ゴジラに学ぶ管理組合における戦い方

シン・ゴジラはいいぞ。

www.shin-godzilla.jp

石原さとみ(の英語)に関しては色々議論があるようですが、あれはあれで良かったのだと私は思っています。彼女のおかげで一呼吸入れられたといいますか。同じ人物設定でより上手に英語を話せる女優だと誰が適任でしょう?水原希子

ともかく、このブームに乗ってブログを一本書いてみます。

ネタバレにならないよう気を付けなければなりませんが・・・この作品は、突如東京湾に現れ上陸し大暴れするゴジラに日本人が如何に立ち向かうか、という物語です。それだけです。だからいいのです。
お察しのとおり東京はメチャクチャにされます。ゴジラの進路からすると私の顧問先マンションも1つ潰された模様です。

・・・実は、そんなゴジラからも、区分所有者の皆さんが学べることがあるのです。

私はしばしば、(理事ではない)区分所有者から「理事(会)の不正を暴きたい」とか「理事(長)を解任したい」というご相談を受けます。
ご相談を聞き続けていくと、その多くが「総会で糾弾したが誰にも聞いてもらえず、理事に立候補したが選任されなかったから何とかしたい。」という話につながります。

・・・こうなってしまうと、なかなか打つ手がありません。
その人物と理事(会)との対立関係が鮮明になりますから、理事交代総会決議の前提となる理事会決議を得ることはほぼ不可能でしょう。また、直接総会招集を図ろうにも賛同者を集めるのは容易ではありません(「揉め事に巻き込まれたくない」という感情により、理事会と対立する形で強く目立ってしまうと周囲から敬遠されてしまいがちです。)。何らかの法的手続をとろうにも、せめて理事の立場を確保していないと証拠集めには大変苦労します。

では、どうすれば良かったのでしょうか。
ここで、ゴジラが何故「東京を壊す」という成果を挙げられたのかが参考になります。
もちろん、総会で物理的に大暴れしてはいけません。

皆様が参考にすべきは「突如東京湾に現れた」という点です。

もし、「ゴジラが太平洋のど真ん中で姿を現し、ゆっくり東京に向かっている。」という事態であったならばいかがでしょう。詳しくは作品をご覧いただかなければなりませんが、日本政府もより周到に準備をすることができたでしょうし、巨災対メンバーももっと余裕をもって対策を立てることができたでしょうから、ゴジラは上陸できなかったかも知れません。

管理組合における区分所有者も同様です。
上記のような思いがあるならば、そのことを表に出さぬまま理事に立候補し、更に理事長に就任してしまうのが最も近道です。それが難しい場合でも拙速に声を上げるのではなく、しばらくは我慢強く隠密行動に徹して少しでも仲間を増やしておくべきです。
「気付かれる前に上陸する」わけです。

管理組合内の抗争を甘く見てはなりません。理念が正しいとしても、それを実現するためには戦略が必要です。もし管理組合の「現政権」にご不満があるならば、是非「声を上げる前に」ご相談ください。

・・・以上は区分所有者のためのアドバイスです。

ということは、理事(会)としては逆に「ゴジラを上陸させず」又は「上陸したゴジラの破壊力を低下させる」ための準備をしておかなければなりません。
東京湾に現れてからでは手遅れになりかねませんから、お気軽にお早めにご相談ください。尾頭さんとおそろいのPCを携えてお待ちしています。

matome.naver.jp

各種メディア掲載・出演歴

これまでのメディア掲載・出演歴を整理しました。
上から、最近のもの→過去のもの、と遡る順にまとめています。
もし今後も掲載・出演の機会をいただければ、随時更新していきます。
(リンク先の一部は有料記事です。)

2017(平成29)年9月26日
住宅新報
「民泊とマンション管理規約 下」
http://www.jutaku-s.com/newsp/id/0000033689
民泊新法成立に伴う標準管理規約改正に関するコメントが掲載されました。

2017(平成29)年1月31日
ダイヤモンドMOOK マンション管理&修繕 完全ガイド2017
「熱血マンション管理組合理事集団RJC48の本音トーク
最強!マンション管理組合のつくり方
https://www.diamond.co.jp/magazine/650412417.html
RJC48の主要メンバー座談会に参加させていただきました。

2016(平成28)年5月22日
日経ヴェリタス
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO02626570R20C16A5K15200/
管理規約による民泊禁止は区分所有法を根拠とする措置であることを説明しました.。

2016(平成28)年1月12日
産経新聞
http://www.sankei.com/politics/news/160112/plt1601120065-n1.html
民泊自体に関する知識の共有と禁止or許容に係る意思決定が必要であること、そして(禁止するならば)管理規約の整備を急ぐべきという見解を述べました。

2015(平成27)年12月16日
日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10H97_V11C15A2CC1000/
管理規約による民泊禁止の法的効果と、規制緩和の方向性についてコメントしました。

2015(平成27)年8月26日
東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/81797
管理規約による民泊禁止の限界、予防的措置、問題意識の共有の重要性についてコメントしました。

2015(平成27)年7月24日
TBS 「Nスタ」における特集「住民が管理会社に憤慨 高級マンションで何が」
https://www.facebook.com/lawyer.momoo/posts/930576253676052:0
(私のFacebookページです。)

管理組合による委託先管理会社変更に際し、変更前の管理会社が不適切な行為に及んだという事例について見解を述べました。

2015(平成27)年5月12日
産経新聞
http://www.sankei.com/affairs/news/150512/afr1505120005-n2.html
管理組合による委託先管理会社変更に際し、変更前の管理会社が不適切な行為に及んだという事例について見解を述べました。

2014(平成26)年6月3日
FLASH(1286号)
自殺物件に関する賃貸仲介業者による重要事項説明義務違反についてコメントしました。

理事会における理事長解任の可否 ‐標準管理規約を前提に‐

先日の本ブログで触れたとおり、標準管理規約第35条は次のように定めています。

第35条 管理組合に次の役員を置く。
  一 理事長
  二 副理事長 ○名
  三 会計担当理事 ○名
  四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
  五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により【※理事のうちから、理事会で】選任する。
※今般の標準管理規約改正に伴い文言が若干修正されました。

つまり、同条によると、総会では「役員を誰にするか」だけを決めておき(第2項)、「誰がどのような役職に就くか」については理事が話し合って決める(第3項)ことになります(監事は直接総会で選任されますが(第2項)、その意味は別の機会に。)。

例えば、役員選任について上記規定を置くX管理組合(理事5名)においてA~Eが総会で理事に選ばれたとすると、このA~Eが話し合い「理事長はA、副理事長はB、会計担当理事はCとし、DとEは平理事」というように具体的な役職を決めるわけです。
(なお、この点に関連し、はるぶーさんが極めて実務的な問題を検討していますので、是非ご参照ください。)

www.e-mansion.co.jp

ところが、後日B~Eが「Aは理事長に相応しくない」と思うようになりました。B~Eとしては、比較的簡易な手続で済む理事会決議を以てAの理事長職を解きたいところです。
(なお、区分所有法第25条2項所定の裁判所に対する解任請求という方法もありますが「簡易な手法をとりたい」というB~Eの意向に反するのでここでは省略します。また、Aは頑固で自らは辞任しないと仮定します。)

この場合、理事会決議により
(1)Aを「役員から外す(Aは理事でもなくなる)」
(2)Aを「理事長職から外す(Aは平理事などになる)」
という2つの手法が考えられます。それぞれ許容されるでしょうか。

まず、手法(1)について。

上記のように標準管理規約第35条2項が「理事及び監事は、マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。」と定めているとおり、「(具体的役職は別にして)役員を誰にするか」は総会で決めることになっていますから、それを理事会決議で覆してしまうことになる手法(1)は許容されません。
そのため「Aを平理事にもしたくない」ならば、総会決議を通じて役員から解任する必要があります。この点は、標準管理規約第48条13号が総会決議事項の一つとして「役員の選任及び『解任』並びに役員活動費の額及び支払方法」と定めていることも一つの根拠になります。

では、手法(2)は許容されるでしょうか。

管理規約に「理事会決議で理事長職を解くことができる」などと明記されていれば争いなく可能といえそうですが、上記のとおり標準管理規約の文言を採用している場合にはそのように明記されておりません。
標準管理規約において理事会の権限として根拠となり得るのは、冒頭でも紹介した同規約第35条3項の「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により【※理事のうちから、理事会で】選任する。」という規定のみとなります。

私は、以前からこれを「『誰を理事長に据えるか』を理事会判断に委ねている」規定であると理解し「理事会決議で(他の者の選任を伴って)理事長を解任することができる(即ち手法(2)は可能)」と考えており(株式会社の代表取締役を取締役会において解職する場合と同じような考え方です。)、実際そのようにアドバイスしたこともあります。

ただ、以前はそのことを直接解説・判断した文献・裁判例は見当たらず、逆に「理事会決議での解任を認めるには、その旨を規約に明記するのが望ましい」と解説されていた記事も見受けられました。
また、手法(2)を否定する論拠としての「上記第48条13号には『解任』とあるのに、第35条3項は『互選』『理事会で選任する』であって『解任』が含まれていない(つまり、総会では役員の選任も解任もできるが、理事会では選任しかできないのではないか)」という、条文文言に着目した指摘にも「なるほど」と思っていました。

そのため、ご相談に際しては「手法(2)は可能であると思います。」と私見としてアドバイスしつつ、こうした他説もあることもご紹介していました。

こうした中、RJC48にてこの問題が議論されたことをきっかけに『コンメンタールマンション区分所有法』(日本評論社)の第3版を調べてみたところ・・・
その150頁~151頁にかけて、同書第2版までにはなかった「理事・理事長の解任」という項目が新設されており、(上記手法(2)の場面について)役職の解任は、それらの選任に準ずるものと解され、理事長職の解任については理事会の決議で行うことができると解される、という上記私見と同趣旨の解説がなされていたのです。これは嬉しい。
(なお、同書の別巻である『コンメンタールマンション標準管理規約』の第35条の解説には「役員は総会で選任しているのであるから、解任も同様の方法で行うのが通常である」という指摘がありますが、これは上記手法(1)が許容されないことの説明であると思われます。)

もちろん、上記のとおり未だ確立した判例があるわけではありませんので、これも一つの見解に止まりますが、この分野ではおそらく最も詳しく定評のある文献による解説ですから、これまでよりは自信をもって「標準管理規約第35条に準拠した規約の下でも、手法(2)は可能と考えます。」とアドバイスできるようになったと思います。

ただ、このような解釈が論争になること自体が建設的ではありません。
そして、前回の本ブログでも書いたとおり(しつこいですが)標準管理規約はモデルに過ぎません。
そのため、やはり問題が顕在化する前に、皆様のマンションの管理規約にて「理事会決議を以て理事長職を解くことができる(又は逆に「解くことはできない」)」と分かり易く明確に定め、無用な争いが生じないようにしておくことをお勧めします。