルートBとなります(より明確に「民泊を許容している旨」とすれば良いのにと私は思いますが。)。

(2) ルートB
上記規則案の※部分によると「『管理組合に禁止する意思がない』ことは、管理組合の理事会や総会における住宅宿泊事業を禁止する方針の決議の有無により確認する予定」とのことです。
具体的にどうやって確認するのでしょうか。
ア 「届出時」に確認する
もし「『禁止する旨の決議』がなければ許可する」としてしまうと、全ての総会・理事会決議を確認しなければならなくなり、これは非現実的です。多大な手間がかかりますし、何より民泊を実行したい事業者が素直に「禁止されている」と申告し、その旨の議事録を提出するはずがなく実効性に欠けます。
そのため、規則案※部分が「届出時に確認する(→確認できなければ許可しない)」という意味であるならば「『禁止しない旨の決議』(≒「許容する旨の決議」)を事業者側が議事録等を提出して説明しなければならない」という手順になるはずです。
これを言い換えると「『禁止する意思がない』(≒許容する)ことを記した総会・理事会決議ない場合」は、事業者はルートBでも届出をすることができないことになります(ないものは提出できませんから。)。
つまり、「規約において特段禁じていないし、許容する旨の総会・理事会決議もない場合」は許可されない、という考え方です。
イ 確認は「届出時」に行うわけではない?
さて、本記事を一旦公開した直後、9月25日に開催されたマンション管理センターによる「住宅宿泊事業法(民泊新法)公布に伴う『マンション標準管理規約』改正についての解説セミナー」に出席された方から、当日の国交省担当者による説明について情報をいただきました。
それによると、届出時には届出書の形式審査を行うに止まり、万一届出書が事実と異なり「実際は禁止されていた」又は「『規約を改正し禁止する予定である』などの、禁止する意思を示す決議があった」場合には、管理組合が事後的にその旨を申し入れ、役所はそれを受けて許可を取り消す、という運用となる可能性が示唆されたとのことです。
制度としてはあり得るものですし、元々このような運用を予想していた方も多いのではないでしょうか(多くの専門家が早期の規約改正を勧めていたのもそのためでしょう。)。
ただ、もしこのような運用が予定されているのだとしたら、今回公開された規則案の(上記アのような「届出時確認」であると読み取り易い)書き方は、民泊を禁じたい管理組合を過剰に期待させるものであるように感じます。
この点はあくまで伝聞ですし、担当者の説明も口頭によるものであったそうですから、10月26日に開かれる同内容の追加セミナーに出席して確認してみようと思います。

http://www.mankan.or.jp/html/pdf/201710seminar.pdf

3 管理組合の対応
上記(2)アのとおりに運用されるのであれば、要するに「規約又は総会・理事会決議で『民泊可』とされてさえいなければ、明確に禁止と謳われていなくても、分譲マンションにおける民泊届出はできない」ことに
なります。私の個人的な感覚としては、このように事業者側にある種の証明責任を負わせ、それをクリアしない限り許可しない、という制度が望ましい形であると思います。
しかし、以下の問題がありますので、結論はやはり「さっさと規約改正すべき」です

(1) 曖昧な場合
上記規則案は「定めがある場合」と「定めがない場合」のことしか触れていません。
そして、そのいずれの場合であるかを一次的に判断するのは届出を受けた役所です。
例えば、規約に標準管理規約第12条の「専ら住宅として使用する」という規定しかないケース(実際、このような管理組合が最も多いかも知れません。この点についてはこちらの記事をご参照ください。)はルートAとルートBのどちらに振り分けられるのかが未だ明らかではありません。
このように曖昧な規約のままだと「民泊も住宅なのだからルートA」と判断・処理され、届出が通ってしまう可能性が残ります。
(2) 理事会の独断
ルートBを通るのは規約において定められていない(と判断された)場合です。
このような管理組合は、普通積極的に「民泊を認めよう」とは考えていないでしょう(そうであれば規約で明らかにしているはずです。)。そのため、そのような管理組合の理事会が独断で「民泊を認める」といった決議をする(それによってルートBを通過されてしまう)ことも通常想定されません。

しかし、例えば輪番制等により「民泊推進派」がたまたま理事会の多数を占める状況が生ずると、規約どころか総会決議までスルーして、「民泊可」という理事会決議を根拠にルートBを通じて届出が通ってしまう可能性があるわけです。もちろん、そのような理事会決議が管理組合の団体的意思決定として有効なのかという問題は残りますが、届出が通って実際に民泊が行われてしまうと、以後それを排除するのには手間がかかります。
(3)ルートBの運用が上記(2)イのとおりである場合
この場合「差し当たり届出はクリアされてしまう」ケースが多いと予想されます。
「事後的にでも対処できるのなら良いではないか」と思われるかも知れませんが「届出時点で排除される」のと「事後的に『管理組合が』不服申立てをし、かつ、『管理組合が』既に始まった民泊事業を排除しなければならない」のとでは、手間・コストの面で全く異なります。
(4) 結論
このように、対応を怠ったり規約を曖昧なままにしておいたりすると大きなリスクを残します。
そのため、今回公表されたのはあくまで規則「案」ですから今後の推移を見届ける必要がありますが、いずれにせよ(仮に事業者に一定の制約が課される規則が制定されたとしても)、
民泊を禁止したい管理組合は、速やかに規約・細則を以て明確に禁止すべきという結論に変わりはなさそうです。

【※以下、10月2日加筆】
4 マンションタイムズ(10月1日号。№388)掲載の国交省担当者コメント
同担当者は(上記ルートBに関し)
次のような趣旨の説明をしています。
(1) 規約改正への議論に時間がかかりそうであれば、まずは理事会で議論し、方針を示した上で以後規約を改正していくことを決議する。
(2) 民泊事業届出時には、添付資料の提出を求める。
(3) 規約で民泊を禁止する旨の記載がない場合、管理組合として民泊を禁止していないという方針を書類にして添付してもらう。
以上(特に(3))からすると、ルートBについて上記「(2)ア」の手順を想定しているように読み取れます。
ところが、同担当者は他方で「禁止したい場合は規定をそのままにするのではなく、必ず意思表示が必要だ」とも指摘しています。
「はっきりさせておけ」という考え方は分かるのですが、その「禁止する旨の理事会の意思表示」を、具体的な手順として、誰が、いつ、どのような時期に届出手続に乗せることを予定しているのかが今一つ判然としないように思います。

*1:ここでは使用細則も含めて良いと考えます。

*2:あくまで規則「案」ですから今後変更される可能性は残ります。ただ、パブリックコメントを経て案が実際に変更される可能性はあまり高くないと思われます。

世田谷区マンション交流会のレジュメ -事件は10年後に起こるんじゃない、今(以下略-

9月10日に世田谷区マンション交流会(世田谷区都市整備政策部住宅課共催)によるパネルディスカッションが開催され、NPO日本住宅管理組合協議会の川上湛永氏と著名なマンション管理士である丸山肇氏、そして僭越ながら私がパネリストを務め、それぞれ20分ずつの基調講演を行いました。

www.city.setagaya.lg.jp

こちらがイベントのご案内
http://setagayaku-mansion.jp/wp-content/uploads/2017/08/seminar_170802.pdf

・・・やっちまいました。お二人は講演に際して素晴らしいレジュメを用意されていたのに、私は手控えだけ。そして会場の皆様に「近日中にレジュメの代わりとしてブログをアップします。」とお約束したのに、1週間以上が経過してしまいました、スミマセン。

共通テーマは「10年後のマンション管理はどうなっている?」というものでしたので、私は以下のとおり「法制度の10年後」「マンションを取り巻く社会の10年後」「10年後に備えて『今』行うべきこと」の3点をほんの少しずつお話ししました。

1.法制度の10年後
(1) といっても、区分所有法をベースとする法体系に大きな変化はないはずです。その間に生じる実務的な問題については、標準管理規約や周辺法令の改正によってカバーされることになります。民泊新法が良い例ですね(決して「2016年の改正標準管理規約におけるコミュニティ条項削除は悪い例だ」という意味ではありません。)。
(2) 法制度の改正が社会的な動きに先行することはありません。そして、この「動き」の殆どはビジネスによるものであり、それに追随する形で法整備がなされます(こちらも、民泊新法が良い例です。)。
(3) つまり、国交省ではなく管理組合の皆様こそが「マンション管理の最前線(カッコイイw)」にいるつもりで日頃からアンテナを張り、「この問題は管理組合でも起こるのでは」と察知することが何よりも紛争予防になるのです。
もちろん、その都度大袈裟に総会や理事会の決議をとる必要まではありません。これらの会議やエントランスでの雑談・情報交換が、後々大いに役立つはずです。

2.マンションを取り巻く社会の10年後
(1) 既に始まっていますが、今後10年で更に社会は縮小傾向が進むと予想され、管理組合が受ける影響も小さくありません(上記パネリストのお二人も、この点を強調されていました。)。
具体的には、高齢化による経済力低下に伴う管理費等の滞納や修繕積立金不足、人口減・賃貸化による役員のなり手不足・管理組合の空洞化、更にこれらが進行すれば孤独死や空き家問題も起こります。
(2) 他方、こうした困難に立ち向かうという機運が、管理組合の活動を活発化させるきっかけにもなっています。マンションという大きなハコを、少ない(少なくなる)人間で知恵を持ち寄って何とか使っていかなければなりませんから。
分かり易いところでは、シェアカー・シェアサイクル、駐車場運営の合理化、コミュニティ活動、第三者管理等専門家の起用が具体例として挙げられ、また民泊やシェアハウスも管理組合の意思決定次第で有効な資産運用方法となり得ます。

(3) ただ、こうした取組みにはいずれも「他者との関わり」が不可欠であるところ、残念なことながら、その「関わり」こそがトラブルの種でもあるのです。

3.10年後に備えて「今」行うべきこと
(1) では、10年後に生じるトラブルに対し、どのように対処すればよいのでしょうか。
「10年後に10年後のトラブルが起こるのではありません。
『今』撒かれた種が10年後にトラブルを起こすのです!」(ここで私はこの日一番の大声&ドヤ顔を繰り出しました。)。
(2) マンション管理においては
長期修繕計画や修繕積立金がその典型例ですが、その他の様々な法的トラブルも同様です。現在進行中の紛争において10年前の文書が証拠になることは全く珍しくありません。
(3) 日常の管理において「トラブルは必ず起こる」と心掛けながら、規約・細則等ルールの実践(警告、催促)や詳細な記録化(議事録・請求書・警告書・メール・FAX・業務日誌)を徹底することが10年後の管理組合を助けることになります。
(再び大声&ドヤ顔で)「10年後の裁判官に見てもらうつもりで記録を作るのです!」
(4) そして、こうした取組みを管理組合だけで実行することは困難ですから、管理会社や外部の専門家との協働体制を作りましょう。たまに誤解される方がいますが、管理会社は決して敵ではありません。管理組合にとって非常に有用なパートナーです。安易なリプレースは却って管理を後退させます。
(5) また、上記「1」でも述べたとおり良質な情報の収集も重要です。もちろんブログ、セミナー、専門誌といった情報源は大いに活用すべきですが、他の管理組合の「生の」経験談は成功例・失敗例問わずとても参考になりますから、各種勉強会や(このセミナーを主催した世田谷区マンション交流会のような)交流会に出席したり、ご近所の(できれば同規模の)管理組合と情報を交換したりしてみてはいかがでしょうか。